PTAの目的は学習環境と通学環境の改善 ぶれない改革を実現
大阪府高槻市立赤大路小学校 PTA
協力いただいたPTAの皆様、
高槻市立赤大路小学校 PTA
改革のきっかけを教えてください
2022年11月、指名委員の訪問を受け、2023年度の会長を引き受けることになりました。
それまでに活動や予算の透明性に疑問を感じていたため、様々な資料を読んで、研究を始めました。
そこで、現状には問題があり、正さない選択肢はないと考えました。
2023年2月までに、スリム化した場合の予算や、規約改正案の検討、学校側との相談、入退会届の整備などを検討し、2023年度より改革が本格的に始動しました。
改革で重視した点を教えてください
次の「三本柱」を改革の基本に考えました。
- 任意加入の徹底
- 活動目的の明確化と活動のスリム化
- 活動内容の透明化・IT活用
改革1. 任意加入の徹底
入会届と退会届を整備し、任意加入を周知するとともに、「全員自動加入と一体の役職強制」を廃止しました。
結果的には、2023年度の会員数は約450から168と、約3分の1になりました。
2024年度は、新入生にだけ加入届の提出をお願いしており、現在の会員数は133です。
会員数の減少に伴い、会費収入も減りましたが、それ以外には特に大きな影響はありません。
イベント等のボランティアは非会員も対象に募集しています(イベントごとに名簿を把握すればPTA保険の対象になるため)。
PTA活動の企画運営に主体的に参加したい人が会員になるという体制になっています。
改革2. 活動目的の明確化と活動のスリム化
PTA活動の目的を「赤小児童の学習環境・通学環境の改善」とし、本校の児童のために活動する団体であることを明確にしました。
よくある「会員相互の親睦」は目的から外しました。
会員の自発性と創意を最大限尊重する体制に転換し、行事への動員など保護者の負担感につながることは廃止、見直しを進めることにしました。
会議の回数を減らし、役員や委員を強制ではなく、立候補制にして、人が集まらなければ、実施しないイベントがあってもよいと考えました。 予算については、卒業記念品や親睦会の茶菓子代、周年積立金などを廃止することで、会員減による会費収入の減少に備えた予算案を作成しました。
イベントや事業については、会員から企画運営者を立候補で募り、立候補があったもののみ実施する「特別委員会」制にしました。
2023年度前半はこの制度が未確立だったので、執行部主体で有志を募って給食試食会、夏まつり出店をしましたが、後半は特別委員会方式でベルマーク活動、卒業記念企画、児童と協力したトイレ清掃を実施しました。
6年生が協力して体育倉庫に絵を描いた。
- APT(アピト)は「赤小ピカピカチーム」の略で、2023年度の2年生が生活科の学習でPTAや保護者とトイレ掃除の取組を行った際お世話になった、東京都奥多摩総合開発(株)のトイレ清掃集団OPT(オピト、奥多摩ピカピカトイレ)の影響を受けて付けた名前です。
改革3. 活動内容の透明化・IT活用
「どんな仕事をやっているのか、何ができるのか」を周知するために、PTAだよりを議事録と改善活動報告という内容に変えました。
印刷による負担が大きいため、ネット活用なども推進し、保護者・教職員のみにアドレスを知らせている「PTAブログ」とブログの更新情報をお知らせする全保護者・教職員向けの「LINEオープンチャット」を開設しました。
全保護者教職員向けオープンチャットの方は現在約130名の方に登録いただいています。。
印紙のPTAだよりは2023年度で終了し、2024年度より、ブログ記事及び「LINEオープンチャット」での配信となりました。
手書きイラストが好評だった2023年度のPTAだより
改革はどのように進めたのでしょうか?
2023年4月に、任意加入を徹底し入会届を整備することを書面で周知し、4月中に説明会を3回開催しました。
説明会に参加できない保護者向けには、説明資料をWEBから閲覧できるように書面でQRコードを配布し、とにかく保護者への説明には万全を尽くしました。
会員・保護者の声を直接執行部に届けるための「ウェブフォームのQRコードとPTAのGmailアドレスをPTA配布物に掲載し、双方向のやり取りができるようにしました。保護者からの疑問には、会長から回答をするようにしました。
新旧の組織図
改革後の組織図(新)では、会員・非会員からボランティアを募って事業・行事を実施する体制が示されています。
組織図(新)
- 点線は連携を示しています。
組織図(旧)
改革で難しかった点はありましたか?
改革で重視した「三本柱」はほぼ半年間でスピーディに進めることができ、委員の負担は早々に激減しましたが、2023年度の前半の役員の事務量は大変なものでした。
2023年度後半からは役員の事務も落ち着き、2024年度からはイベント・事業が各特別委員会に移ったので、PTA活動を実際に担う会員数は増加しています。
改革で達成できたポイントは?
考えた通りに「三本柱」を達成できたと思っています。
ある保護者会員からは、「この一年で、これまでPTAに感じていたモヤモヤが消えていった」という声をいただいています。
2023年10月に臨時総会を書面にて開催し、規約などの改正が承認されたことで、改革は一段落しました。
また2023年4月から高槻市PTA協議会や他校PTAとも任意加入に関する情報交換を行い、6月頃から協議会から任意加入の徹底に対応するための勉強会の依頼を受けていました。
2023年中はその余裕がありませんでしたが、2024年2月に当PTAとして「PTA改革勉強会」を開催し、20名以上の参加がありました。
そこに参加された方々を中心に2024年度から高槻市内の各校PTAで改革の動きが大きく進んでいます。
高槻市PTA協議会とは単位PTAの要望の取り扱いや役職負担など運営について方向性の違いがあったため、2024年3月で退会しました。
市への要望活動は独自に直接行っており、PTA保険についてもより割安な保険に加入できました。
今後の課題
今後の課題は、2025年度以降も主体的にPTA活動に関わってくださる方を増やすために、改革後のPTAの在り方について知っていただくための広報を続けていくことだと思います。
インタビューを終えて
インタビューにあたり、事前に提出いただいた「PTA改革勉強会」資料集は70ページにわたる膨大なものでしたが、ここに、赤大路小学校のこの1年のPTA改革の変遷が詰め込まれています。
資料からは、保護者に理解をしていただけるよう丁寧に改革を進めてこられた様子を知ることができました。
また、内容を変えたという「PTAだより」は、手書きですが、とても読みやすく、PTAの広報物としての機能を備えたものです。ここにも、「透明性のある活動」をしたいという役員の方々の思いがあふれていました。
2年生の児童から声が上がったトイレ掃除や、6年生と一緒に進める卒業記念企画など、活動をスリム化した中にも「赤小児童の学習環境・通学環境の改善」という目的からぶれない赤大路小学校のPTA活動のこれからを注視したいと思います。