PTA事例紹介 上ケ原小学校PTA

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2019年度より、PTAのあり方を大きく変えた

兵庫県西宮市立上ヶ原小学校 PTA

Case Study

西宮市立上ケ原小学校 PTA

お話しを聞いた方

阪本様
2019年度〜2023年度 総務役員
2019年度~2021年度 会長
松尾様
2020年度〜2024年度 総務役員
2020年度~2021年度 副会長
  • 2022年度から役員の役職名は廃止

インタビュー日付

2024年4月13日

PTAホームページ

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上ケ原小学校

きっかけは、PTAに初めて関わったときの衝撃

2019年度より、PTAのあり方を大きく変えた西宮市立上ヶ原小学校PTA。
この改革を進めてこられた阪本さんと松尾さんにお話を伺いました。

以前の上ヶ原小学校PTAは、強制加入、一人1回のノルマ、委員を引き受けられない場合の理由を発表しなければならないなど、昔ながらの「よくある」PTA運営をしていたとのこと。また、地域とのつながりが強く、執行部はその対応に気を遣ったり、週5日学校に通ったりなど、負担感の大きい執行部のなり手もなかなかいない状況だったそうです。

2019年4月、興味半分で会長を引き受けた阪本さんでしたが、就任後にこの実態を知り、大変な衝撃を受けたそうです。
そして、「みんなが大変と言うなら、変えればいいじゃないか」と考えたそう。
弁護士という職業柄、人権の面からも非常に問題を感じたそうです。

まず、着手したことは、他の執行部役員の意見の統一。
「変えられることは変えていこうよ」と、呼びかけ、最初は「変えることは心配」と受け入れられなかった役員メンバーも、徐々に賛同してくれたとか。
こうして、まず最初のハードルを越えたそうです。

上ケ原小学校

あり方を考える委員会

6月には保護者へ「今のPTAはどうですか?」というアンケートを取りました。
結果、負担感が強いという声が非常に多く、PTAをやってよかったという意見があるものの、「またやりたいですか?」という問いには、ほとんどが「やりたくない」という回答だったそうです。

このアンケートを基に、手を挙げてくれた10人ほどのメンバーで「今後のPTAのあり方を考える委員会」を立ち上げました。松尾さんもその時から活動に参加をされているそうです。
PTAのあり方を変えるにあたっては、「強制的なことをやめる」、「会員、非会員でも、子どもたちには差別なく」、「負担感をなくす」ということを重視しました。

そして、問題点の洗い出しを行い、以下のような変更を行いました。

  • 会則の大幅な変更
  • 「1人1回の委員ノルマ」を廃止し、できる人がやるという体制に。
  • 各部の委員が兼任していた「業間パトロール委員会」、「選考委員会」、「ベルマーク委員会」「スポーツ親睦委員会」「クリーンサポート委員会」を廃止。

しかし、「今までノルマだったから、仕事をやりくりしたり大変な思いをしてやってきたのに、これからの人たちが楽になるなんてずるい」という声もちらほら。そんな方には説明会を開催して、これまでの関わりに感謝し、丁寧に説明をされたとのこと。

地域の一員となったOB、OGの方からもさまざまな苦言を呈されたこともあったそうです。
当時の校長先生はというと、学校が参加することとされてきた地域活動などが減ることで学校の負担が減ると考えてくれたのか、一定の理解を示してくれたそうです。

  • 業間パトロール委員会:20分休みに学校内をパトロール。大阪教育大学附属池田小学校事件をきっかけに始まった。
上ケ原小学校
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任意加入・IT化

アンケートをする一方、2019年7月には「PTAの加入は任意です。入退会は自由です。」ということも保護者に書面で告知しています。

その時に退会したのは2名ぐらい。その後も毎年、入学時に加入は任意ということを説明して入会届を提出してもらっているとのこと。 入退会自由なので、もちろん途中退会する方もいらっしゃいますが、現在は全校で93%の家庭が入会しているそうです。

任意加入であることと同時に、PTAのあり方を変えることを丁寧に進めてこられたからこその加入率ではないかと思います。

また2019年度から、上ヶ原小学校PTAではGoogleドライブの活用やPTA室予約システムの構築など、IT化も推進していきました。

PTA室の利用予約のためにわざわざ学校に来る必要がなくなり、ネットで予約できるようになりました。
ホームページには、毎月のPTA活動報告をはじめ多くの情報が掲載され、活動の見える化も工夫されています。

以前は紙で配布していたお手紙の大部分は全家庭の7割程度が参加していると思われるオープンチャットに移行。
HPを更新すると、オープンチャットでお知らせをするようにしているそうです。

その後やってきたコロナ禍も、IT化が進んでいたおかげで、上ヶ原小学校PTAは、活動を止めることなく継続できたそうです。

上ケ原小学校
上ケ原小学校

現在の状況

このようにして始まった上ヶ原小学校のPTA改革。
2020年度からは、全ての委員を立候補制にしてスタートしました。
2023年度現在は、学年部には、各学年6〜7名が立候補してくれていて、総勢45名で活動中。
そのほか、登校班と旗振りを管轄する登校班・当番表編成サポーターが13名で活動しているそうです。

立候補する人が集まらなかった教養人権部、広報部は活動中止となりました。
地域団体との交渉や運営を負担に感じていた地域とのイベントもコミュニティスクールのほうに移管し、PTA活動からは切り離しました。
印刷物や活動が減ったことで、会費も減額となりました。

上部団体である西宮市PTA協議会には、松尾さんが2020~2021年度の2年間担当として携わりました。
協議会も変えられるのではないかという思いがあったそうです。

しかし、週に3回拘束されたり、新しい運営方法を受け入れてもらえなかったりと、古参の協議会役員との意識の大きな違いを感じて、2022年3月には、西宮市PTA協議会を退会しました。

運動会

以前は、週5日PTA室に通っていた執行部も、地域や上部団体の会議参加が無くなったことで負担感はとても減ったそうです。

上ヶ原小学校PTAのホームページを見ると、「お化け屋敷」や「PTA運動会」など子ども向けや親子で楽しむイベントが多いことがわかります。

毎回、必要な人数が集まるわけではないけれど、子ども向けのカラー刷りチラシでボランティア募集も一緒に行うそうです。

そうなると執行部の負担はやや大きいように思いますが、執行部のなり手については、どうなのでしょう。

こちらもやはり、立候補制で募集をするそうです。
集まらなければ再募集をし、それでも集まらなければ休会となりますと伝えると、それは困ると、気にしてくれる人が手を上げてくれる状況だそうです。

「PTAは無くなっても困らないと思うけれど、行政や学校に対して物言える組織だし、組織があるからこそ、ボランティアも募集できるので、そりゃ、あったほうが良い。市に危ない道路にガードレールを付けてもらうとか、PTAがなければ難しいです。

でも、保護者の任意の選択に任せた結果、PTA活動ができなくなったら、それも保護者の自己責任なので、仕方がないと思う。」と阪本さん。
2019年度から上ヶ原小学校PTAの先頭に立ってきた阪本さんは、2024年3月、お子さんの卒業と同時に退任されたそうです。

改めて、上ヶ原小学校PTAの活動の目的はなんでしょうか?

「子どものため」だけではなく、「保護者も子どもも楽しめるPTA」ですね。
でも、これをやりましょうと決めてしまうと、また義務感が発生するので、その年その年の執行部で何をするかは決めればよいと思います。

そして、個人情報の取り扱いや、会員・非会員で子どもに差別をしないこと、強制的な手法を取ることは人権問題にもなりかねないことなどから、法律を守ることも必要なことだと考えています。

改革で難しかった点は?

負担感のある活動を減らし、全ての活動参加を任意としたため、これまでPTAから強制的に参加することとされていた地域活動への協力についても見直しを図り、活動によっては中止をすることになったが、地域団体の方に理解していただくことは難しかった。

地域団体の活動のあり方も変わる必要があると思うが、地域団体とのコミュニケーションは難しかった。

やり残したことはありますか?

やりつくした感はありますが、登校班、旗振り活動については、大半の保護者が「必要」と言うものの、近時、参加者の集まりがよいとはいえず、悩ましいところです。

登校時の旗振り活動についても完全に任意参加とやり方を変えたのですが、参加者が少ないと参加者の負担が増えてしまうので、どのようにすべきか悩ましいところです。

あとは、地域団体にはなかなか理解していただけなかったこと。

阪本さん退任後も、上ヶ原小学校PTAは同じように続いていくのでしょうか?

松尾さんがまだ残るので、その間は今と同じように運営されていくと思いますが、同じことをやる必要はない。
その年に集まった人たちで考えてできることをやればよいと考えています。

ただ、やり方を変えてから大分経つし、世の中の傾向を見ても、以前のような強制的なやり方に戻すことは、保護者が受け入れないのではと思います。

上ケ原小学校
PTA運動会の集合写真 2024年1月27日(土)
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