全国学力・学習状況調査とは?

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全国学力調査と呼ばれる義務教育に関する現状の把握・改善のための調査

全国学力・学習状況調査とは

全国PTA連絡協議会

全国学力・学習状況調査とは

全国学力・学習状況調査(以下、全国学力調査)とは、文部科学省が2007年(平成19年)より、日本全国の小学校第6学年、中学校第3学年を対象として毎年4月に行っている学力と学習状況の調査です。
全国学力調査は、調査であってテストではありません。

調査の目的

全国学力調査の目的には、以下の3点が掲げられていますが、児童生徒個人を評価するためのテストではなく、義務教育に関する現状の把握・改善のための調査であることです。

  • 義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る。
  • 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。
  • そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。

調査の対象学年

小学校6年、中学校3年

調査の内容

教科に関する調査(国語、算数・数学)
  • 2012年度から理科を追加。理科は3年に1度程度の実施。
  • 2019年度から英語を追加、英語は3年に1度程度の実施。
  • 2019年度から「知識」と「活用」を一体的に問う問題形式で実施。
生活習慣や学校環境に関する質問紙調査
  • 児童生徒に対する調査
  • 学校に対する調査

調査年度と調査形式

2007〜2009年度 全国の全ての小学校第6学年及び中学校第3学年を対象とする悉皆調査(全数調査)
2010と2012年度 3割程度の抽出方式及び希望利用方式
抽出対象外となった学校も自主参加できる方式をとっており、約7割の学校が参加
2013年度 きめ細かい調査
2014年度以降 悉皆調査
  • 2011年度は、抽出調査及び希望利用方式で実施予定だったが、東日本大震災の影響等を考慮し、調査としての実施を見送り、希望する学校等に対して問題冊子等を配布。

調査形式

全数調査
悉皆(しっかい)調査とも呼ばれ、対象となるものを全て調べる調査の事です。全数調査は、誤差なく正確な結果が得られる反面、膨大な費用や手間がかかるという欠点もあります。
標本調査
サンプル調査や抽出調査とも呼ばれ、対象となるもの一部を調査して、全体を推定する方法です。全数調査に比べて手間や費用を省くことができますが、標本誤差が生じてしまうため、標本は偏りが生じないように選ぶ必要があります。
調査対象
出所:総務省統計局
希望利用方式

抽出調査対象以外の学校は、学校の設置管理者の希望により、調査を利用可能

きめ細かい調査

対象学年の全児童生徒を対象とした本体調査により、すべての市町村・学校等の状況を把握するとともに、1.経年変化分析、2.経済的な面も含めた家庭状況と学力等の状況の把握・分析、3.少人数学級等の教育施策の検証・改善に資する追加調査等を新たに実施

全国学力調査における悉皆調査

全国学力調査における悉皆調査では、自治体や学校の平均正答率を求められるため、関係者に不正を行う誘引が働くケースもあると指摘されています。2006年に実施された学力調査で、情緒障害のある児童3人の採点を無断に外したことが発覚しています。

また、各自治体では、全国学力調査の実施前に調査対策が行われるようになり、教員・児童・生徒の負担が大きくなるだけでなく、調査の公平性を損なっとの指摘もあります。

悉皆調査を行う際、問題の漏洩を防ぐため、同一受験日一斉実施を行う必要があり、実施に伴う負担が大きいことや、また、採点・集計に時間がかかり、結果の公表までに数ヶ月を要しているのが現状です。

調査結果の公表・提供

  • 国全体、各都道府県・指定都市、地域の規模等における調査結果を公表
  • 教育委員会及び学校に当該教育委員会・学校の調査結果を提供
  • 児童生徒に個人票を提供
参考資料:文部科学省 全国学力・学習状況調査の概要

全国学力調査の経緯

全国学力調査の実施以前

1947〜1955年度
終戦後に新教育で学力低下が社会問題とされ、地方自治体を主体として、実態把握を目的に学力調査を実施
1956〜1966年度
国が主導して、全国中学校一斉学力調査(全国学力テスト)を実施
1956年から1960年は学力の実態把握を目的に抽出式で、1961年から中学2年と3年生を対象に悉皆調査(全数調査)を実施
学テに対しては、生徒の一部から反発が生じテストの拒否が生じたり、教員などによる全国で反対闘争などが相次いだことから1965年に悉皆調査を中止し、抽出調査に切り替えましたが、1966年の旭川地裁判決(第一審)で、国による学力調査は違法と認定されたことから、同年を最後に国が主導する調査は中止されました。
調査は中止されましたが、11年間にわたる調査結果は詳細に分析され、その後の教育環境・条件整備のための基本的なデータとして活用されています。
1982度年以降
旭川地裁判決後の最終審(1976年)で、国主導学力調査が合法とされて以降は、1982年から小中学生の一部を対象とした「指導要領状況調査」の形式で抽出調査が散発的に実施されました。
2000年
世界的な学力調査(PISA)の開始
PISAは、OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心としてで、2000年から3年毎に実施されています。 2000年の調査で、日本は、数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2位、読解力8位とトップクラスとなっています。
2001年度以降
狭義では2002度以降にはじまった「ゆとり教育」による学力低下が問題視された背景もあり、「教育課程実施状況調査」が抽出で毎年行われるようになました。
2003年
2回目のPISAが行われ、2000年調査のトップクラスから、2003年には数学的リテラシー6位、読解力14位と急落し、PISAショックと呼ばれています。
PISA 学習到達度調査とは?
PISAショック
2004年
中山成彬文部科学大臣が小泉純一郎首相に対し、全国学力テストの復活を提案、翌年、政府は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」を閣議決定し、その中で「児童生徒の学力状況の把握・分析、これに基づく指導方法の改善・向上を図るため、全国的な学力調査の実施など適切な方策について、速やかに検討を進め、実施する」としました。
2006年
文科省調査では、全国学力・学習状況調査実施の前年度に、独自の学力調査を実施した地方自治体は、39都道府県と13市となっています。

全国学力調査の実施以降

2007年
小学6年生、中学3年生を対象として、公立・国立のすべての小中学校、私立小中学校の約6割が調査に参加、特別支援学校についても視覚・聴覚・肢体不自由・病弱系で、なおかつ知的に障害がない場合に限り実施されています。悉皆調査(全数調査)としては、43年ぶりとなりました。
愛知県犬山市の不参加 市長や保護者の一部の参加意向に対し、当時の教育委員長が「競争原理の導入になる」という理由で、市立の全小中学校で参加を2年連続で見送っています。教育委員長がかわり、2009年以降は参加となり、初めて全国公立小中学校がそろって調査を受ける形となりました。
記名式テスト 小学6年生のテストは、記名式(中学3年生は番号式)での実施だったため、個人情報の把握など懸念の声が生じ、文科省が急遽、特例として小学6年生でも番号式を認めることになり、翌2008年の調査から、小学生も中学生と同様の番号式に変更されました。
2008年
橋下徹大阪府知事(当時)が、市町村別成績を公表。
2010〜2012年度
2009年に政権が民主党ととなり、支持母体の日教組の意向あり、悉皆調査から抽出調査に切り替えて実施しています。
※2011年度は、東日本大震災の影響等を考慮し、調査としての実施を見送り。
2013年度以降
自民党が悉皆方式に戻し、現在に続いています。調査方式の変更は、経年比較が不可能になる弊害があります。
2013年
市町村の教育委員会には、条件付きで学校別成績の公表が認められ、都道府県教委も市町村教委の同意があれば公表可能に。
2014年
川勝平太静岡県知事(当時)が、 県が小学国語Aの成績が全国最下位だったことを受け、県教育委員会から受け取った資料を県教委の同意を得ないまま自身の判断で、平均点以上だった小学校の校長86人の名前を五十音順で公表。
2015年
全国学力調査結果の高等学校入学試験への使用禁止の決定。
2019年
中学校英語「話すこと」調査をパソコン利用で実施。
※2018年は英語予備調査を実施
2020年
新型コロナウイルスによる影響により全国学力調査を中止。
※2021年度、当初日程を延期して実施
2027年度以降
文部科学省は、2027年度の全国学力調査から全面オンライン化(CBT)する方針であることを、2024年7月に発表。
CBT Computer Based Testingの略で、試験における工程を全てコンピュータ上で行う形式です。
CBTでは、生徒は実社会同様に、キーボード入力で文章を書くことはもちろん、複数の画面(Webのリンク先)を切り替えながら情報を処理したり、スクロールや基本的なドラッグ&ドロップなどの操作も行います。
PISAの調査方法は、2015年調査から、CBTを利用しています。

他国の学力調査では

調査の目的

  1. 各国が定めた教育基準に対する、生徒の学習成果等の達成度調査を目的とした学力調査
    アメリカ、オーストラリア、スウェーデン、ニュージーランド
  2. 教師や学校等の教育関係者へ教育指導等の改善を図るための情報提供を目的とした学力調査
    フランス、デンマーク、ドイツ、カリフォルニア州
  3. 生徒への進学に関するアドバイスを目的とした学力調査
    オランダ

調査の科目

  • 第一言語及び数学(算数)は必須科目として実施
  • スウェーデン、デンマーク、ドイツ、カリフォルニア州は上記に加え第二言語も調査科目
  • アメリカ、デンマーク、ニュージーランド、カリフォルニア州は、理科や社会系の科目も対象

調査の方式

  • PBT(Paper Based Testing)
    スウェーデン、ニュージーランド
  • CBT(Computer Based Testing)
    アメリカ、デンマーク
  • PBTとCBTの併用
    オーストラリア、フランス、オランダ、ドイツ、TIMSS、カリフォルニア州

採点・分析結果の公表

国や地域など 生徒 学校 地域
アメリカ
フランス
オランダ
スウェーデン
カリフォルニア州
オーストラリア
TIMSS

結果公表の特徴

アメリカ
スケールスコアと達成度の2軸で分析され、各管轄区域(全米、州、都市部の地区)、性別、社会経済的地位、人種・民族、その他の人口統計情報ごとに結果が記載される。なお、管轄区域によって集計対象の学年、学校は異なる。また、学校単位及び個人単位の結果は報告されない
オランダ
試験を受けた生徒はポータルサイトでレポートをダウンロードすることができる。このレポートには、スコアとアドバイスが含まれている。その後、学校レベルでのレポートもポータルで利用できるようになる。
学校レポートは、全国平均との関連に関する考察が主に示されており、学校間で比較できるようになっている。
スウェーデン
国立教育庁の委託を受けたスウェーデン統計局(SCB)が結果を収集している。各科目で問題種別ごとに達成度を設けており、参加生徒の達成割合を男女別やスウェーデン語を母国語としているか、学生の両親の教育レベルごとで公表している。
デンマーク
各科目における生徒の学力レベルを測定することで、生徒や生徒群がどの分野で専門的な長所と短所を持っているか公表する。また、各学生が同じ科目で複数のテストを完了した場合、個々のテストコースの結果を比較できる。
ドイツ
本試験が生徒個々人の成績評価や各学校のレベル評価を目的とした位置付けではなく、国の教育基準に照らした生徒の学習状況を把握し、教育活動の質向上に活かすことであることを踏まえ、本試験の結果を根拠に成績評価や進路指導を行うことは明示的に禁止されている。
カリフォルニア州
テスト結果は、スケールスコアと達成度の2軸で分析され、各管轄区域(州、郡、地区、学校、学生グループ)や性別、人種・民族、障害の有無ごとに結果が公表される。
オーストラリア
NAPLANの結果は教育と学習の改善のサポートに役立てられる。結果データより、学校は他の州および準州における最低基準や生徒の成績と比較することができる。個々の生徒の成績レポートは、州および準州によってすべての生徒とその保護者に提供される。
ニュージーランド
研究者、教育者、大学院研究生が教育研究のために使用できるデータをオンライン上に用意している。生徒や学校が特定されないようデータは匿名化されている。
出所:令和3年度 国立教育政策研究所委託 全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた教育アセスメントの先行事例に関する調査研究

CBT調査

文部科学省による、CBT調査方式の全国学力・学習状況調査への本格導入は、2027年調査からとされています。
  • 2023年度:中学英語「話す」で先行実施
  • 2025年度:中学理科
  • 2026年度:中学英語「読む」「書く」「聞く」で先行実施
  • 2027年度:小中学校の国語、算数・数学
  • 2028年度:小学理科

タブレット端末などのコンピューターを使った試験(CBT)では、動画や音声も取り入れた幅広い出題形式が利用できるため、得られる学力の解像度がも上がり、指導の充実につなげられる利点があるとされています。

CBT実施にあたっての課題として、学校のネットワーク環境が指摘されており、文部科学省の2023年の調査では、文科省が推奨するインターネットの通信速度を満たす、全国の公立学校は2割となっています。

CBT調査のメリット

実施や採点の効率化
  • 問題や解答用紙の印刷、配送の経費軽減や環境への配慮
  • 試験の当日に問題用紙・解答用紙を配付したり回収したりする手間など会場での負担軽減
  • 問題冊子の紛失や盗難といった物理的なリスクの軽減
  • テストから採点に関する人的関与が減り、試験結果を迅速な集計分析が可能
集計・分析
  • 理解度測定にあたって、動画、音声、描画など様々な出題形式が利用できるため、多角的な分析が可能
  • 操作ログの活用で、紙では不可能な児童生徒一人ひとりの解答プロセスの分析が可能
  • 児童生徒の学習到達度にあわせた出題形式の適応型試験が実施可能
  • 児童生徒一人ひとりにあわせた指導や学習の個性化の実現が期待
児童生徒にとっての利便性
  • 不登校や入院中で希望する児童生徒は遠隔参加も可能に
  • 同範囲の問題を複数プールする方式を利用することで、同範囲の試験を複数回受けることも可能
  • 拡大、読み上げ、コントラスト機能など、利用者にとってのアクセシビリティ向上
適応型試験

CAT(Computer Adaptive Test)とも呼ばれる、CBTによるオンラインテストの一形態です。
受験者のレベルに応じた試験問題を受験者の能力に応じて出題することで、より少ない問題数でかつより正確に受験者の能力を計測することが出来る出題形式です。

CATには、項目応答理論(IRT)と呼ばれる、テスト項目に対する反応(どの選択肢に回答して正答、誤答の答えをだしたかなど)を見て、各項目ごとのモデルから受験者の能力や性格などを分析する理論体系が利用されています。
CATでは、IRTよって推定されたパラメータ付の問題をアイテムプールに置き、受験者の回答パターンに応じて、難易度の異なるアイテムを選んで出題することにより、短時間、高精度で受験者特性の測定が可能とされています。

海外でのCBT調査

アメリカのCBT調査

テストに参加する全ての生徒が画面上で多様な機能を活用できる仕様になっています。
  • 文字サイズ及び画像サイズの拡大機能(文字/画像サイズを2倍まで拡大)
  • 音声の読み上げ機能
  • コントラストの調整機能
  • スクラッチワーク・ハイライト機能(画面上にフリーハンドで絵を描く、またはハイライト)
  • 選択肢の消去機能’複数の選択肢がある場合に、選択した選択肢を消去)
  • 出力音声のボリューム調整機能
  • キャプション機能’ボイスオーバー箇所に、字幕を表示)
  • スペルチェック機能・類語辞典閲覧機能(ライティングのみ実装、スペルを自動チェックし、類語を調べる)

特に支援が必要な生徒への配慮

  • 心身的な観点からサポートを必要とする生徒
  • 知能的な観点からサポートを必要とする生徒
  • 他国の言語を母国語とする生徒(カリフォルニア州実施の CAASPPでは、現地学校に通い始めて1年以内の英語学習者)

支援内容を決定するのは、アメリカやオランダの場合は主催団体が特別措置の対応可否及び措置内容を判断、フランス、スウェーデン、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランドでは、教師や学校が判断しています。

  • オーストラリアでは、各学校が支援を必要とする各生徒へ適切な措置を提供できるように、主催団体が生徒の状況に応じた対応策について、わかりやすく整理した複数の事例を公表しています。
  • フランスでは、対象の生徒に介助者を付けるか、協議の上学校が判断しています。
出所:令和3年度 国立教育政策研究所委託 全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた教育アセスメントの先行事例に関する調査研究

全国学力・学習状況調査

保護者と地域
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