保護者として知っておくべき、子どもに関する保険制度
PTA保険で知っておくべきこと
子どもに関する保険制度
必要な保険を選んで加入
お子さまを取り巻くリスクは、様々で、万一のための保険は大切です。
個人で保険に加入するのに比べ、PTAの団体保険は、団体割引が適用された保険料です。
お子さまを取り巻くリスクを考えた保険ですが、あくまでも任意で加入するものです。
すでに加入している保険と補償内容が重複していないか、必要以上に掛けていないか、確認することも大切です。
(学校が取りまとめる保険)
災害共済給付制度
災害共済給付制度とは、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「日本スポーツ振興センター」)が行なっている、学校管理下での児童生徒等の災害(負傷・疾病、障害または死亡)に対する補償制度です。
保護者が同意書を記入し、学校に提出することで加入となり、児童や生徒の学校での事故などをカバーします。
対象の学校は、私立、国立、公立を問わず、義務教育の諸学校、高等学校、高等専門学校、幼稚園、幼保連携型認定こども園、高等専修学校、保育所等です。ケガや病気には医療費が、ケガや病気による身体障害には障害見舞金が、死亡の際は死亡見舞金が支払われます。
日本スポーツ振興センターによると、2021年度の加入児童・生徒は児童生徒総数の95.0%、約1,615万人が加入しています。 任意加入とはいえ、ほとんどの児童・生徒が、学校でのケガや病気の治療に災害共済給付が利用が可能となっています。
災害共済給付制度における共済掛金額
災害共済給付制度は、学校の設置者が、保護者の同意を得て日本スポーツ振興センターと契約します。掛金は、学校の設置者・保護者が負担し合います。
2023年度以降の児童・生徒等1人当たりの共済掛金の年額※一部抜粋
学校種別 | 一般児童・生徒等 | 要保護児童・生徒 |
義務教育諸学校 | 920円(460円) | 40円(20円) |
高等学校 | 2,150円(1,075円) | ー |
幼稚園、幼保連 | 270円(135円) | ー |
保育所等 | 350円(175円) | 40円(20円) |
- ()内は、沖縄県における共済掛金です。
- 共済掛金における保護者の負担割合は、義務教育諸学校が4〜6割、その他の学校が6〜9割です。残りの額を学校の設置者が負担しています。
PTAが取りまとめる補償制度
一般的に、単位PTAとして利用される補償制度は、大きく分けて、PTA団体対象と保護者対象の2種類があります。
いずれも、任意の保険で、単位PTAが所属している地域のPTA団体(都道府県単位のPTA連合会など)が
PTA総合補償制度
PTA総合補償制度とは、PTAの皆様が安心できるPTA活動をめざし、単位PTAあるいは会員校の児童・生徒およびPTA会員(保護者・教職員)等に生じる種々の事故について、総合的な補償を行う制度です。
PTA総合補償制度には、団体傷害補償制度と賠償責任補償制度があり、いずれもPTA単位で加入します。
団体傷害補償制度は、PTAが主催・共催する行事中に参加者が事故にあったり、食中毒になったような場合、入院・通院保険金等が支払われます。また、日常のPTA活動中にけがをした場合も同様に補償されます。
賠償責任補償制度は、子どもたちの日常生活や、PTA活動に起因する加害事故を補償する制度です。
2017年5月、改正個人情報保護法の施行によりPTAも個人情報保護法が適用されるようになり、従来型のPTA総合補償制度ではカバーされないリスクも顕在化しています。
PTAが個人情報を取り扱う中で、万一、個人情報漏えい事故が発生した際の備えとなるP「個人情報漏えい補償制度(サイバー・情報漏えい事故補償特約付統合賠償責任保険)」などに加入するPTA団体も年々増えています。
児童・生徒総合補償制度
24時間補償などとも呼ばれるPTA保護者の皆様が任意で加入する総合的な補償を行う制度です。
児童・生徒自身の24時間のケガの補償、第三者に与えた賠償責任補償はもとより、学校管理下での身の回り品の損害補償(メガネ、制服等)、新型コロナウイルス感染症による入院補償など、幅広い補償制度です。
ここでは「児童・生徒総合補償制度」に関する情報を中心にまとめています。
被保険者は、保護者のお子様やご家族で、同じ補償内容の個人で加入する保険に比べて、団体規模に応じた割引が適用されているため、保険料がお手頃になっています。
児童・生徒総合補償制度は、様々な補償がセットになっている保険商品のため、一つひとつの補償内容を見ていくと、ご家庭によっては他の保険と重複している部分があるかもしれません。昨今では、社会情勢を反映して、個人賠償責任(無制限)や弁護士対応などに特化した補償プランもあります。
単位PTAとしての保護者の皆様への周知やご案内は、既に加入されている保険などを確認し必要とされるご家庭が、ご意向に応じて利用いただける制度としての情報提供と、必要性の有無を判断する機会を提供する役割となっています。
総合補償制度の内容(例)
一般的な事例で、補償の内容は、各保険会社、保険商品の組み合わせパターンによって異なります。個人賠償責任補償
お子さまや同居のご家族が、日本国内・国外を問わず、万一他人にケガを負わせたり、他人の財物を壊した事等で、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金を支払
傷害補償(ケガ)
お子さま本人が急激かつ偶然な外来の事故でケガをした場合に、学校内外、学用・私用に係らず保険金を支払 ※細菌性食中毒(O-157)、ウイルス性食中毒、海外事故も補償
天災補償(ケガ)
お子さまの入院・通院・死亡・後遺障害・手術および育英費用※を補償※上記事故により扶養者が扶養不能状態になった場合
熱中症に関する補償(ケガ)
お子さまが日射または熱射により身体に障害を被った場合に、入院・通院・死亡・後遺障害・手術費用を補償
疾病補償(病気)
お子さまや学生本人が病気で入院、手術、または退院後の通院をされたときに補償感染症による入院も補償
育英費用補償
指定された扶養者が急激かつ偶然な外来の事故で亡くなられたり、所定の重度後遺障害のために、お子さまの扶養ができなくなった場合の育英費用を補償携行品損害補償
学生本人の身の回り品が住宅外において盗まれたり、偶然な事故で破損した場合を補償(国内外補償)各種相談サポート
お子さまやご家族の健康・医療・法律などの各種無料電話相談サービスPTA団体補償制度
団体補償制度とは
PTAにおける団体補償制度の保険契約者と被保険者の関係は、契約者が、単位PTAが所属している地域PTA団体(都道府県単位のPTA連合会など)、被保険者は、PTAの保護者のお子様やご家族となります。
団体補償制度は、制度のご案内や保険料の徴収など、団体側が制度運用の一部を保険会社に代わって行うことで保険会社の経費を削減できるため、個人契約と比べると保険料が安くなります。
一般的な団体補償制度では、次の2つの割引が適用されることで割安にご加入いただける仕組みです。
- 多くの方にご加入いただけていることで「規模のメリット」による割引
- 過去の保険金支払実績が少ないこと(事故が少ないこと)による優良割引
PTA団体補償制度のあり方
PTA団体補償制度についてはマスコミを賑わす事案もあります。全国PTA連絡協議会は、当協議会が契約者となるPTA団体補償制度を運営するにあたり、PTA団体補償制度のあり方を次のように考えます。
- 割引が適用されメリットがある団体補償制度であるが、必要性は各保護者の判断で、加入は任意
- リスク対応の選択肢として重要な団体補償制度は、情報として提供されるべきもの、必要性の判断は各保護者
- 事務手数料などPTA団体が受領する会計情報の明瞭化、利益を得た場合には、申告し納税
- 制度運営費を利用している場合には、PTA団体の目的に沿った事業に利用し、その情報を公開
- 団体適格性の観点から、契約者となる団体は、保険加入のみを目的として組織された団体でないこと
PTA団体補償制度のパンフレットなどには、小さな字で「掛金には、制度運営費〇〇円が含まれています。」などの表記がよくありますが、この制度運営費は、保険会社ではなく各PTA団体が受領しています。
制度運営費に関する説明をしていないパンフレットが一般的ですが、記載があるパンフレットの例としては、
- 制度運営費は通信費など当制度の円滑な運営に利用されています。
- 制度運営費は、本制度が健全に運営され、発展するために必要な諸経費(会議費、普及活動費、通信費等)です。
PTA団体補償制度を利用して、保護者の皆様は保険料の割引の適用が受けられ、補償制度を利用した皆様に、団体により金額の差異はありますが、制度運営費として一部のご負担いただく仕組み自体に問題はないと考えますが、制度運営費の利用方法については注意が必要です。
本来の制度運営費の仕組みは、補償制度を利用した保護者の皆様、契約者であるPTA団体、そして団体のPTAに加入する皆様の三者がメリットを享受できる仕組みであり、PTA団体の目的に沿った事業に対する制度運営費の利用、情報の公開など適切な運用が必要です。
児童・生徒総合補償制度の主な補償内容
個人賠償責任保険
他人に対する損害賠償責任を補償
誤って他人にケガをさせてしまったり、他人の物を壊してしまったことで、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償されます。
お子さま(園児、児童、生徒)の場合、他人にケガをさせたり、物を壊すことはないとはいえず、保護者としては心配は大きいと思います。
こうした万一のリスクに役に立つのが個人賠償責任保険です。
一般的にお子さまだけが対象ではなく、ご家族全員が保険の対象となります。
賠償リスクは、全国的に自転車保険への加入を義務化する動きが広がりさらに注目度が高まっています。
よく例として取り上げられますが、に神戸で小学5年生の男の子が自転車で女性に衝突した事故では、2013年の神戸地裁判決で母親に対し
約9500万円の賠償命令が出るなど、自転車事故で高額な賠償命令が出てしまうケースが続出しています。
自転車などで重大事故を起こした場合は、損害賠償責任で人生が変わってしまうリスクさえあります。
事例のような自転車事故でも個人賠償責任保険のカバー範囲ですが、保険金の支払い限度額に注意が必要です。
万一の備えとしての保険ですから、限度額が無制限のプランが安心です。
PTAの(個人賠償責任付)団体保険に加入していれば、授業中や部活中に発生した事故も補償の範囲とお考えの方もいるかもしれませんが、学校の管理下で発生した事故の場合は、児童や生徒には法律上の損害賠償責任が発生しないケースが一般的です。
損害賠償責任が発生しないケースでは、個人賠償責任保険の補償対象外となります。
また、ケガや入院の保険は複数入っていると、それぞれから給付金が支払われますが、損害賠償責任保険は、たくさん入っていてもあちこちから支払われることはありません。
商品や条件によって違いますが、無制限補償プランがあるのであれば、二重に加入する必要はありません。
傷害保険
お子さまのケガによる入通院などを補償
傷害保険は被保険者であるお子さま(園児、児童、生徒)が事故によりケガをしたときに補償してくれます。
対象となるのは学校でのケガだけではありません。普通に生活している中での事故や、レジャー中に発生した事故なども対象となります。
補償内容としては入院、通院、手術の補償が中心です。
保険の種類によっては死亡、後遺障害に対する補償がセットになっているタイプもあります。
就学前、小学生、中学生、高校生と対象とする範囲は様々ですが、乳幼児医療費助成制度などを導入により、公的保険が適用される範囲の入院・治療であれば、子どもにかかる医療費が一定の負担や無料になる自治体が少なくありません。
自治体よって、所得制限がある場合や対象外のケースもありますが、傷害保険の入院、通院、手術の補償をあまり重視しないと考える人もいます。
一方で、医療費が一定負担であっても、差額ベッド代や先進医療にかかる費用は助成の対象外となる場合が多く、それらに不安を感じる場合はその部分について保険を活用することも考えられます。
育英費用補償
扶養者のケガによる死亡(重度障害)を補償
お子さま(園児、児童、生徒)の親権者である扶養者が事故でケガをして、死亡または重度の後遺障害状態となった場合に補償されます。
育英費用という名称ではありますが、ケガによる死亡(重度障害)補償です。一般的には、事故の日から180日以内に死亡、重度障害状態となった場合が補償対象です。病気による死亡は対象になりません。
育英費用補償をケガでの死亡・後遺障害時のプラスアルファ的に考える人もいます。
子どもに関するリスクについて考える
小学5年生が加害者となった自転車事故
治療費・その他 | 治療費、装具代、雑費、付添費 | 約440万円 |
---|---|---|
慰謝料 | 180日程度の場合約244万円 | 約300万円 |
休業損害 |
236,400円/月額、入院期間182日 | 約145万円 |
後遺障害慰謝料 | 自賠責1級相当と認定 | 約2,800万円 |
後遺障害逸失利益 | 236,400円/月×12ヶ月×労働能力喪失率 | 約,2200万円 |
将来の介護費用 | 重度後遺障害のため、1日あたり8,000円の 介護費用が平均余命までかかるとして算定 8000円/日×365日×労働能力喪失率 |
約4,000万円 |
- 賠償金額は、被害者に支払われる障害基礎年金(公的年金)を差し引くなど、上記の合計から損益相殺があります。
自治体により、自転車に関するルールは様々ですが、子どもの自転車事故に関するリスクが明白になりました。
自動車運転するなら任意保険、自転車乗るなら任意保険の時代だと考えます。
加害者が自転車でも、後遺障害では高額化がすすむ
自動車による交通事故では死亡事故よりも重度の後遺障害が残った事故に対する損害賠償額が高額化しています。
自転車事故に関しても基本的には同じだと考えられます。
被害者が重度の障害を負ったり、寝たきり状態などが続くと将来の介護費用などが莫大な金額となります。
自転車も「車」としての責任を重視しよう
今回は、母親の監督義務責任が認められましたが、事業所の場合でも、従業員が業務で自転車を利用中に交通事故を起こし、相手が死傷した場合は、使用者責任を負うことになります。
交通事故の発生頻度は低くても、自動車と違って自賠責保険(強制保険)がないだけに、損害賠償のリスクは高いとも言えます。
自転車も「車」の仲間として、その利用には重大な責任が伴うことをお子さまに伝えるするとともに、万一の対策も検討しておきましょう。
自転車のリスク
自転車運転者(第一当事者)の年齢層別交通事故件数(2017年)
日常のリスク
一般的な個人賠償責任保険で補償の対象となる事故例は、次のとおりです。買い物中に陳列商品を落とし破損させた。
買い物中、展示品などをうっかり壊してしまうケースなどがあります。商品単価は安価でも、陳列棚ごと倒してしまうなどのケースは大きな損害となります。高価な商品を扱うお店などでは特に注意したいものです。友人宅で遊んでいるときに家財を壊した
子どもが友人宅などで、物を壊したり傷つけてしまうケースです。買い物中と同じく、賠償責任は発生しますので、友人宅との金銭のトラブルにならないよう備えておきましょう。レンタル品を盗まれた
レンタルしたものを盗まれてしまうケースです。もちろん盗む人が悪いのですが、賠償責任はレンタルした人が負います。- 学校で貸してもらったタブレットを壊した。
- 飼い犬が他人を噛んでケガをさせた。
- 子どもが駐車場に停めてあった他人の車をキズつけた。
- 自転車で走行中に歩行者とぶつかり後遺障害を負わせた。
- マンションの自宅の風呂場からの水漏れにより、階下の戸室の家財に損害を与えてしまった。
- ガス爆発によって、隣の建物を損壊させた。
- ベランダの鉢植えが落下して歩行者の頭に当たり死亡させた。
法律相談など
知っておいた方が良いこと
個人賠償責任保険の範囲
個人賠償責任保険は、他人の「身体」や「財物」に損害を与えた場合が対象となりますので、他人への名誉毀損やプライバシー侵害といったケースは補償の対象外となります。- 記載の内容は、一般的な事例のひとつで保険商品や特約などにより異なります。
保険金支払いの対象となる損害や主な費用は
- 被害者に対する損害賠償金(治療費、修理費、慰謝料など)
- 弁護士費用、訴訟になった場合にそれに要する費用、調停・和解・仲裁の場合にそれに要する費用
個人賠償責任保険で保険金が支払われない主な場合
- 契約者、被保険者の故意による損害賠償責任
- 地震・噴火またはこれらによる津波に起因する損害賠償責任
- 被保険者と同居の親族に対する損害賠償責任
- 被保険者が所有、使用、管理する財物の正当な権利を有する者に対する損害賠償責任
- 被保険者の職務遂行に直接起因する損害賠償責任
- 被保険者の心神喪失に起因する損害賠償責任
- 航空機・船舶・車両の所有、使用、管理に起因する損害賠償責任
なお、そのような場合であっても、保険会社によっては、「個人国外危険補償特約条項」を用意しており、この特約を付帯(セット)することで補償を受けることが可能となります。
- ひとりで転んでケガをした
- 同居する家族間で起きた事故
- 故意の暴力やケンカによるケガや物損
- 補償対象は、過失事故の場合に限られます。
- アルバイト中など就業中に起きた事故
- 友達から借りたものを壊してしまった場合
- 他者の所有物であっても、借用している間の管理責任は被保険者にあると判断されるため、ケースバイケースの判断
- スポーツ中の事故
- ルールから著しくはずれた危険な行為をしていないなど、違法性がなく損害賠償責任を負わないケースは
個人賠償責任保険チェックリスト
- 学校から借りたノートパソコンやタブレット端末等は補償対象となっていますか?
- 賠償責任補償の特約がセットされていますか?
- 自転車保険の加入義務化に対応していますか?
- 自転車事故以外の賠償責任も補償の対象となっていますか?
- 自転車の対人事故における賠償責任補償が少額のものから高額のものまで補償されていますか?
- 自転車の対物事故における賠償責任補償が少額のものから高額のものまで補償されていますか?
- 被害者との示談交渉サービスが付いていますか?
- 無制限のプランに重複して加入していませんか?
弁護士に関するサービス
人格権侵害
- SNS上でいわれもない誹謗中傷にあい、精神的苦痛を受けた。
- いじめにあい、登校拒否の状態になった。
- 電車で痴漢被害を受けた。
- 昔の交際相手からストーカー行為をされている。
被害事故
- インターネット通販の会社から、本物といつわられて、偽物のブランド品を売りつけられた。
- 路上歩行中に他人が運転する自転車に追突され、ケガをした。
- 自動車または原動機付自転車による被害事故に関するトラブル
- 医療ミスによる被害事故に関するトラブル
- 騒音、振動、悪臭、日照不足による被害事故または人格権侵害に関するトラブル
- 借金の利息の過払金請求に関するトラブル
- 顧客や取引先等から被った職務遂行上の精神的苦痛に関するトラブルなど