PTAから学校への寄付・寄贈 適切に行うにはいくつかの要件があります。
PTAから学校への寄付・寄贈
関連する法令は?
地方財政法では、「地方公共団体は他の地方公共団体又は民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。」と定めています。
1967年(昭和42年)の東京都教育委員会の通達では、従来、父兄を主たる会員とするPTA、後援会、その他の団体から、学校後援のための寄付が行われてきた。こうした慣習は、おうおうにして、強制にわたる懸念もあり、一方このたびの措置により学校運営費が確保されることになるので、今後はこの種の寄付は受領しない。とあります。
法からも「公立学校は住民に対し強制的に寄付金を徴収してはならない」という点は明白です。一方で、純粋な寄付行為には問題はありません。
PTA予算での学校への寄付・寄贈での論点になるのは、PTAによる寄付行為が、任意加入の条件のもとPTA会員による自主的なものかどうかという点です。
また、学校教育法 第5条は、「学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する。」となっており、寄付・寄贈の対象物にも配慮が必要となります。
地方財政法、地方財政施行令(抜粋)
地方財政法 第4条の5
(割当的寄附金等の禁止)第四条の五 国(国の地方行政機関及び裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第二条に規定 する下級裁判所を含む。)は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共 団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。
地方財政法 第27条の3第1項
(都道府県が住民にその負担を転嫁してはならない経費)都道府県は、当該都道府県立の高等学校の施設の建設事業費について、住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならない。
地方財政法 第27条の4第1項
(市町村が住民にその負担を転嫁してはならない経費)市町村は、法令の規定に基づき当該市町村の負担に属するものとされている経費で政令で定めるものについて、住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならない。
地方財政施行令 第52条
(市町村が住民にその負担を転嫁してはならない経費)法第二十七条の四に規定する経費で政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
- 一
- 市町村の職員の給与に要する経費
- 二
- 市町村立の小学校、中学校及び義務教育学校の建物の維持及び修繕に要する経費
学校教育法(抜粋)
学校教育法 第5条
(学校の管理、経費の負担)学校の設置者は、その設置する学校を管理し、 法令に特別の定のある場合を除いては、 その学校の経費を負担する。
自治体の対応(事例)
以下の掲載内容は。抜粋です。
東京都教育委員会の通達
各区教委教育長宛(抜粋)
寄付受領の考え方とその取扱いについて従来、父兄を主たる会員とするPTA、後援会、その他の団体から、学校後援のための寄付が行われてきた。こうした慣習は、おうおうにして、強制にわたる懸念もあり、一方このたびの措置により学校運営費が確保されることになるので、今後はこの種の寄付は受領しない。
区立小中学校PTA会長宛(抜粋)
PTA会員の各位には、新教育制度発足以来、長い期間にわたつて公教育の充実発展のために多方面にわたるご尽力をいただいてまいりました。とくに義務教育学校の整備充実につきましては、物心両面にわたり、多大なご援助を賜わり、漸く現在の水準まで高めることができました。これもひとえに各位のお力添えによるものと心から感謝いたしております。
しかしながら、学校運営において、本来公費で負担すべき経費を私費に依存することは、教育の正常な姿でありませんので、都教育委員会は従来よりこの私費負担の解消に努めてまいりました。このたび、この問題の抜本的解決を目ざし、義務教育学校運営費標準を設定し、それに見合う財政措置をすることによつて、昭和四二年度を期して、公費で負担すべき経費の私費負担を解消することにいたしました。
ついては、この趣旨の徹底をはかるため、関係各方面に対し、別添のとおり通知いたしました。
各位におかれましても、この施策の趣旨について十分ご理解のうえ、PTA役員だけでなく、広く一般会員にもご伝達いただき、私費負担解消の実効があがりますよう、格別のご協力をお願いいたします。
名古屋市 学校への寄附
学校に対する物品の寄附について
学校の建物、工作物及び物品については公費で整備するものですが、下記のとおり一定の条件を満たす場合には、寄附をしていただくことができます。寄附の条件
- 寄附者の好意による自発的なもので、それが学校の設置目的に適合し、教育活動に資するもの
- 既存の施設整備の使用に支障を生じさせず、かつ安全性が確保できるもの
- 維持管理に多額の経費が必要でないこと
- 学校の建物の維持及び修繕にかかる経費でないこと
- 他の学校との著しい格差を生じるような過剰なものでないこと
市立学校(園)への寄附にかかる教育委員会の考え方
下記のPDF文書が掲載されています。。- 名古屋市立学校(園)における寄附物品等の取扱について
- PTAから学校(園)への物品等の寄附にかかる基本的な考え方について
特に寄附していただきたいもの
本市では、南海トラフ巨大地震などへの対策として、「防災ヘルメット」の寄附を特に希望しております。学校への寄附をお考えの場合は、ぜひご検討下さい。暮らしの情報 ≫ 教育と文化と交流 ≫ 教育 ≫ 教育環境整備への取組み ≫
学校への寄付・寄贈のポイント
可能なケースの判断は?
子どもたちの教育環境を充実させたいと思うのは、どの保護者も一緒ですが、PTAから学校への寄付・寄贈は難しいと考えた方がよいでしょう。PTAで寄付・寄贈を考えるには、いくつかの要件があります。
任意加入の会員から徴収された会費
PTAへの入会にあたり任意加入の説明、入会意思の確認が行われ入会した会員から、徴収された会費であることが前提となります。意思確認なしで入学と同時に加入、半強制的な状況下での加入によって徴収された会費の場合は、対象外です。
寄付・寄贈行為は本人の自発的な意思に基づいて行われるものであり、会員資格の問題クリアが必要です。
PTA予算への明記
寄付・寄贈を行う場合には、あらかじめ予算書に明記して総会での承認を得ることが必要です。年度の予算が余ったから、何かを買ってしまうといった不明瞭な対応は避けるべきです。
寄付・寄贈の対象
前述の様に、学校教育法では「学校設置者が学校経費を負担する」、地方財政法では「本来公費で負担すべき住民への負担転嫁は禁止する」となっています。
具体的には、エアコンやオイルヒーターなどの空調設備や学校家具をはじめとする備品は、学校運営、教育活動にかかる経費として、原則として(学校の)設置者負担となっています。
寄付・寄贈の対象を考える場合、学校が教育をするための最低限の設備や備品以外のものを検討すべきでしょう。
具体的には、周年行事の植樹などが考えられます。
県や市などが公費で賄うべきと設定している基準以上の寄付・寄贈・学校を考える場合には、学校、教育委員会などに事前相談することが重要です。
寄付・寄贈の形態
PTAの規約の活動目的の一つとし「公的教育費の充実につとめるとともにこれに協力する」と記載があった場合、これを根拠に、学校備品購入をあらかじめ予算化しているPTAもあるかもしれません。
もしPTA予算で学校備品を購入化することが常態化している場合は、PTAの側に寄付をしないという選択の余地がないと考えられ、純粋な寄付・寄贈行為とは言えない可能性が高くなります。
PTA備品としての考え方
PTA備品として利用していることを前提とすれば、学校備品の寄付・寄贈とは別の考え方になります。PTAと強要する形で学校備品の不足をPTA備品で賄うという考え方もあります。
備品自体の運営はPTAですが、PTA会員である保護者や教職員以外にも利用いただくことで、子どもたちの教育環境も充実させる方法で、冷水機などはその対象のひとつでしょう。
消耗品である消毒液やウェットティッシュなどの衛生用品をPTAで購入し、学校と共同で使用するなど、厳密に使用者が区別できない場合は寄付・寄贈とはいえませんが、日常的に学校運営に必要なもので、PTA活動においても利用する物品(事務用品、手洗い用石鹸、動植物の維持費用など)についても、寄付・寄贈状態が継続する場合には、公費・会費のどちらを充てるか学校側との十分な協議が必要です。
備品として提供する内容にもよりますが、管理責任の面からは、PTAと学校の間で、管理責任など明記した書類を用意すべきと考えます。
また、寄付・寄贈状態が継続する場合は、学校側との十分な協議はもちろん、PTAからの寄付・寄贈行為として疑念を感じる場合には、前年踏襲などとして片付けず、教育委員会などに確認することも必要でしょう。
地域と連携した資源回収やバザー
PTA会費からでない寄付・寄贈ですので、PTA予算書明記など要件はありませんが、寄付・寄贈の対象や形態などに配慮した上で、開催要綱に収益の活用方法を明記するなどは必要でしょう。
寄付・寄贈にあたっては、PTA・地域の方々に関わらず、資源回収やバザーの参加者が本人の自発的な意思に基づいて参加していることが必須です。
寄付・寄贈にあたっての注意
PTAから備品を寄付・寄贈する場合は、自治体が定める手続きが必要です。具体的には、自治体に寄付・寄贈という意思を示し、自治体がこれを受諾することにより成立する契約を、学校にお願いし「寄附採納」の処理をしてもらうことが必要です。
寄附採納の手続きをしていない場合、PTA所有物の扱いになるため、将来の買い換えや修理、廃棄などはPTAの責任において行うことになります。
特に、PTAによる寄付・寄贈の備品などで事故が起こった場合は、PTAが管理責任などを問われるケースもあるため注意が必要です。
寄付・寄贈に不適切なもの
- 学校の建物に対する補修工事
- 学校の設備や備品の修繕や更新(清掃やクリーニング、各種の修理費、カーテン等の買い替えなど)
- PTAが所属しない団体や運営しない施設の活動費や人件費など
- PTAが利用しない学校の印刷機やパソコンなど各種備品
- PTAの活動を対象としない学校賠償責任保険料(教育活動中の事故のみ対象)
- 校長会、教頭会などの諸会費
- 教職員のみを対象としたの研修図書費、校内研究費、参加費、謝礼など
- 授業で利用する施設利用料、楽器など備品の利用料、荷造り運賃など
- 学習教材の購入費、送料(教材費を別途徴収している場合)
チェックポイント
どうしても必要なものは、管理責任も含め、PTA備品として購入することも考えられます。
- 任意加入制度を導入していること
- PTA総会での承認
- 学校の設備や備品の修繕費(公費負担の対象)でないこと
- 学校運営にとって必須の設備や備品ではないこと(必須の設備や備品は公費負担の対象)
- 学校運営にとって必須の設備や備品ではないが、子どもたちのとって、必要であるもの
- PTAと共用の消耗品などを除き、寄附採納の手続きをすること