できる人が、できるときに、できることを
保護者と先生による楽しむ学校応援団 東京都大田区立嶺町小学校 PTO
嶺町小学校 PTO
PTAからPTOへ「もしドラPTA編」
大田区立嶺町小学校PTOと言えば、先進的なPTA改革のパイオニア的存在として数々のメディアでも紹介されています。
PTOは、Parent Teacher Organizationの略で、PTOの「O」は、応援団の「おー!」でもあるそうです。
まず、嶺町小学校PTAがPTOに変わるまでの歴史を、久米団長のお話と嶺町小PTOのホームページに掲載されている内容を基にご紹介します。
2012年までの嶺町小学校PTAは、次のようなブラックと言えるPTAだったそうです。
- 年度初めの沈黙の保護者会
- 有休を使ってベルマーク活動に動員
- 小雪の降る中、赤ちゃんを背負って古紙回収に参加
- 会議への子連れ参加はNG
- 役員のなり手がない中、推薦(選考)委員の精神的負担
会長に就任したばかりの当時の山本会長は、この状況や前例踏襲で運営されている実態を知り、社会の変化にPTAがついていけていないということを強く感じたそうです。
そこで、2012年夏ごろから徐々に「もしドラPTA編」(もしPT
2012年は保護者へのアンケートを行い、「誰もが参加したくなるPTA」のあり方を模索していきました。
2013年度からは、アンケートを基にPTA改革に向けた取り組みを開始。
当初、改革を不安視していた役員もいましたが、アンケート結果から、8割以上の保護者が変えたいと考えていることを知り、改革に賛成するようになったそうです。
ホームページに掲載されている過去のPTAだよりを見ると、
- 「なぜ見直しが必要なのか」
- 「PTAが無くなったらどうなるのか」
- 「どんな風に変えていくのか」など、
PTAだよりや説明会を開催して保護者に丁寧に説明を繰り返したり、保護者から提案された内容を採用したり、本部だけで進めるのではなく、保護者を巻き込んで丁寧に進めた改革であったことがわかります。
これまでのアンケート結果や話し合いを経て、2014年度よりPTAは「楽しむ学校応援団PTO」にリニューアルし、委員会は自由参加の「部活」になることが発表されました。
PTA本部は「ボランティアセンター」と称し、ボランティア活動の調整や広報を担います。
会長、副会長という肩書は「団長」「副団長」に、行事係はその都度募集する「サポーター」と、名称も仕組みも変更しました。
「楽しむ学校応援団」というキャッチフレーズ通り、子どもだけではなく大人も楽しめる活動を基本にしています。
嶺町小学校がPTAを改革する際に重視したことは、「三本の『や』」。
これまでのPTA規約には、「会員は全て平等の権利と義務を有する」と書かれていました。
この「義務」という言葉から生じる、
- やらないといけない義務感
- やらされているという強制感
- やらない人がいる不公平感
という三本の「や」が無くなれば、PTAはハッピーになれると考えたそうです。
自発的に「やりたいからやる」という本来のボランティア活動にしようということが、PTAからPTOへの改革の根本にあるのですね。
2014年度の「お試しPTO」を経て2015年度より、正式にPTOが始まりました。
義務感を無くしたPTOの最初の総会は強制ではなく自分の意志で多くの保護者が参加したそうです。
できる時にボランティアとして参加でき、ボランティアが集まらなければ、規模を小さくしたりやめたりすることも可能いう柔軟な活動は、当時としては斬新な改革だったと思います。
メディアからも注目される存在となりました。
完全ボランティア制のPTOへ!
10年目となるPTO
初代団長の思いは、その後もしっかりと次の団長達に上手に引き継がれ10年。今回お話をお聞きした久米さんは6代目団長となります。
現在の嶺町小学校、PTOボランティアセンター(PTA本部)は、図のような組織となっていて、42名がスタッフとして活動しています。
一般的なPTAにある学年代表、学級代表などは置かず、庶務や会計といった本部機能以外は、夏のイベント、安全防災、校外、広報の担当者がいます。
必要に応じてサポーター(ボランティア)を募集して、イベントなどを運営しているそうです。
PTOには、保護者がやりたいと思ったことを提案すると、それを実現できるように支援する「夢プロジェクト」という仕組みがあります。
これにより、地域と連携した「町探検クイズラリー」や、学校の裏に広がる多摩川の河川敷を利用した「嶺町小 多摩川ハロウィン仮装ウォーキング」「逃走中」など子どもが楽しめる活動が行われています。
実際に運営に携わる保護者はどのくらいでしょうか?
毎年、新入生に入会届を出してもらっていて、現在、入会していない人はゼロです。
そして会員のうち、約3割程度の保護者がスタッフやボランティアとして運営に関わっています。
同じ人が何度もボランティアとして参加してくれていたりと、一部の人に支えられている側面もあります。
毎年秋に次年度のボランティアセンターのスタッフを募集しています。
募集にあたっては、ボランティアセンターの仕事内容や仕組みを、お手紙やメール配信、時には着ぐるみを着るなど、いろいろな方法で説明をして、ハードルを下げる工夫をしています。
パソコン作業だけなど、様々な選択肢を準備して、できる範囲で関わっていただいています。
安全防災チームのサポーターは、通学路に旗を持って立っていただくのですが、これも集まった人数でできる範囲でやっています。
ホームページを見るとイベントが多いという印象がありますが、大変ではないですか?
コロナ禍でストップしていた校外活動なども、昨年から徐々に復活していますが、以前の資料が残っていなくて、少々大変な部分はありました。でも、子どもたちに思い出を作ってあげたいと、スタッフやサポーターの人たちが工夫しながら進めてくれています。
基本的には、去年と同じことをやる必要はないということを伝えています。
また、私の役割としても、「大変ならやめてもいいんじゃない?」と声に出して言うことも大事かなと思っています。「無理です」と声を上げてくれる人もいるので、そんな時は、休んでもらったりしています。
サポーターが集まらない場合は、、活動をやめるとか、やり方を変えるということも柔軟に行っています。
地域との関りも密接のようですね。
町会の方々は、非常に理解があります。昔ながらのやり方を守り続けることに対して、今の人たちに同じやり方をさせるのは難しいということもわかってくださっています。
我々も子どもたちも地域の中で過ごすので、商店街をはじめ、地域の方との連携はとても大事だと思っています。
いま、久米団長が抱えている危機感があるということですが。
PTOは、子どもが学校に在籍している間しか関わることはできません。
以前のPTAを知っている人がいなくなってきていて、現在の「PTO」が当たり前と感じている保護者が増えています。「嶺町小は、楽できるよ」みたいな話もあったりします。
楽だと思っていただくのは良いのですが、それでは組織は維持できません。
少しでも参加していただきたいなと思っています。
そういうことも、保護者会などでもお伝えはしています。
代替わりをする組織なので、目的やビジョンが明確でないと継続していかないと考えています。
そのための仕組みづくりをしていなければならないと思っています。
◯◯さんの思いで成立している組織ではなく、ビジョンがわかりやすく、参加したいと思ってもらえる組織でなければ維持できません。
そのためにはデジタルツールを活用した情報共有などの仕組みも考えていきたいと思っています。
ほとんどが共働きに家庭となり、PTOに変わった10年前とは、世の中もさらに変わっているので、次の形を考える時期に来ていると思っています。
PTOは大人も成長できる場でもあると思うので、そういったことの楽しさも伝えていければと思います。
10年続いてきたPTO。
今後、どのようになっていくのかが大変興味深いです。
本日は、ありがとうございました。