任意加入の導入やスマート化、適切な会計など
PTA改革は何から始めるべき?
改革を検討する際に
PTA活動の大前提
コンプライアンス
私たちは、任意団体であるPTAとして、任意加入や個人情報の適切な取り扱いなどのコンプライアンスは、PTA活動の大前提と考えています。PTA活動のおける、コンプライアンスに関する課題は少なくありません。
一方で、こうした課題への取り組みを既に終えられているPTA団体も増えています。
- PTA任意加入の説明と加入意思の確認
- 強制性の排除
- 未加入の子どもたちへの平等な扱い
- 含めたPTA会費の適切な使途
- PTAから学校への寄付・寄贈
- 適切な会計処理と管理
- 個人情報の適切な取り扱い
PTA任意加入
皆様から伺うお話として「PTA改革をしないまま、任意加入を導入したら会員が減ってしまう」「前例があるので簡単には」などがあります。確かに、負担が多いなど不満のある中での、任意加入導入は避けたいものだと思います。
しかしながら、対策を講じないまま状態では、何も変わりません。
具体的な対策
任意加入制度を未導入の場合、来年度に、以下のような対策の導入を検討してはいかがでしょうか。- 新一年生には、PTA任意加入の説明と加入意思の確認を実施
- 在校生には、会員継続意思の確認のみ実施
- 新一年生や在校生に向けて活動の目的や意義の丁寧な説明
活動内容の見直し
活動の目的や意義の説明にあたっては、活動内容の見直しも必要となる場合が多いと思います。
現状の活動スタイルに多くの保護者の賛同が得られている状況であれば、大きな課題はないと思います。
一方で、退会希望者が多い、改革要望の声が少なからずあるなどのケースでは、活動内容の見直しは必須です。
具体的な見直し内容は個々のPTAにより異なりますが、コンプラインスと時代にあわせたアップデートは共通する課題と考えます。
活動内容の見直した結果、長年続いてきたことを変えていく必要がある場合には、OBの方、地域の方、学校など様々な関係者との調整が必要となり、長い時間を要する場合もあります。
活動内容も見直しにあたっては、コンプラインスの観点、担い手の観点からの議論が重要です。
活動内容の見直した結果、年度内に全て実現できない目標があっても構いません。
来年度、複数年度で事業のあり方を見直す目標を掲げることが大切です。
任意加入導入と活動内容見直しはセットで
見直しの結果、目指している求めらるPTA活動のあり方、参加したくなるPTA運営の姿を、保護者や学校、地域の皆様に明確に伝えていくことが大切です。
任意加入導入には、活動内容の見直しも必要となる場合が大半で、同時並行として進めるべきことと思います。
執筆時点では、2024年度には、まだ時間があります。
2025年度の新一年生には、PTA任意加入の説明と加入意思の確認が実施される運営を願っています。
個人情報の適切な取り扱い
多くのPTA団体が、個人情報の適切な取り扱いに関する何らかの対策を行っているのが現状です。
一方で、具体的な対策内容については、団体により異なる現状もあります。
PTAを企業と比べると、予算や人的リソースには限りがありますが、限られたリソースの中でも個人情報の適切な取り扱いは重要です。
また、法律や社会、テクノロジーの進化など、個人情報の取り扱いに関する環境は、年々変わっており、対策のアップデートも必要です。
適切な個人情報取り扱いでも、外部からの攻撃などのリスクもあります。もちろん、内部のうっかりや悪意のリスクもないとは言い切れません。
実際に事故が起きた時に、適切な個人情報取り扱いだったと言える運営が必要です。
現状の対策に課題を感じている場合は
現状の対策に課題がある場合は、まず、現状の対策状況を確認し、年度内に目指すべき、個人情報保護対策の目標設定が重要です。
目標設定にあたっては、PTA団体として取り組める対策を洗い出し、優先順位をつける必要があります。
最も重要なことは、物理的なセキュリティ対策やルール作りより、個人情報の取り扱い関わる方のコンプライアンス意識だと思います。
この点は、学校も含め、役員など関係者での話し合いや学びの場が必要だと考えます。
その上で、以下のような対策が必要と考えます。
- 個人情報運用ルールの明確化
- 役員など関係者への研修
- 物理的なセキュリティー対策の検討と実行
- クラウド利用のセキュリティー対策の検討と実行
- 取り扱い者の限定
- 各取り扱い者が、日常的にセキュリティー対策を遵守
- 管理責任者による定期的なチェック
- 適切な個人情報取り扱いでの、万一の個人情報漏えい事故対策(補償制度の利用)
- 個人情報漏えい事故発生時の対応手順
- 保護者など個人情報の収集先への説明や方法
- 個人情報の第三者提供の取り扱い(学校との業務委託契約、外部業者への提供)
- 保有する個人データの開示対応
PTA全体としての対策の有効性
個人情報保護対策については、個々の部分でより理想的な対策が考えらるケースが多々ありますが、PTA全体としての対策の有効性が重要です。より理想的な対策を講じた結果、日常のセキュリティー対策が形骸化してしまうような運営は避けなかればなりません。
PTA団体として、取り組むべきこと、運用できることのバランスを考えながら、毎年、個人情報保護対策を見直すなど、適切なアップデートを行うことが重要です。
適切な個人情報保護とその対策
改革のヒント
よく指摘される課題
PTA活動については、メディアやSNSなどで、強制参加、時代に合わない非効率さ、同調圧力などを指摘されていますが、PTA改革を考える上での課題となる事例です。活動の目的は子どもの笑顔?
PTA組織や事業などの説明を聞くと「子どもの笑顔」はよく出てくるが、組織として何を目指すかなどの「ビジョン」や「大切にしたいものは何か」がわかりにくいなどの声もあります。
PTA活動の原点は、子どもたちのために保護者と学校が話し合う場であり、その先に教育課題の共有や解決、学びと交流、地域との関係などがあり、活動の目的は、保護者の成長ともに児童・生徒の健全な成長をはかることです。
こうした点が、多く方に共有されていないことも原因のひとつかと思います。
仕事内容や必要な時間がわかりにくい
委員を引き受ける時「やれる範囲でやればいいんです、誰でもできます」もありますが、現実は違ったなどの声もあります。
ICTなどの利活用により、業務内容の共有や業務量の可視化は、以前に比べ格段に手軽できます。
活動の可視化だけでなく、活動の柔軟性、組織の多様性を前提とした活動に切り替えれば、各保護者が持つスキルを活かせる機会の情報も容易に得ることが可能となります。 また、保護者が行う活動における裁量の範囲を明示していくことで「役に立ちたい」と考える方も増えてくると思います。
コスト意識が低い
ボランティアとはいえ、かけている時間(労力)に対する、得られる成果が妥当かと議論になる事業もあります。オンライン会議の導入や、書類の紙からPDFの切り替えなど、できることから導入していくことが重要です。
前例踏襲にこだわらず、各事業の目的を考え、他の手段がないか、必要性があるのかなど、金銭でだけでなく労働コストを意識した検討が必要です。
ICT利活用やデジタル化への壁がある
ICT利活用、デジタル化は、PTAでも急速に進んでいます。スマホを使っていない方がいれば、その方に配慮するなどしして、できる部分からICTを導入し利活用していくことPTAでも必要です。
ICT利活用、デジタル化は、PTA活動における大きな負担軽減につながります。
ジェンダー平等?
地域により会長がほとんど男性、ほとんど女性など、地域により伝統的な習慣がある場合もあります。もし、「会長の性別は○○、○○委員の性別は○○」という性別によるしきたりが前例党首的に続いているのであれば、経緯は別として、現在も必要な理由やその効果などについて、検討する機会をもつべきです。
日本も国として進めている「SDGs」における目標の5番目は「ジェンダー平等」です。
解決が難しいトラブルが発生したら?
パワハラや不正があったときなどは、単位PTAだけでは解決が難しい場合があるか思います。エスカレーション先として上部団体の機能や、教育委員会などサポートなどの仕組みを積極的な活用しましょう。
また、地域の議員経由で、自治体などに問い合わせをすることも一つの方法です。
スリム化ではなくスマート化
PTAの活動事例集などには、「組織運営の透明化、スリム化、円滑化、活性化」と謳われているものが多くあります。
当協議会でも2024年4月より、改革を行った単位PTAや連合会の皆様にインタビューを行っています。
担い手の環境が大きく変わる中で、当協議会の考える、PTA活動の見直しの重要なポイントは、スリム化ではなく、スマート化の視点であると考えています。
活動のスマート化とは
スリム化を推進すると、どうしても事業を削減、縮小することにつながり、PTA活動して本来必要な要素まで失ってしまうリスクがあります。当協議会では、スリム化はPTA改革の一つの手段に過ぎず、情報を集め、新しい技術やサービスを積極的に検討し、新しい視点や発想で活動を見直すことが、活動のスマート化であると考えています。
下記は、活動内容や成果をより充実させ、負担軽減にもつながる観点から考えたスマート化の一例です。
- 無料のLINE WORKSや、有料の一斉送信システムなどを利用して、紙をデジタル化、印刷費や人的負担を軽減
- 総会を書面からGoogleフォームに切り替え、一括ではなく、議案毎にに賛否を集計、議案毎の質問のオンライン受付と回答の公表、議決必要な資料もGoogleフォームで公開、より開かれた価値ある総会を実現
- 充て職による会議出席や形骸化している会議などは、運営方法を見直しを実施、オンライン利用のハイブリッド開催、PDF等で資料の事前送付、議事録の公開などにより会議に出席する意味や価値を向上
- 交通安全と犯罪対策の両面が必要な子どもの安心・安全対策に、人的負担のないICTを活用したサービスの活用、旗振り活動の縮小などを実現
事業の見直しには、事業の削減、縮小ではなく、PTAとして必要な活動をいかにスマートに実現していくかを考え、目的、負担、成果などを検証しながら、丁寧な話し合いを重ねることが重要です。
失ってはいけないことは、「合意形成のためにかける労力」です。
スマート化のヒント
課題の整理と取り組み
PTA活動に見直しを行う際の課題は大きわけて、コンプライアンスが絡む課題と組織の運営や事業における課題があります。
優先順位が難しいところですが、当協議会では、コンプライアンスが大前提と考えます。
しかし、コンプライアンスでまず必要な任意加入制度の導入には、組織の運営や事業における課題にも同時に取り組む必要があると考えます。
具体的には、「任意加入制度を導入します」「私たちの目指していることは」「今後のPTA活動はこうなります」を同時に発表することが理想的です。
組織の運営や事業における課題は、今年度実現できなくても、PTAとして目指していく方向性について検討し、保護者や学校、地域の皆様に、しっかりと理解いただくことが大切です。
子どもたちや保護者、学校やコミュニティにとって、PTAがなぜ必要性を理解いただき、求めらるPTA活動、楽しく参加できるPTA運営の道筋が見えれば、任意加入制度の導入も実施しやすい環境となります。
コンプライアンスが絡む課題
- 任意加入の説明、加入の意思確認
- 個人情報の適切な取り扱い
- 学校への寄付や寄贈の適切な手続き
- 活動の強制
- 役員や委員の選出方法
- 免除理由の開示強要
- 未加入者の子どもへ対応
組織の運営や事業における課題
- 事業の見直し
- 改革に伴う規約の改正
- 総会や会議の開催形式
- ITツール導入と積極的な利活用
- 事務的作業の見直し
- 保護者への連絡方法
- 会費徴収
- 個人情報の管理等
- 未加入者へ必要性の説明
改革のスタート
まず初めに
基本のスタイル
できる人が、できる時に、できる事を、集まった人数で
楽しいこと、前向きなこと、結果につながること様々な要素は大切です。改革に向けた理念だけでなく、賛同者が重要です。
仲間づくり
改革を進めるには、まず仲間づくりが必要です。
校長先生や役員は巡り合わせの部分もありますが、改革の意義や必要性を丁寧に説明する事で理解をいただき、少しずつでも仲間を増やしていく事がスタートです。
また、PTA改革は、年度だけでは解決できないこともあると思います。
長期の取り組みを織り込んだした仲間づくり重要です。
最初の取り組み
活動効率を踏まえた運営
活動方法や活動時間帯の見直しは、今年度に限りのルールでも良いと思います。
まず、できる部分から着手して、メンバーが改革に取り組みやすい運営に変えていきましょう。
この環境がないと、非効率です。
前例踏襲的に「これまで指摘もなかったから、続けていただけ」ということも、少なくありません。
新しい方法を取り入れる場合、今までの方法を否定したりせず、こっちの方がお互い楽になるからというスタンスが大切です。
利害が共通している仲間からの提案として感じてもらえるようするなど、運営には柔軟な対応も必要です。
会議の時間帯も従来通りでなく、出席者にあわせて柔軟に設定したり、オンライン利用のハイブリッド会議(出席者がリアルで出席、またはオンライン参加)なども検討対象です。
コンプライアンス上の課題を解決
任意加入の説明や加入の意思確認、免除理由の開示強要、個人情報の適切な取り扱い、未加入者の子どもへ対応などは、早急な対策が必要です。
一方で、役員や委員の選出方法、学校への寄付や寄贈の適切な手続きなどは、規約の改正など様々な準備が必要となり、時間をかけた対応が求められます。
任意加入の説明や加入の意思確認は、会員数にも影響しますので、PTA活動見直しとセットでの取り組みが必要です。
組織の運営や事業における課題を解決
本部だけに限りば、比較的取り組みやすいICTツール導入と積極的な利活用、事務的作業の見直しなど、対応できる部分から着手しましょう。
また、PTA室のインターネット環境は、活動効率化のためには、最低限必要なインフラと考えます。
費用は発生しますが、個人のスマートフォンなどに依存せず、PTA室でのオンライン会議やウェブサイトが自由に使えることは、活動効率化のためには重要です。
会費を手集金を行っている場合は、コンビニ払いやクレジットカードの導入の検討も一つの効率化策で、費用対効果の検討対象です。
喝采サービスを利用される場合には、決済会社の審査や手続きなどの時間を考え、早めの対応をお勧めします。
改革についての丁寧な説明
PTA改革を行う場合は、事業内容の変更を伴うケースも多いと思います。
PTAのOBからは「私たちがやってきた活動の全否定だ」、校長や他の役員からは「面倒なことはしたくない、前例踏襲でいきましょう」などの場面もあるかもしれません。
保護者や学校、OBや地域の皆様への説明には、歴代のPTA皆様が行ってきた過去の活動について、感謝と敬意をもっての対応が重要です。
その上で、コンプラインスの側面や、PTAの担い手である保護者の社会環境の変化について、丁寧に説明し理解をいただく必要があります。
PTA毎のバックグラウンドも考慮
学校毎にPTAには個性があります。
他の地域の事例を参考する場合、全てが当てはまるとは限りません。
一方で、伝統やしきたりを重視するあまり、時代に合わない状況が生じている場合や、コンプラインス上の課題については、現実的な対応も必要です。
- 学校の伝統やしきたりなど学校ならではの特色
- 保護者の人数(学校に在籍の児童・生徒数)
- 学校立地による地域性(古くからの住民が多い地域や、新しく転居された方が多い地域など)
- 町内会との関わり
- 組織運営のアップデート状況(時代にあった運営見直しがされているか)