まずは、子どもの気持ちや状態を聞くことからスタート
子どものこころと向きあう
ここでは、厚生労働省の引用を中心に、そのための具体的な方法や避けたいことについてご紹介しています。まずは、子どもの気持ちや状態を聞くことからスタートしましょう。
まず話を聞いてみる
話を聞いてみるには
話を聞くときに知っておきたいこと
- 話してくれないときは、無理強いはしない。
- 話してくれなくても、あきらめず、「いつでも聞くからね」と伝え、話してくれるのを待つ。
- 自分の弱い部分や不安について人に話すのには抵抗がある。
- 話してくれてありがとうという姿勢で聞く。
声をかけてみましょう
誰だって自分のこころの問題について話すのは、勇気がいるものです。
「こんなことを言って、変だと思われるかも」「こんな私は嫌われるかも」と話すことへの不安もあるでしょう。
ですから無理強いせず、話してくれるのを待ちます。
話してくれたら、「つらいことを話してくれてありがとう」とねぎらうことも大切です。
思春期なら、ただでさえ体の変化や性への目覚めで、自分でも自分がよくわからない時期。
大人への曲がり角に差し掛かっているわけですから、気持ちも揺れ動いて当然です。
大人への反抗心もあるかもしれません。
そんなとき、悩みがあるからといって、なかなか素直に心を開いてくれないかもしれません。
それでも「気にかけている」「心配している」ということを伝えれば、それを拒否することはあまりありません。
比較的落ち着いているときを見計らって、「最近の様子が心配なの、よかったら話してくれないかしら?」と、声をかけてみましょう。
話を聞くとき
話を聞くときのポイント
自分が悩みを抱えているとき、どんなふうに話を聞いてもらいたいですか?
アドバイスをされるよりも、まずはただ「そうなんだ、それは大変だったね、つらかったね」と受け止めてもらいたいのではないでしょうか。
家族や教職員として、心配な気持ちや「○○すべき」という意見、「○○してほしい」という考えがあるのは当然でしょう。
しかし、それはちょっと脇に置いて、じっくりと子どもの気持ちに共感し、受け止めることが大切です。
具体的な声かけの例
- 「学校に行きたくないほど、つらいんだね」
- 「最近、元気がないように見えて、心配なの」
- 「頭痛や腹痛が多いみたいね。どうしたのかな。どんな調子かもっと話してくれない?」
- 「あまり家族と話をしなくなったけど、お母さんはあなたと話がしたいわ」
- 「お友達とケンカすることが多くなったけど、何かあったのかな? よかったら話してくれないかな?」
- 「そうか……○○なんだね」と、子どもの言葉をくりかえす
まずは聞き役に徹する
子どもが話し始めたら、まずは聞き役に徹します。
自分の考えや意見を差しはさむことや、それはダメだ、違うなどと否定することは避けましょう。
子どもはどんなふうに感じているでしょうか、どんな気持ちでいるでしょうか?
子どもの気持ちに共感するとは、子ども自身の感じ方を理解するつもりで聞くことです。そして、子どもの気持ちをしっかり受け止める姿勢が大切です。自分の気持ちを理解して話を聞いてくれる相手には、信頼してこころを開いてくれるはずです。
こころの不調が感じられる場合、病気はきっとよくなるということを伝えることも大切です。
また親や周囲の人間がついている、一緒に乗り越えようというメッセージも大きな支えになります
Iメッセージで話すい
声をかけるときは「I(アイ)メッセージ」で話すことを意識するとよいでしょう。
「I(アイ)メッセージ」とは、「あなた」ではなく「私」を主語にして話す方法です。
「あなた」を主語した言葉は、たとえば、「あなたは最近、学校を休んでばかりね」「あなた、成績が下がったわね。どうしたの?」という具合です。相手を非難しているように響きやすいでしょう。
一方、実際に起こっていることに対して、「私」を主語に素直な気持ちを伝えると、相手を責めるのではなく、自分も一緒に考えようとする姿勢問が伝わります。
たとえば、「最近、学校をよく休むので、(私は)あなたのことがとても心配なの」「成績が下がっているので、(私は)気になっているの」と伝えれば、本人が受ける印象はずいぶん変わるでしょう。答えやすい質問の仕方を
質問するときには、「はい」「いいえ」のどちらかで答えなければならない質問や回答を迫る質問をすると、本人は責められている、強要されていると感じやすいでしょう。たとえば、「宿題はしたの?」「明日の用意はできているの?」といった質問は、プレッシャーになりやすいでしょう。
一方、「どんなふうに思う?」など、答え方が限定されない質問のほうが、相手も話しやすくなります。
「WHY?」よりも「HOW?」で聞きます。たとえば「○○については、どう?」「○○のときは、どんな感じだった?」という聞き方です。
避けたいこと
避けたいポイントは
「最近、どこか様子が違う」などと指摘されたら、ますますこころを閉ざして「そんなことない」と意地を張ってしまうかもしれません。
変化や問題を指摘することよりも、一緒に考えようという姿勢が大切です。
こころの病気についての誤解
「こころを病むのは弱い人」って …
一流のスポーツ選手が最高のパフォーマンスを維持するために、こころもメンテするのはごく当たり前のこと。
つらい出来事に遭遇して、こころが病気になってしまうことも決して特別なことではありません。
なのに、「こころを病むのは弱い人」とか「普通じゃない」などと、誤解をしている人をときどき見かけます。
そして、このような誤解があるために、より自分がつらくなったり、気づかないうちに周囲の誰かを傷つけているかもしれません。
こうした誤解について、一緒に考えてみましょう。
保護者や周りの方が、こころの病気について正しい理解と知識を持つことが大切です。
誤解1:弱い人がこころを病む
こころの病気は誰でもかかる可能性があります。
こころの病気は、風邪や胃腸炎などと同じように、誰でもかかる可能性があります。
強そうに見える人も、こころが波立つことはもちろんあるでしょう。
もしかしたら、強いからこそ、こころの病気になってしまうこともあります。
「こころの問題」を上手に乗りこえている人たちは、セルフケアが得意だったり、つらいときには周囲の人や専門家に相談したりしながら、ストレスとうまくつきあっていく方法を知っているのです。
誤解2:友達が少ないから、こころを病む
友達の数と、こころの病気は無関係です。
大勢の友達と一緒に行動するのが好きな人もいれば、一人か二人のごく親しい人がいるだけで満足する人もいます。
それは、人それぞれの個性です。
どんなつきあい方を好むかというだけの話であって、友達が多い人ほど、こころが健康だという証拠はどこにもありません。
一人でいることが好きな人が、こころの病気になりやすいということもありません。
一人でいるほうが充実した時間を過ごせる人もいます、場合によっては「いつも友達と一緒でないと不安」と思っているほうが、ストレスを感じているかもしれません。友達の数はこころの病気とは無関係です。
誤解3:こころの病気は遺伝する
こころの病気そのものは遺伝しません。
こころの病気に限らず、どの病気でもかかりやすい体質のようなものは一定の割合で見られます。
しかし、病気そのものが遺伝することはありません。
病気は、「体質×ストレス×考え方」のように、複数の要因が重なりあって起こるからです。
スギ花粉症になりやすいアレルギー体質をもっている人でも、スギのない地域で暮らせば花粉症にはなりません。
それと同じで、たとえ、かかりやすい体質をもっていたとしても、ストレスにうまく対処するといったことで病気になるリスクを下げることができます。
誤解4:弱いから、いじめられる
いじめは「いじめる側」の問題です。
「いじめられるのは自分が悪いからだ」と思う人がときどきいます。しかし、これはまちがいです。
いじめはほとんどの場合、いじめる側が何か問題を抱えているために起こります。
たとえばストレスや欲求不満を抱えていて、それを発散しようと、攻撃的な行動に出てしまうことがあります。
自分に自信があって、充実している人は、いじめをしようとはしないでしょう。
むしろ、心が弱くなっているときに誰かをいじめたくなるのかもしれません。
攻撃性をコントロールできなくなるというのは、こころのSOSサインのひとつです。
誤解5:悩みや不安を人に話すのは弱い人
悩みを話すことで、より信頼しあえます。
「誰かに悩みや不安を話すのは、私たちがもっている、人とのコミュニケーション手段のひとつです。
うれしいことや楽しいことがあったとき、誰かに話したくなるのと同じように、つらいことも誰かに話すことで、私たちはお互いを理解しあい、信頼しあうことができます。
悩みを人に話すのは、弱い人ではなく、むしろ勇気がいることかもしれません。そして、あなたが悩みを話すことで、相談を受けた人もあなたに悩みを話しやすくなります。こうやって、お互いをサポートしあうことで、みんなが日々のストレスを乗りこえやすくなっていくのです。
今、あなたの周りにいる人を信じて、ぜひ話をしてみてください。
誤解6:こころの病気は一生治らない
こころの病気も回復が可能です。
こころの病気のほとんどは、体の病気と同じように、早めに対処すれば、その分早くよくなることがわかっています。
いったん治っても、また同じ病気にかかってしまうこともありますが、これも体の病気と同じです。病気の引き金になったストレスにうまく対処したり、生活環境を変えたりすることで、予防することもできます。
中には、何年も薬のサポートが必要な病気もありますが、自分に合う薬を主治医に見つけてもらうことで、病気をもっていない人と同じように生活していくことができます。