一般社団法人 全国PTA連絡協議会

学校給食費の公会計化が進んでいます。PTA会費集金方法についても考えてみませんか?

公会計化の流れを踏まえ、PTA会費集金についても行政や学校との連携によるシステム利用など、時代にあった方法を検討してみてはいかがでしょうか?
ここでは、学校給食費等の公会計化と、公会計化に伴うPTA会費集金への影響を考えます。
作成:20223/09/03  更新:2024/08/21
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PTA会費集金方法について考えてみよう!

キャッシュレス

PTA会費集金の方法には、手集金、口座引き落とし、キャッシュレスなどいくつかの方法があり、各PTAの判断で、集金事務負担の軽減に取り組まれていることと思います。

ここでは、学校給食費等の公会計化と、公会計化に伴うPTA会費集金への影響を考えます。

公会計化の事例紹介として、公会計化にあわせ、教材費などの学校徴収金にPTA会費を含めて学校徴収金として収納するシステムを導入する自治体や、自治体とは別に、学校徴収金の徴収事務に民間の収納システムを利用する公立小学校をとりあげています。

学校給食費などの公会計化の流れを踏まえ、PTA会費集金についても行政や学校との連携によるシステム利用など、時代にあった方法を検討してみてはいかがでしょうか?

学校給食費などの公会計化について

公会計と私費会計

学校給食費の会計は、徴収や督促を学校が行い学校会計の中で処理する「私会計」と、学校給食費を自治体の会計に組み込む「公会計」があります。

学校給食が始まったのは明治期で、一部の学校で提供が始まり各校は独自に給食費を徴収してきました。戦後、学校給食法により給食費は保護者負担とされ学校徴収金として学校が管理する私会計となりました。

学校徴収金とは、県費及び国費以外の経費で、学校教育活動上必要となる経費として学校において児童生徒及び保護者から徴収する経費のことです。 学校現場では他の行政官庁には見られない、児童生徒の個人負担の経費が存在し、公費と共に学校教育活動を支えているのが現状です。

PTA会費が業務委任契約による学校徴収の場合、PTA会費は学校徴収金の管理受託経費にあたります。

記事
公費と私費の負担区分については、
PTA会費の適切な使途とは ≫

私費会計の費目

学校徴収金学校指定物品
個人負担経費管理受託経費
学校給食費
修学旅行費等
教材/テスト費
学年費/学級費
部活動費
共済掛金等
PTA会費
同窓会費
生徒会費
後援会活動費
制服
体操服
カバン等
補助教材等
※日本スポーツ振興センター災害共済掛金(460円)など

公会計と私費会計

公会計 私費会計
管理規定 各自治体の財務規則等教育委員会または学校判断
徴収方法 口座振替等、児童手当から振替 学校指定口座から振替、現金徴収
徴収者 自治体(一部は学校)学校
監査実施者 監査委員会、議会教職員、PTA
情報公開 自治体サイト、広報資料学校配布物

公会計化とは

公会計化

学校給食費などの管理を学校に委ねず、自治体の会計に組み入れる制度です。

保護者が指定した口座から学校ではなく、自治体が引き落とすこととなるため、引き落とせなかった場合でも児童生徒が学校へ現金を持参したり、教職員が徴収に回ったりすることはなくなります。

文部科学省は2019年7月、「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」を作成。必要な体制や工程などを紹介し、自治体に導入を促しています。

公会計化の見込まれる効果

文部科学省学校給食費の公会計化の見込まれる効果について、次のように述べています。

1.教員の業務負担の軽減

督促業務等から解放されて子どもに向き合う時間や授業改善の時間を確保でき、学校教育の質が向上する。

2.保護者の利便性の向上

納付方法を多様化することができ、保護者の利便性が向上する。(クレジットカード、コンビニ払い等)

3.徴収・管理業務の効率化

一括したシステム管理や外部委託等により、財政面を含めた業務の効率化が見込まれる。

4.透明性の向上、不正の防止

経理面の管理・監督体制や監査の機能が充実する。

5.公平性の確保

効果的な徴収により、滞納が減少する。

6.給食の安定的な実施・充実

効率的・効果的な食材調達や、他部局との協働で地産地消の取組などもしやすくなる。
出典:文部科学省 学校給食費の公会計化 概要資料(2019年9月14日)
公会計化の導入以前 文科省が2007年7月に公表した学校給食費の徴収状況によると、学校給食費の徴収・管理を行っている小学校では、未納者の説明や督促の対応(複数回答)は、学級担任が60.6%、校長や教頭が66.6%となっています。
記事
無償化に伴うメリットとデメリットなど
学校給食費の無償化を考える ≫

自治体による徴収方法に関する事例

コスト削減の工夫をしながらインターネットサービスを利用した納入に対応している事例

  • ふるさと納税等の徴収と同じ契約とすることで固定費を抑えながら、インターネットサービスを利用した納入に対応。

児童手当からの徴収を行っている事例

  • 積極的な呼びかけによって、約4割の保護者が児童手当からの徴収を選択。徴収率の維持向上や職員の負担軽減につながっている。
  • 学校給食申込書の中に、未納があった場合に児童手当から徴収することに同意するか回答する欄を設けて、児童手当からの徴収申出をあらかじめ取得。実際に未納があった際には、トラブルを防ぐために児童手当から徴収する前に事前に相談するなどの配慮も実施。

市税等と併せた口座振替に対応している事例

  • 口座振替依頼書の様式を市税等と統一し、保護者が市税等と併せて口座振替依頼を実施できるようにしている。

自治体による未納への対応に関する事例

地方公共団体内で協力体制を整備し、効率的に督促している事例

  • 市税との同一処理により、納税課(納税部門)から督促文書を送付
  • 納付期限から一定期間以上経過した学校給食費の債権については、収納課(債権管理・徴税部門)で対応

滞納している保護者への督促・徴収の業務を弁護士事務所に委託している事例

  • 一定額以上の学校給食費を滞納している保護者への督促・徴収の業務を、弁護士事務所に委託。委託料については、回収できた金額に応じた完全成功報酬制を採用

公会計化等の実施状況

学校給食費の公会計化等の実施を予定していない教育委員会の都道府県別割合

公会計化等の実施を予定していない教育委員会は602(37.8%)あり、都道府県別は以下のとおり。
公会計化

学校給食費の公会計化等※に関する実施・検討状況

公会計化等の実施割合は平均31.3%、導入の準備・検討をしている割合を含めると平均62.2%。
公会計化
  • 学校給食費を公会計化するとともに、保護者からの学校給食費の徴収・管理業務を地方公共団体の自らの業務として行うこと。
出典:文部科学省 学校給食費に係る公会計化等の推進状況調査の結果について 2021年度調査

公会計化によるPTA会費徴収への影響

公会計化導入後のPTA会費徴収方法

学校に代わり市町が給食費を徴収、管理する「公会計化」が進むにつれて、PTA会費の扱いが各自治体により対応が異なることが見えてきました。いくつかの自治体の事例を挙げてみます。

学校給食費の公会計化導入前

費目 給食費 教材費等 PTA会費
徴収・督促 学校学校学校またはPTA

学校給食費の公会計化導入後(対応によってパターン化)

給食費については、A〜Cいずれも徴収・督促共に学校から自治体に移行
区分 A B C
費目 教材費等 PTA会費 教材費等 PTA会費 教材費等 PTA会費
徴収・督促 学校 学校PTA 自治体
※自治体により細かな対応が異なるため簡易的な区分です。

A. PTA会費は引き続き、学校で収納管理

秋田県秋田市

秋田市では、平成29年4月から、学校給食費を市の歳入歳出予算に組み込んで市が管理する「公会計」方式を導入しております。
一方、学校ごとに納付額が異なる教材代や修学旅行の積立金、PTA会費などの費用(学校納付金と呼ばれている費用)は、引き続き各学校で収納管理していきます。
秋田市教育委員会 学事課 ≫ 

埼玉県春日部市

学校給食費以外の徴収金は、学校により種類や集める時期、金額などが異なるため、公会計とはなりません。 今までと同じように、学校での取り扱いとなります。
学校給食課 給食管理担当 ≫ 

東京都町田市

ただし、標準服、修学旅行費など、保護者のみなさまが事業者に直接代金を支払うものやPTA会費については、公会計化事業の対象外で、購入・支払等は別途学校からの案内によります。
学校教育部 教育総務課 ≫ 

山口県宇部市

なお、学校徴収金(学用品費、PTA会費、修学旅行費等)は、今後も学校からのお知らせに基づき、学校へお支払いください。
教育委員会事務局 学校給食課 ≫ 

B. PTA会費は引き続き、各団体で収納管理

千葉県千葉市

市への「PTA会費・保護者会費も一緒に引き落とされるのか」の質問に、回答として、口座振替による引落は行いません。
なお、集金方法は各PTA・保護者会で異なりますので、各団体からのご案内にてご確認をお願いします。
教育委員会事務局 学校教育部 保健体育課 ≫ 

C. 学校給食費と併せて、自治体がPTA会費を一括徴収

静岡県富士市

これまで学校ごとに「私会計」として学校長が管理していた学校給食費を、市が管理する「公会計」へ移行します。
また、学校徴収金(学年費、教育振興費、旅行積立など)や徴収委任のあったPTA会費などの「私会計」については、学校給食費と併せて市が一括徴収した後に、学校に振り分け、学校で管理します。
シティプロモーション課 広報広聴担当 ≫ 

大阪府吹田市

令和5年4月からは、小学校給食費は市が集金して管理します。
また、教材費・積立金・日本スポーツ振興センター掛金・生徒会費・PTA会費(学校徴収金等)については、各学校が引き続き納入金額の決定や教材の購入等を行いますが、業務効率化のため教育委員会事務局が学校徴収金等の集金をします。
学校教育部 学校教育室 ≫ 
以下の事例は、NTTファイナンス株式会社の ビリングサービスに関するお知らせ ≫ が出典です。

千葉県県御宿町

御宿町では、2021年10月1日から、同町の小学校、中学校2校の児童・生徒約290人分の学校給食費や教材費、PTA会費をはじめとする学校徴収金を本サービスで一元管理することにより、教職員と自治体職員の業務負担の軽減、保護者の利便性向上を実現しています。
御宿町 ≫ 

岡山県勝央町

勝央町では、2022年6月1日から、学校給食費の公会計化を実現、小・中学校3校の児童生徒教職員等約1100人分の学校給食費をはじめ学校徴収金が、教職員の手を離れ一括請求、一括支払できることになりました。
徴収対象は、学校給食費のほか、教材費やPTA会費をはじめとする学校徴収金となっています。
勝央町 ≫ 
NTTファイナンスの事例 保護者側にとっては、口座振替やクレジットカード払い等で多様な決済方法が選択できる点はメリットが大きいといえます。 また、学校側にとっては、入金の収納先は、給食費は自治体へ、教材費・PTA会費は学校へなど指定口座に振り分け管理されるので、事務作業が大幅に軽減される仕組みとなっています。
NTT Finance
引用:NTTファイナンス ビリングサービスに関するお知らせ(2023年9月3日)

PTA会費と学校徴収金

学校徴収金とは

学校徴収金とは、一般的に、保護者が学校に納入する費用、学校の指定により購入する物品の費用、修学旅行費用など保護者が負担する学校教育活動の費用のことです。
PTAと学校の間で、業務委任契を締結の上、PTA会費を学校徴収金の一部として集金している場合もあります。
記事
入会申込書や個人情報取り扱い、会費徴収など
PTA入会書類テンプレート ≫

学校徴収金に関する基本原則

保護者への説明責任

学校徴収金の管理と取り扱いは、保護者が学校長に対し信託していると考えられるものであり、その金額及び使途については、保護者に対して十分な説明と決算の報告を行い、保護者の意見を聞く機会も必要と考えられます。

必要額の徴収

学校徴収金が保護者の経済的負担につながることを十分認識し、少ない費用で大きな効果が得られるよう努めるとともに、副教材等の購入品、修学旅行、他の学校行事等について定期的に見直しを行い、保護者の負担の軽減に努めるべきものと考えられます。

適切な管理

保護者の信託に基づいて学校徴収金の事務を行う以上、その執行に当たっては不正事案が生じないよう各自治体などが定めるる私費会計等の規則によりより事務を行うべきものです。

自治体による学校徴収金の取り組み

公会計化には新しい会計システムの導入が必要だったり、税金徴収業務部署と連携など行政側のハードルはありますが、学校給食費だけでなく、学校徴収金にも対応可能なシステムを構築することで、徴収事務に伴う学校側や保護者の負担が少なくなることが期待されます。

学校徴収金システムの導入

文部科学省は、鳥取市教育委員会の取り組み事例を次のように紹介しています。
2018年4月稼働を目指し、学校給食費等の公会計化の取組の一環として、学校給食費など公費に移行する経費とともに、その他の学校関係諸費についても教育委員会で一元管理する学校徴収金システムを構築する。
鳥取市1

学校給食費等の公会計化とは

補助教材費については、単元テスト、ドリル、問題集、資料集など、どの学校でも共通して使用する補助教材を公会計で扱うこととし、それ以外の学校独自で使用する補助教材を私会計で扱うこととする。
学校徴収金会計業務から教職員を解放し、学校現場の多忙化の解消を図ることで教職員の事務の負担や精神的負担が軽減され、教職員が子どもと向き合う時間を確保する。
鳥取市2
出典:文部科学省 教職員の負担軽減に向けた取組み(2018年4月1日)

学校単位での学校徴収金の取り組み

公会計化によって学校給食費の徴収問題は解決しますが、学校徴収金に関するの負担は残ります。自治体システムが提供されない場合でも、学校単位での学校徴収金の事務負担軽減事例もあります。
北海道函館市立北北昭和小学校

公立小学校で教材やPTA会費のキャッシュレス決済導入

北海道新聞によると、函館市立北昭和小学校が本年度から、教材費やPTA会費の徴収にキャッシュレス決済を導入し、システム利用料は、学校全体で月額約1万円で、決済手数料は約3%。決済手数料は保護者が負担となるとしています。
参照:北海道新聞 教職員の負担軽減に向けた取組み(2023年5月10日)
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