不登校の小中学生、前年度から15.9%増加、過去最多34万人余に
不登校の小中学生、過去最多 2024年
不登校の割合は、小学校 2.14%、中学校 6.71%
2023年度に全国の国公私立小中学校で「不登校」と判断された児童や生徒は、前年度から15.9%(4万7434人)増の346,482人となり、過去最多を更新しています。
このうち、小学生が130,370人で10年前の約5倍に、中学生が216,112人で10年前の2.2倍に、それぞれ増えています。高校生も3年連続で増加しており、68,770人となっています。
一方で、学校内外の専門機関等で相談・指導を受けていない児童生徒数は約11万4千人に上っており、子どもたちのSOSを受け止め、外部の関係機関等と連携してきめ細やかな対応をすることが求められています。
不登校とは、病気や経済的理由ではない要因で、年間30日以上登校しない状況です。
不登校の割合をみると、小学校 2.14%は、47人にひとり、中学校 6.71%は、14人にひとりになります。
下図は、1991〜2023年の、不登校児童の割合と、前年度と比べた不登校児童数の増減率です。
不登校児童・生徒の割合
不登校の割合は2012年以降、11年連続増加
不登校児童・生徒数の増減率を見ると、1999年度〜2012年度は、減少している年度もあるなど大きな変動のない期間です。
直接の関係はありませんが、1999年と2012年の前後のニュースには、以下のようなものがありました。
- 1998年
- 長野オリンピック、郵便番号の7桁化、サッカーワールドカップに日本代表が初出場(フランス大会)、Google設立、iMac日本発売
- 1999年
- EUでの単一通貨ユーロが導入、世界初のDVDレコーダー発売、日光「東照宮」世界遺産
- 2000年
- 2000円札発行、シドニーオリンピック、BSデジタル放送スタート、ロシア大統領にプーチン
- 2010年
- 日本年金機構が発足、公立高校の授業料無償化、殺人、強盗殺人事件の時効廃止
- 2011年
- 東日本大震災が発生、新学習指導要領に基づき小学5、6年生の英語活動が必修化、アナログ放送が終了し地上デジタル放送へ移行
- 2012年
- 東京スカイツリーオープン、ロンドンオリンピック、100歳以上の人口が5万人を超え、日本郵便株式会社が発足
- 2013年
- 富士山が世界遺産、米国・オバマ大統領の第二政権、習近平が国家主席・国家中央軍事委員会主席に選出
不登校児童・生徒数の増減率(対前年)
- 在籍児童数に対する不登校児童数の割合
- 調査対象:国公私立小・中学校(小学校には義務教育学校前期課程,中学校には義務教育学校後期課程及び中等教育学校前期課程を含む。)
不登校児童・生徒増加の背景
不登校の子どもたちが、5万人近く増加したことは、衝撃ともいえます。
一方で、学校に行かないことがよくないという従来の意識に変化が出ていることも事実と考えます。
背景には、フリースクールなどが社会的に認知されてきたことも一因です。
また、不登校が休養や自分を見つめ直す機会になるとの認識が保護者間で広がったこともあり、子どもがストレスを抱えたまま通学するよりも、学ぶ場所の選択が可能になり、自分が学びやすい場所で学べばよいと考える保護者が増えてきているのではないでしょうか?
文部科学省では、2023年の「不登校対策」誰一人取り残されない学びの保障に向けての中で、次ように述べています。
義務教育の段階で学びに繋がっていない子供たちが多くいることについて、誰一人取り残されない学びの保障を推進している文部科学省としては、極めて憂慮すべき状況として受け止めています。
また、不登校児童生徒数は10年連続で増加を、時差登校で登校リズムが変わったり、学校生活に制約が増えたことで、交友関係を築くのが難しくなり、登校への意欲を失った子供たちが増えたことも、原因の1つだと認識しています。
保護者にとって、考える良い機会
学ぶ環境が整った場所であれば、学校教育に限らなくてもいいのではないかと保護者が気づき始めているとも考えられます。
コロナ禍を経てのオンライン授業の広がりも、学びの場に対する意識変化に少なからず影響があります。
こうした社会の変化は、私たちも保護者にとって、学校教育のあり方、学校でやるべきことは何かを考える良い機会であると思います。
不登校児童生徒について把握した事実
下図は、文部科学省の「不登校児童生徒について把握した事実」から作成されたもので、対象は、不登校児童・生徒全員、回答形式は、当てはまるものをすべて回答する複数回答形式です。
数値は、不登校児童生徒数に対する割合です。
前回調査までは教員が主観的に不登校の要因を回答していましたが、実態を正確に把握できていないとされ、今回の調査では、客観性を重視し、教員が把握した事実を選択肢から複数選ぶ形式となっています。
結果は、「学校生活に対してやる気が出ないなどの相談」が、最も多く、小中学校ともに32.2%となっています。
前回調査は、回答方法が異なりますが、「無気力・不安」を要因とする回答が最も多く、今回と同様の傾向となっています。
不登校児童生徒について把握した事実
学校設置者別では、
国立小学校・中学校
公立小学校・中学校
私立小学校・中学校
- 選択肢の「相談」は、「相談があった」を省略して表示。
- 「個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談」は、障害(疑い含む)に起因する特別な教育的支援以外の個別の配慮を指す。
文部科学省では
- 以下の内容は、文部科学省「不登校対策」誰一人取り残されない学びの保障に向けてからの引用を含みます。
COCOLOプラン
文部科学省では、2023年3月に、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策として「COCOLOプラン」を発表しています。
COCOLOプランでは、次のようなう3本の柱を打ち出しています。
- 不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える
- 心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する
- 学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする
不登校特例校から学びの多様化学校へ
これまでは「不登校特例校」と呼んでいましたが、不登校特例校に在籍する児童生徒や関係者の声を聴きながら「学びの多様化学校」という名称に変更し、不登校児童に配慮した学校として、通常の学校より総授業時間数が少ないなど、柔軟に学ぶことができるようにしています。
学びの多様化学校については、各都道府県と政令指定都市に1校ずつ設置することとし、将来的には分教室型も含めて300校を目指すという数値目標を立てています。
学校に行かなくてもよいのではないかの声に
学校は学力の習得だけが目的ではなく、将来社会的に自立していくために人間関係を構築すること等を学べる重要な教育機関であり、子供にとって一番近い学びの場です。
学校には教員免許を持った教員がいて、財政支援により環境も整えられている等、教育の質が担保されています。
まずは学校で学ぶチャンスを子供たちが失わないように学校、教育関係者が努めることが児童生徒の社会的自立のために重要と考えています。
文部科学省では、子供たちが何に困っているのかを早期に把握する取組を強化し、教育の質が保障された学校で学べる環境作りを強化していきます。
ICT技術を生かして心のSOSの早期発見を
全国の公立小・中学校で、1人1台端末の整備が概ね完了しています。
子供たちは配布された端末アプリを整備することで、悩みや困りごとを気軽に相談することが可能となります。
ある自治体の教育委員会では、この仕組みを全小学校高学年及び中学校で取り入れたところ、多くの相談が寄せられたと報告されました。
アプリ導入前は、教育委員会宛てにメールで相談するしか手段がなく、メール相談が年間約50件だったのですが、導入後はアプリから680件の相談がありました。
普段使っている端末で簡単に相談ができるため、悩みを打ち明けるハードルが下がっていると思われます。
また、アプリには心の状態を回答するアンケート機能が搭載されているものもあります。
「気分が晴れない」という回答が続いている子供には、教員が声掛けをすることができるので、子供の心の変化やSOSに早めに気付いて対応することが可能です。
不登校児童生徒や保護者の方に向けた文部科学省のメッセージ
みんなが安心して学べる学校へ
2022年10月には「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を策定しました。COCOLOプランの取組を前倒しし、学校内外の教育支援センター等学びの場の整備や、小さな心のSOSの早期発見として、アプリによる「心の健康観察」推進等の緊急支援策を打ち出しており、文部科学大臣より「誰一人取り残されない学びの保障をする」とメッセージを発信しました。
保護者のみなさんからは、困ったときにどこに相談すればよいのか分からないという声がありますので、保護者の方が情報にアクセスしやすくなるよう、学校内外の学びの場に関する情報や相談窓口等の情報発信の強化を各都道府県教育委員会等に要請するとともに、今後、文部科学省でもその情報をまとめて発信していく予定です。
ぜひご活用ください。文部科学省は、子供たちの心のSOSを早期発見し、一人一人に寄り添った学びの場を提供できるよう、全力でサポートしていきます。