学校給食費や無償化の状況 2024

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給食費無償化の自治体は 30.5% 6年で7倍増 給食費の上昇は続き、地域差も

学校給食費や無償化の状況 2024

全国PTA連絡協議会
出典:文部科学省「学校給食費の無償化を実施する各教育委員会における取組の実態調査」(2024年6月)

学校給食費無償化の実施状況

文部科学省では、2023年度において、学校給食費の無償化を実施中又は実施予定の都道府県教育委員会・市区町村教育委員会、775教教育委員会(事務組合を含む)に調査を行い、93.2%の722教育委員会が学校給食費無償化を実施中とし、5.2%は、2023年度中に実施予定としています。

実施予定のない教育委員会を含めた1,794を分母とした場合、要件付の無償化も含めた何らかの形での無償化を実施中の自治体は、40.2%(722)、無償化予定のない自治体は、1,019で、56.8%となっています。

無償化を実施した理由についての複数回答の調査もあり、結果は以下のようになっています。

  • 保護者の経済的負担の軽減、子育て支援:652自治体(90.3%)
  • 少子化対策…子どもの増加を期待:666自治体(9.1%)
  • 定住・転入の促進、地域創生…人口増を期待:637自治体(5.1%)

無償化を実施中又は実施予定の775自治体の状況

実施状況 n 比率
実施中 722 93.2%
今後実施予定(2023年度) 40 5.2%
2023年度中に実施していたが、現在は実施していない 13 1.7%
  • 調査は2023年9月1日現在のもので、2023年4月から8月までのいずれかの期間に、学校給食費の無償化を実施していたものの、調査の時点においては既に終了している自治体を含みます。

給食費無償化の自治体は、30.5% 6年で7倍増

小学校・中学校段階のおける給食費の無償化を実施中の自治体うち、一部には支援要件を設けている自治体もあります。
支援要件を設けず、小中の全員を対象に無償化を実施している自治体は、547で、1,794教育委員会を分母とした場合、無償化の実施状況は、30.5%となります。

2017年度の同様の調査の76自治体から、6年で約7倍に増えており、子育て支援の一環で給食費を無償化する動きが広がっています。

無償化状況(全員対象、要件ありなど)

小学校 中学校 n 比率
全員対象 全員対象 547 75.8%
要件あり 要件あり 145 20.1%
未実施 要件あり 13 1.8%
全員対象 未実施 9 1.2%
  • 比率が1.0%以上のものを表示

支援要件がある場合、多子世帯が大半

支援要件を設けて学校給食費の無償化を実施と回答した153教育委員会における支援要件は、多子世帯が最も多く88.2%となっています。また、一部の学年に限定して無償化しているところも、4.6%ありました。

具体的な支援要件

支援要件の内容 n 比率
1.多子世帯 135 88.2%
2.一部の学年に限定している場合 7 4.6%
3.所得の条件を設けている場合 2 1.3%
その他(1〜3の要件を組み合わせ) 9 5.9%

無償化やめる自治体も

無償化を実施中の自治体うち、722自治体のうち2024年度以降に続ける予定はないと答えた自治体は、82(11.4%)あります。財源の問題もあり、時期を限って無償化を実施する自治体もあり、無償化の取り組みは、各自治体の裁量に委ねられているのが現状です。

一般家庭の負担が減るのは歓迎されるべきことですが、全国で格差があるのは良くないことです。また、給食の無償化が、子育て世代の票などを目的とした選挙対策だけに利用されるのは避けなければなりません。
給食の無償化については、表層的な部分だけでなく、しっかりと議論されるべき社会課題と考えます。

都道府県単位で初の無償化 青森県

青森県は県内すべての小中学校の給食費を2024年10月から無償化するため、24年度予算案に19億円の関連費用を計上しました。報道によると、宮下宗一郎知事は給食の無償化で「子育て世帯の負担が軽減し、可処分所得が増えれば所得向上の効果がある」と指摘し、家計に余裕が生まれ、出生率の上昇につながると期待を寄せています。

東京都では、

東京都23区に限っては、2024年4月からすべての公立小中学校が無償化となりました。東京都では、2024年9月6日に、これまでの補助制度に加え、学校での給食費を無償化する市町村に対し、新たな財政支援を拡充すると発表しました。このことを受けて、東村山市では、2025年1月から当面の間、市立小・中学校の給食費無償化を実施すると発表しています。

全国的な無償化、実現の可能性は

今回の調査は、政府が2023年6月に公表した「こども未来戦略方針」で「無償化の実現に向けた実態調査を行う」などとしたことを受け実施されたものです。

一律無償化に向けた課題の一つに「児童生徒間の公平感の確保などについて」があります。
不登校やアレルギー対応などで、給食の提供を受けていない児童生徒が28万人以上、また給食実施校に在籍していない児童生徒が一定数いるなど、無償化の恩恵を受けられない児童生徒に対する不公平感が生じる恐れが指摘されています。

また、財源の確保も課題となっており、学校給食を所管する文科省の試算によると、全国の公立小中学校で全員を対象に無償化するには、同省予算の約1割にあたる約4800億円が必要とされています。
文科省はこうした調査結果を受け、一律で無償化すべきかを引き続き検討するとしています。

給食無償化は、都道府県や市区町村だけでは解決できない課題と考えます。子どもたちは全国どこに住んでいても、平等であるべきで、住んでいる場所によって、給食の費用やクオリティに差が出てくるのは良くないことです。
一方で課題もあり、すべての子どもたちに、安定した給食を提供するためには、私たち保護者が給食無償化について真剣に考える機会が必要です。

学校給食費

学校給食法などでは、給食を提供するための設備費や人件費を自治体の負担とする一方、食材費は保護者の負担としており、各自治体が給食費として徴収しています。

上昇が続く給食費 地域差も

2023年度の公立校の学校給食費(材料費)の全国平均額をみると、前回の2021年度調査と比べて、小学校は、4.7%、中学校も4.8%の値上がりとなっています。
給食費は、物価高騰などを背景に上昇傾向が続いており、10年前の2013年度と比べると小学校で13%(523円)、中学校で12%(596円)の上昇となっています。

値上げの幅にも地域差

都道府県別の比較では、小学校で、最も高い福島県5,314円と、最も低い滋賀県3,933円では約1400円の差が出ています。
上昇状況は。2013年度からの10年での値上げ幅を、小学校について見ると、最も小さかったのは滋賀県190円、最も大きかったのは鹿児島県991円となっており、値上げ幅に約800円の差が生じています。中学校では香川県と鹿児島県で約1,200円の差が生じています。

学校給食の実施状況は、主食、ミルクおよびおかず(副菜)によるを提供する「完全給食」の実施は、公立小学校で99.5%、公立中学校97.1%となっています。一部には牛乳やおかずのみといった「補食給食」や牛乳のみの「ミルク給食:を提供している場合もあり、給食費が1,000円を下回る場合もあります。

学校給食費平均月額(前回調査比較)

区分 2023年 2021年
給食回数 給食費
月額
対前回
上昇率
給食回数 給食費
月額
小学校 192 4,688 4.7% 192 4,477
中学校 188 5,367 4.8% 188 5,121
定時制 177 5,344 7.4% 177 4,977
  • 定時制は、夜間定時制高等学校

学校給食費平均月額(都道府県別)

都道府県 小学校 中学校 定時制
平均月額 実施回数 平均月額 実施回数 平均月額 実施回数
全国平均 4,688 192 5,367 188 5,344 177
北海道 4,700 195 5,470 193 5,314 193
青森県 4,831 196 5,437 192 6,680 167
岩手県 4,357 174 4,950 172 8,791 185
宮城県 4,817 183 5,547 175 5,354 182
秋田県 5,143 193 5,809 192 6,073 184
山形県 5,004 195 5,633 189 6,434 190
福島県 5,314 184 5,824 179 6,598 182
茨城県 4,766 195 5,241 194 4,747 186
栃木県 4,532 198 5,308 197 5,595 182
群馬県 4,433 197 5,290 197
埼玉県 4,430 187 5,277 184 5,005 176
千葉県 4,681 188 5,520 186
東京都 4,862 192 5,794 185 7,187 182
神奈川県 4,531 187 5,052 172 4,295 162
新潟県 5,265 195 6,148 193
富山県 5,311 196 6,282 197 5,392 165
石川県 4,861 195 5,711 196 5,777 189
福井県 4,685 194 5,379 192 4,900 154
山梨県 5,108 195 5,827 191 4,623 178
長野県 5,250 201 6,063 199 4,873 176
岐阜県 4,754 199 5,501 199 5,439 179
静岡県 4,688 182 5,587 182 5,176 186
愛知県 4,457 187 5,252 182 4,835 171
三重県 4,441 188 4,917 186
滋賀県 3,933 189 4,493 186 4,952 181
京都府 4,516 192 5,006 180 5,820 175
大阪府 4,400 192 5,251 182 4,550 138
兵庫県 4,306 187 4,897 178 3,859 156
奈良県 4,385 186 4,824 178
和歌山県 4,552 192 5,069 189
鳥取県 4,985 192 5,736 190
島根県 4,834 196 5,637 198
岡山県 5,155 193 5,864 189 5,749 186
広島県 4,776 198 5,414 193 6,324 186
山口県 4,787 193 5,408 190 3,579 147
徳島県 5,256 194 5,761 192
香川県 4,510 184 4,896 177
愛媛県 4,380 188 4,863 182
高知県 4,767 193 5,277 190 4,863 164
福岡県 4,573 191 5,412 190 5,035 184
佐賀県 4,507 191 5,273 189 5,487 186
長崎県 4,296 190 5,054 187 4,505 187
熊本県 4,320 195 5,008 190 4,245 186
大分県 4,519 198 4,962 197 5,824 178
宮崎県 4,537 198 5,287 197 5,901 191
鹿児島県 4,631 194 5,427 193 4,800 158
沖縄県 4,179 194 4,634 192 3,800 199
  • 定時制は、夜間定時制高等学校

給食費と社会情勢

2022年のロシアのウクライナ侵攻などの影響もあり、数年前に比べ多くの食材が値上がりしている現状です。
全国平均から概算では、一食の給食にかけられる食材費で293円ほどで、社会情勢や気候変動の影響による食材費の変動を受けやすい状況です。

学校給食

写真提供/(独)日本スポーツ振興センター

昨今の報道では、少ないおかずとご飯、汁の給食が取り上げられることもありました。

2024年4月17日に政府広報オンラインが紹介した「平成・令和の給食メニュー」が、Xなどで、野菜や肉がしっかり使われた丼物の主食、スープにサラダと春巻きの副菜、フルーツゼリーに牛乳の給食メニューは、実際子どもたちが食べている給食の献立とはかけ離れているとして、多くの保護者から批判が寄せられました。

2023年9月には、学校の給食や学生寮、官公庁の食堂の業務などを手がけてきた、広島県の給食会社・ホーユーが倒産、各地の高校や特別支援学校、警察学校などで給食や食事が提供できなくる事態になりました。

食材が値上がり対応として、各自治体が、保護者が支払う給食費は据え置き、値上げ幅を減らすため、補助金によって物価高騰した分の食材費を補う例も多くありました。
こうした補助金令達の結果、給食費無償化のコストなどの議論が進んだ部分もあります。

学校給食の実施状況

学校給食は現在、「学校給食法」という法律が一番のもとになって実施されています。
食事の内容によって3つのスタイルがあります。

完全給食 ごはん、パンまたはめんの主食、ミルクおよびおかず(副菜)による給食
補食給食 完全給食以外の給食で、給食内容がミルク及びおかず等である給食
ミルク給食 給食内容がミルクのみである給食

完全給食の実施率(学校種別)

文部科学省 学校給食実施状況等調査によると、2023年5月1日現在、
小学校の98.8%、中学校の89.8%、夜間定時制高校の51.4%が、完全給食を実施しています。
国立、公立に比べ、私立のおける完全給食の実施率は低くなっています。

全体 国立 公立 私立
小学校 98.8% 98.5% 99.5% 43.4%
中学校 89.8% 20.6% 97.1% 8.2%
義務教育学校 98.6% 100.0% 99.0% 0.0%
中等教育学校 58.9% 0.0% 74.3% 41.2%
特別支援学校 88.9% 97.8% 88.7% 62.5%
夜間定時制高校 51.4% 51.4% 50.0%
  • 中等教育学校は前期課程

小中学校で完全給食を実施しない理由

小学校
84校
中学校
264校
他の施設*1で昼食が提供されるため 42校 60校
給食施設・設備の問題*2 20校 55校
地理的理由で困難 10校 6校
財政的理由で困難 9校 48校
教育課程上、一律に提供することが困難*3 0校 27校
中高一貫校で高校生と同じ環境*4を想定 14校
  • 1 児童自立支援施設、児童心理治療施設、病院、児童養護施設、寄宿舎等
  • 2 補食給食実施校で、米飯の調理施設がない場合を含む
  • 3 夜間中学校、学びの多様化学校(不登校特例校)等
  • 4 食堂や購買の利用等

完全給食の実施率の推移

完全給食の実施率の推移
出典:文部科学省 学校給食に関する実態調査 令和6年

学校給食とは

学校給食の役割

学校給食は、成長期にある児童生徒の心身の健全な発達のため、栄養バランスのとれた豊かな食事を提供することにより、健康の増進、体位の向上を図ることはもちろんのこと、食に関する指導を効果的に進めるための重要な教材として、給食の時間はもとより各教科や特別活動、総合的な学習の時間等において活用することができます。

特に給食の時間では、準備から後片付けを通して、計画的・継続的に指導を行うことにより、児童生徒に望ましい食習慣と食に関する実践力を身に付けさせることができます。

また、学校給食に地場産物を活用したり、地域の郷土食や行事食を提供することを通じ、地域の文化や伝統に対する理解と関心を深めることもできるなど高い教育効果が期待できます。

出典:食に関する指導の手引より抜粋

学校給食の目標

2008年6月に学校給食法が大幅に改正され、学校給食の目標が4つから7つになり、学校給食は教育の一環として実施していくことが明確になりました。

  1. 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図る。
  2. 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、望ましい食習慣を養うこと。
  3. 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び共同の精神を養うこと。
  4. 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  5. 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労に重んずる態度を養うこと。
  6. わが国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
  7. 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。

食育の視点

健康にかかわる問題は、日ごろの食習慣によるところが多いことが指摘されています。生涯にわたる健康作りのために正しい食習慣を身につけることが必要です。

学校では、子どもたちが健康で生き生きとした生活を送ることができるように、学校給食を中心に、いわゆる「食に関する指導」を行われています。

1. 食事の重要性

食事の重要性、食事の喜び、楽しさを理解する。

2. 心身の健康

心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事のとり方を理解し、自ら管理していく能力を身に付ける。

食品を選択する能力

正しい知識・情報に基づいて、食物の品質及び安全性等について自ら判断できる能力を身に付ける。

3.感謝の心

食物を大事にし、食物の生産等にかかわる人々へ感謝する心をもつ

4.社会性

食事のマナーや食事を通じた人間関係形成能力を身に付ける。

5.食文化

各地域の産物、食文化や食にかかわる歴史等を理解し、尊重する心をもつ。

出典:文部科学省 食に関する指導の手引」-第二次改訂版-
保護者と地域
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