学校・教師が担う業務に係る3分類をもとにした、学校における教育課題を共有や解決策
学校や教師が担う業務に係る課題
2019年の中央教育審議会答申で示された、いわゆる「学校・教師が担う業務に係る3分類」をもとに、学校における教育課題を共有や解決策について見ていきます。基本的には学校以外が担うぺき業務の考え方を明確化した上で、役割分担や適正化を中心に取りまとめています。
学校・保護者・地域で考えるべき課題
教育課題の共有や解決
PTAの理念は、「家庭」「学校」「社会」の三者が協働し合うための活動です。
PTA本来の意義は、「子どもたちのために保護者と学校が話し合う場」であり、その先に「教育課題の共有や解決」「学びと交流」「地域との関係」があります。
学校の働き方改革がさらに進む状況下で、学校における教育課題を共有や解決策について見てきます。
2019年の中央教育審議会答申*より、学校が担う業務の役割分担・適正化について、いわゆる「学校・教師が担う業務に係る3分類」が提示されました。
そのうちの一つである「基本的には学校以外が担うべき業務」は、関係者間で役割分担し、共通認識を図ることが重要だとされています。
具体的には、登下校に関する対応や学校徴収金の徴収・管理などがあてはまります。
- 新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)(第213号)(2019年1月25日)
学校・教師が担う業務に係る3分類
中央教育審議会答申で、学校・教師が担う業務に係る以下の3分類が示され、文部科学省では、学校・教師が担う業務の考え方を明確化した上で、役割分担や適正化を推進するとしています。- 基本的には学校以外が担うぺき業務
- 学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
- 教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
出典:中央教育審議会答申 教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)概要(2023年8月28日)
3分類に基づく14の取組
学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
- 調査・統計等への回答等(事務職員等)
- 児童生徒の休み時間における対応(輪番、地域ボランティア等)
- 校内清掃(輪番、地域ボランティア等)
- 部活動(部活動指導員等)
- 部活動の設置・運営は法令上の義務でないが、ほとんどの中学・高校で設置され、多くの教師が顧問を担わざるを得ない実態
教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
- 給食時の対応(学級担任と栄蚕教諭等との連携等)
- 授業準備(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
- 学習評価や成績処理(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
- 学校行事の準備・運営(事務職員等との連携、一部外部委託等)
- 進路指導(事務職員や外部人材との連携・協力等)
- 支援が必要な児童生徒・家庭への対応(専門スタッフとの連携・協力等)
出典:中央教育審議会答申 教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)概要(2023年8月28日)
以下は、2023年8月28日の中央教育審議会 質の高い教師の確保特別部会 教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)から、3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための各主体による「対応策の例」を参照しています。
基本的には学校以外が担うぺき業務
1. 登下校に関する対応
教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査
登下校時の対応は、学校以外の主体(地方公共団体、教育委員会、保護者、スクールガード・リーダー、 地域人材等)が中心に対応している。
調査年度 | 2019年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|
都道府県 | 23.4% | 23.4% | 25.5% |
政令市 | 70.0% | 80.0% | 85.0% |
市区町村 | 57.8% | 61.1% | 61.7% |
自治体での取組例
防犯ボランティア組織の定着及び持続可能な活動の実現に向けて、様々な機関が連携し、地域一体となって支える「胎内市子どもを見守りタイ」では、年1回の総会を開催し、情報共有や功労者表彰、事例発表会、講習会等を開催している。
日ごろからのコミュニケーションにより見守り活動者同士の横の連携も自然と構築され、登校時に児童への付き添いを実施しているが、行政区をまたぐ際に、次の行政区の見守り活動者へバトンタッチするなど、役割分担を明確にし、登下校時の空白地帯の減少や、活動負担の軽減を実現している。
新潟県胎内市教育委員会
市内すべての小学校のそれぞれにおいて、防犯ボランティア組織が結成され、登下校時の見守り活動を実施している。防犯ボランティア組織の定着及び持続可能な活動の実現に向けて、様々な機関が連携し、地域一体となって支える「胎内市子どもを見守りタイ」では、年1回の総会を開催し、情報共有や功労者表彰、事例発表会、講習会等を開催している。
埼玉県嵐山町教育委員会
スクールガード・リーダーだけでなく、町内行政区(町内会)、PTA、ボランティア団体、交通指導員、行政職員等による見守り活動が行われている。日ごろからのコミュニケーションにより見守り活動者同士の横の連携も自然と構築され、登校時に児童への付き添いを実施しているが、行政区をまたぐ際に、次の行政区の見守り活動者へバトンタッチするなど、役割分担を明確にし、登下校時の空白地帯の減少や、活動負担の軽減を実現している。
関係通知等
登下校防犯プランについて
教育委員会・学校、家庭、地域住民、警察、自治体の関係部局等の関係機関と連携し、学校や地域の実情に応じた安全確保対策について取り組まれるようお願いします。
通学路における交通安全の確保の徹底について
さらに、登下校の見守りをはじめとする児童生徒等を取り巻く学校安全上の課題に対して、学校と教職員がその全てを担うことは困難です。特に、平素からの学校と家庭・地域との連携・協働の推進が不可欠です。
このため、例えば、地域学校安全委員会や学校警察連絡協議会等の設置・活用や、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)や地域学校協働活動などの学校と地域の連携・協働の仕組みを活用することにより、地域の関係者との情報共有や意見交換の日常的な実施や、地域ぐるみによる交通安全の取組の推進をお願いします。
登下校防犯プランについて(通知)2018年6月
教育委員会・学校、家庭、地域住民、警察、自治体の関係部局等の関係機関と連携し、学校や地域の実情に応じた安全確保対策について取り組まれるようお願いします。
登下校防犯プラン
- 地域における連携の強化
- 通学路の合同点検の徹底及び環境の整備・改善
- 不審者情報等の共有及び迅速な対応
- 多様な担い手による見守りの活性化
- 「子ども110番の家・車」への支援等
通学路における交通安全の確保の徹底について(周知)(通知)2023年6月
さらに、登下校の見守りをはじめとする児童生徒等を取り巻く学校安全上の課題に対して、学校と教職員がその全てを担うことは困難です。特に、平素からの学校と家庭・地域との連携・協働の推進が不可欠です。このため、例えば、地域学校安全委員会や学校警察連絡協議会等の設置・活用や、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)や地域学校協働活動などの学校と地域の連携・協働の仕組みを活用することにより、地域の関係者との情報共有や意見交換の日常的な実施や、地域ぐるみによる交通安全の取組の推進をお願いします。
放課後から夜間などにおける見回り、児童生徒が補導された時の対応
見回り、補導された時の対応
教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査
放課後から夜間等における見回り、児童生徒が補導された時の対応は、学校以外の主体(地方公共団体、教育委員会、保護者、地域人材等)が中心に対応している。
調査年度 | 2019年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|
都道府県 | 14.9% | 17.0% | 17.0% |
政令市 | 30.0% | 20.0% | 25.0% |
市区町村 | 18.3% | 24.3% | 26.0% |
自治体での取組例
生徒指導上の課題について未然防止、早期発見、課題発見後の対応において中心的な役割を担っている。地区ごとに教育委員会事務局や警察、児童相談所等と毎月1度集まって、気になる児童生徒の情報共有を図るなど外部機関との連携も積極的に図っている。
福岡県春日市立春日西中学校
小中学校、PTA、自治会、警察機関等で、生徒指導上の課題等について課題を共有し、その解決に向けた協働による支援を充実。PTAと地域住民による声掛けを徹底。神奈川県横浜市教育委員会
横浜市教育委員会では、「生徒指導専任教諭」と呼ばれる学級担任をせず、児童生徒の支援や指導を専任する教諭を配置。生徒指導上の課題について未然防止、早期発見、課題発見後の対応において中心的な役割を担っている。地区ごとに教育委員会事務局や警察、児童相談所等と毎月1度集まって、気になる児童生徒の情報共有を図るなど外部機関との連携も積極的に図っている。
関係通知等
児童生徒の自殺予防に係る取組について
長期休業明けの前後において、学校として、保護者、地域住民の参画や、関係機関等と連携の上、学校における児童生徒への見守り活動を強化すること。また、学校外における見守り活動については、教育委員会等において、学校、警察等関係機関、地域の連携を一層強化する体制を構築し、取組を実施すること。
その際、警察との連携においては、「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(2023年2月7日付け4文科初第2121号)において指定を求めている「学校・警察連絡員」が情報共有を図り、緊急を要する事案を含め緊密に連携して対応に当たること。特に、児童生徒が自殺を企図する可能性が高い場所については、これらの時期に見守り活動を集中的に実施することが有効であること。
児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)2023年7月
長期休業明けの前後において、学校として、保護者、地域住民の参画や、関係機関等と連携の上、学校における児童生徒への見守り活動を強化すること。また、学校外における見守り活動については、教育委員会等において、学校、警察等関係機関、地域の連携を一層強化する体制を構築し、取組を実施すること。その際、警察との連携においては、「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」(2023年2月7日付け4文科初第2121号)において指定を求めている「学校・警察連絡員」が情報共有を図り、緊急を要する事案を含め緊密に連携して対応に当たること。特に、児童生徒が自殺を企図する可能性が高い場所については、これらの時期に見守り活動を集中的に実施することが有効であること。
3. 学校徴収金の徴収・管理
教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査
学校徴収金(給食費を含む)の徴収・管理は、教職員が関与しない方法で徴収・管理又は地方公共団体や教育委員会で徴収・管理等を行っている。
調査年度 | 2019年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|
都道府県 | 23.4% | 40.4% | 51.1% |
政令市 | 10.0% | 30.0% | 40.0% |
市区町村 | 6.5% | 32.9% | 36.0% |
自治体での取組例
鳥取県鳥取市教育委員会
2017年度の夏から、学校給食費、指定補助教材費、日本スポーツ振興センター災害共済掛金の公会計化に向け、保護者説明会の実施や各種申込書の準備を進め、平成30年度より公会計化を実施している。市内同一システムの利用による事務処理の負担軽減や、教師が従来行っていた徴収・管理業務の削減をすることができた。また、公会計科目の未納への対応や、振替ができない家庭への連絡は、市教育委員会が電話連絡等を行い、学校の負担軽減を図っている。熊本県南関町教育委員会
学校徴収金の処理について、現金徴収から口座振替へ変更するとともに、複数校の事務を拠点の中学校(事務センター)に集まって一括処理することで、教師・事務職員の業務改善を実現している。各校の事務職員が連携して処理を行うことで、単独で行うよりもミスが起こりにくくなり、効率化されるとともに、教師にとって学校徴収金に関する業務が大幅に削減され、学校全体の業務負担の軽減につながっている。
関係通知等
学校給食費等の徴収に関する公会計化等の
特に、学校給食費については公会計化及び地方公共団体による徴収を基本とすべきとされた答申を受けて、この度、文部科学省においては、地方公共団体における学校給食費の公会計化を促進し、保護者からの学校給食費の徴収・管理業務を地方公共団体が自らの業務として行うことにより、公立学校における学校給食費の徴収・管理に係る教員の業務負担を軽減することなどを目的として、別添のとおり「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」を作成し、文部科学省の ホームページ ≫ においても公表しております。各地方公共団体におかれては、本ガイドラインを適宜参考として、学校給食費の公会計化の取組を一層推進いただきますようお願いします。
2021年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果等に係る留意事項について
また、学校徴収金を教職員が関与しない方法等で徴収・管理することをはじめ、各教育委員会の権限と責任において取組を進めることができるものについては、文部科学省が令和3年3月に公表した「全国の学校における働き方改革事例集」も活用しながら一層取組を進めること。
学校給食費等の徴収に関する公会計化等の推進について(通知)2019年7月
特に、学校給食費については公会計化及び地方公共団体による徴収を基本とすべきとされた答申を受けて、この度、文部科学省においては、地方公共団体における学校給食費の公会計化を促進し、保護者からの学校給食費の徴収・管理業務を地方公共団体が自らの業務として行うことにより、公立学校における学校給食費の徴収・管理に係る教員の業務負担を軽減することなどを目的として、別添のとおり「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」を作成し、文部科学省の ホームページ ≫ においても公表しております。各地方公共団体におかれては、本ガイドラインを適宜参考として、学校給食費の公会計化の取組を一層推進いただきますようお願いします。
2021年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果等に係る留意事項について(通知)2022年1月
また、学校徴収金を教職員が関与しない方法等で徴収・管理することをはじめ、各教育委員会の権限と責任において取組を進めることができるものについては、文部科学省が令和3年3月に公表した「全国の学校における働き方改革事例集」も活用しながら一層取組を進めること。
4. 地域ボランティアとの連絡調整
調査年度 | 2019年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|
都道府県 | 25.5% | 23.4% | 25.5% |
政令市 | 60.0% | 65.0% | 65.0% |
市区町村 | 31.4% | 39.2% | 44.9% |
自治体での取組例
島根県雲南市立木次中学校
中学校区で1つのコミュニティ・スクールと地域学校協働本部を立ち上げ、学校の働き方改革や教師との信頼関係構築には、学校と地域が日常的に関わることが必要という意見を受け、地域学校協働活動推進員が学校に常駐。地域との連絡調整を地域学校協働活動推進員が担うことで、授業づくりや生徒に向き合える時間が増え、教師の心理的な負担軽減になっている。東京都三鷹市三鷹中央学園
小中一貫の学校運営を行うために、コミュニティ・スクールを中心とした地域と協働した学校運営を実施。学校の役割が明確になり、それを踏まえて家庭や地域に対して、必要な支援を働きかけられるようになるとともに、熟議を通して地域の行事を見直すきっかけにもなった。
関係通知等
学校における働き方改革に関する取組の
保護者や地域住民、関係機関との学校経営方針をはじめとした情報共有を緊密に行い、適切な役割分担を図ること。地域・保護者、関係機関との連携に当たっては、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の活用や地域学校協働活動を推進するとともに、文部科学省からのメッセージを適宜活用されたいこと。
コミュニティ・スクールの在り方等に関する
学校運営協議会において育てたい子どもの姿や課題を共有した上で、学校業務の棚卸しや学校・家庭・地域の役割分担を進め、それらを踏まえた地域学校協働活動の充実などに取り組むことによって、学校における働き方改革を推進している。保護者や地域住民等との協議や熟議により、共通理解に基づく業務の見直しや教育活動の再整理が進み、教育活動の質の向上につながっており、教職員の意識改革や勤務時間の縮減等の成果が見られている。
地域学校協働活動推進員は、学校における働き方改革の観点からも、日常的に教職員や地域の関係者と連携・協働して常駐的な活動が行うことが効果的であるため、教育委員会はその配置を促進し、機能を強化することが必要である。
学校における働き方改革に関する取組の徹底について(通知)2019年3月
保護者や地域住民、関係機関との学校経営方針をはじめとした情報共有を緊密に行い、適切な役割分担を図ること。地域・保護者、関係機関との連携に当たっては、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の活用や地域学校協働活動を推進するとともに、文部科学省からのメッセージを適宜活用されたいこと。
コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議最終まとめ 2022年3月
学校運営協議会において育てたい子どもの姿や課題を共有した上で、学校業務の棚卸しや学校・家庭・地域の役割分担を進め、それらを踏まえた地域学校協働活動の充実などに取り組むことによって、学校における働き方改革を推進している。保護者や地域住民等との協議や熟議により、共通理解に基づく業務の見直しや教育活動の再整理が進み、教育活動の質の向上につながっており、教職員の意識改革や勤務時間の縮減等の成果が見られている。地域学校協働活動推進員は、学校における働き方改革の観点からも、日常的に教職員や地域の関係者と連携・協働して常駐的な活動が行うことが効果的であるため、教育委員会はその配置を促進し、機能を強化することが必要である。
学校の業務・教師の業務に関する負担軽減
学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
授業準備(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
- 教材の印刷等の補助的業務や理科の実験や観察準備等について、教師との連携の上で、サポートスタッフや理科の観察実験補助員の積極的な参画を促進する。
- 外国語について、新学習指導要領に対応した教材を開発し、希望する小学校に配布する。
学習評価や成績処理(補助的業務へのサポートスタッフの参画等)
- 補助的業務は、教師との連携の上で、サポートスタッフ等の積極的な参画を促進する。
- 指導要録の参考様式の簡素化も含め、効果的で過度な負担のない学習評価の在り方を示す。
学校行事の準備・運営(事務職員等との連携、一部外部委託等)
- 従来学校行事とされてきた活動のうち、教科等の指導と位置づけることが適切なものについては、積極的に当該教科等の授業時数に含めるよう促す。
- 学校行事の精選や内容の見直しの取組を推進するための具体的な取組例を提示する。
支援が必要な児童生徒・家庭への対応(専門スタッフとの連携・協力等)
- 専門スタッフに任せる業務を明確にするとともに、専門スタッフの方がより効果的な対応ができる業務については、教師と連携しながら、これらの人材の積極的な参画を促進する。
- 法的相談を受けるスクールロイヤー等の専門家の配置を進める。