「禁止」ではなく「判断力を育てる」ために
子どものSNSとどう向き合う?
SNSやスマホは、子どもにとって友人関係や学び、社会とのつながりを支える道具になっています。一方で、依存、誹謗中傷、性被害、課金、なりすまし、フェイク情報などのリスクもあり、子どもが被害者にも加害者にもなり得ます。
いま求められているのは、単に「使わせない」ことではありません。子どもが将来自立して情報社会を生き抜くための力を育てながら、今の安全も守る。そのために、家庭・学校・社会が役割を分担し、つながって取り組むことが大切です。
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世界の規制 … いま何が起きているか
子ども保護は「家庭任せ」から「社会の責任」へ
アメリカ … 若者のSNS依存をめぐる企業責任
若者のSNS依存やメンタルヘルスへの影響をめぐり、企業の安全配慮や設計上の責任を問う裁判・訴訟が続いています。論点になりやすいのは、次のような点です。
- 強いおすすめ機能、通知、無限スクロールなど「長時間利用を促す仕組み」
- 未成年に対する安全対策の不足
- 有害コンテンツや不適切な接触の防止策
- 依存や心理的影響の説明責任
イギリス・ドイツなど … 安全対策の義務化へ
欧州では、プラットフォームに対し「リスクの見積り」「子どもを守るための具体策」「違反時の対応」などを求める方向が広がっています。全面的に禁止するより、事業者側の設計・運用を変えさせる考え方が中心です。オーストラリア … 16歳未満のSNS利用を禁じる制度
オーストラリアでは、16歳未満のSNS利用を止める制度が導入され、議論を呼びました。導入後に注目されているのは、次のような点です。
- 年齢確認をどう実効的に行うか(プライバシーとのバランス)
- 代替手段や別サービスへの移動が起きる可能性
- 学びや表現の機会への影響
- 「禁止」だけでは解決しない領域(家庭・学校の教育の重要性)
規制が強まるほど、家庭では「禁止か放任か」の二択に揺れやすくなります。
だからこそ、次の章で扱う「育てる視点」が重要になります。
日本の現状 … 低年齢化とトラブルの入口
「うちだけの問題」ではなく、誰にでも起こり得る
スマホ・SNSの低年齢化
家庭でのスマホ所持は年々進み、高学年で所有率が大きく上がり、中学生では多数が所持する状況になっています。小学生でも低年齢化の傾向があります。持たせる理由は次のようなものが多く見られます。
- 連絡手段
- 防犯(居場所確認、緊急連絡)
- 友人関係の維持
リスクは「特別な子」だけの問題ではない
SNSトラブルは、極端な使い方をしている子だけに起きるものではありません。日常的なやり取りの中で、次のような問題が起こり得ます。- グループチャットでの行き違い、仲間外れ、言葉の暴力
- 誹謗中傷、炎上、拡散
- 写真・動画の共有から起きるトラブル(個人情報、肖像、位置情報)
- なりすまし、乗っ取り
- オンラインゲームの課金、課金誘導
- 知らない相手との接触、性被害
- ディープフェイクや生成AI画像の悪用
- フェイクニュース、誤情報の拡散
- 「デジタルタトゥー」(後から消しにくい痕跡)
「フィルタリングを外してしまう」現実
家庭でフィルタリングや制限を設定しても、子どもが詳しく、解除・回避してしまうケースもあります。また、保護者として年齢に応じた調整が面倒になる場合や、お子さまも成長に連れて管理されることを嫌がる場合もあります。ここで大切なのは、完璧に管理できていない家庭を責めることではありません。
どの家庭でも起こり得ることとして、改善を支える仕組みをつくることが必要です。
育成の視点 … 禁止より判断力を育てる
使わせないから、使いこなせるへ
当協議会では「禁止」ではなく「判断力の育成」という基本姿勢を推奨しています。「禁止」ではなく「判断力の育成」
子どもたちはデジタル社会の当事者です。使わせないのではなく、使いこなす力を育てることが重要です。育てたい力は次のようなものです。
- 危険を見抜く力(怪しい誘い、詐欺、過激コンテンツ)
- 投稿・共有の責任を理解する力(相手の尊厳、著作権、個人情報)
- トラブルを起こさない力、遭わない力
- 困った時に相談できる力(隠さない、早く助けを求める)
家庭・学校・社会の共同責任
学校だけでも、家庭だけでも守れません。制度・企業の安全設計、地域の支援も含めた取り組みが必要です。保護者は専門家ではありません。
家庭にも責任があるのは事実ですが、家庭だけに背負わせない仕組みが求められます。
子どもの声を尊重する
大人の管理だけではなく、子ども自身が考え、ルール作りに参加することが効果的です。ルールの「理由」が分かり、守る意味を自分の言葉で説明できるようになるほど、実効性が上がります。家庭の対策 … 設定・ルール・習慣の3本柱
まずは初期設定、次に話し合い、そして習慣化
家庭の対策は「設定」「ルール」「習慣」の3つを組み合わせると、現実的に続けやすくなります。① 最初にやること … 初期設定(設定)
スマホを渡す時点で、次を必ず確認します。- フィルタリング(携帯会社の青少年フィルタリング/OSの機能)
- ペアレンタルコントロール(利用時間、アプリ制限、購入制限)
- 位置情報の扱い(写真の位置情報、共有範囲)
- 深夜帯の運用(就寝時の置き場所、夜間の通知)
- アカウント作成時の年齢設定、公開範囲設定
② 家庭のルール(ルール)
ルールは「押し付け」より「合意」が大切です。 次の観点で、家庭の事情に合わせて決めます。ルールの観点
- 時間:平日・休日の上限、夜何時まで、学習時間中の扱い
- 場所:リビング中心、寝室に持ち込まない、食事中は置く
- アプリ:新規アプリは許可制、年齢制限のあるサービスは入れない
- 連絡:知らない人とやり取りしない、困ったら即相談
- 投稿:顔写真、学校名、住所、制服、位置情報を載せない
- 課金:課金上限、購入は保護者承認、決済情報は入れない
- 例外:緊急時の扱い、違反した時の対応
ルールを機能させるコツ
- ルールが「なぜ必要か」を先に説明する(怖がらせるより具体例で)
- ルールは少数から始める(守れる数にする)
- 1か月ごとなど、見直す日を決める(成長に合わせて調整する)
- 保護者も一緒に守る(大人が破ると説得力が落ちる)
③ これから重要になる:行動の習慣(習慣)
制限だけでは限界があります。これからは「習慣」で守る考え方がより重要です。家庭で育てたい習慣
- 投稿や送信の前に一呼吸おく(感情で送らない)
- 迷ったらスクショを残して相談する(証拠を消さない)
- 断る練習をする(しつこい誘い、画像要求、課金誘導)
- 失敗しても責めない(隠されるのが一番危険)
相談しやすい空気をつくる
トラブルの早期発見は「子どもから相談」が鍵になります。普段の雑談、親子の信頼関係が最大の予防策です。④ 「見守り」という第3の選択肢
家庭の向き合い方は「完全に遮断」か「放任」かの二択になりがちです。そこで、普段は自律性を尊重しつつ、危険の兆候だけを検知して知らせる「見守り型」のサービスや機能を選択肢として持つこともできます。
使う場合は、次を大切にします。
- 目的を共有する(監視ではなく安全のため)
- 何をどこまで見守るかを決める(範囲を明確にする)
- 年齢が上がったら段階的に手放す(自立に合わせる)
学校の教育 … ICT活用と情報モラルは教科横断で
学校で学ぶことを知ると、家庭の声かけが変わる
家庭のSNS利用は家庭主導になりやすい一方で、学校でもICT活用が進み、情報モラル教育はさまざまな場面で行われています。学校での学びを知ることは、家庭の声かけやルールづくりを助けます。1. 小学校のICT活用:学習目的が中心
小学校で使うのは、GIGAスクールの端末(Chromebookやタブレット等)が中心です。娯楽目的ではなく、学習活動の中で必要な場面に限って活用されます。- 学校管理下の端末が中心
- 利用ルールやフィルタリングが設定されている
- 情報モラル教育とセットで扱う
小学校でよくある活用例
- 調べ学習:社会・理科、地域学習、総合的な学習の時間
- 文章・資料作成:作文、レポート、プレゼン資料
- 協働学習:共同編集、意見共有、発表
- ドリル学習:漢字、計算、理解度に応じた個別学習
- 家庭学習:宿題配信、学習アプリ、感染症流行時のオンライン授業(限定的)
2. 情報モラル教育は「教科横断」で進む
学校ではSNSそのものの使い方だけを教えるのではなく、社会で必要になる力として次を扱います。- 判断力
- 責任
- 法的理解
- デジタルタトゥー(将来に残る影響)
小学校で扱われやすい場面
- 道徳科:思いやり、責任、誹謗中傷、いじめなどの文脈でネット事例を話し合う
- 総合的な学習の時間:情報の集め方、正しさの確かめ方、個人情報、フェイク情報
- 特別活動(学級活動):ネットいじめ、SNS依存、クラスでのルールづくり
- ICT活用の授業内指導:アカウント管理、写真・動画の扱い、共有範囲
中学校・高校で扱われやすい内容
- 中学校:技術・家庭科(情報の領域)で情報モラル、著作権、データの扱いなど
- 高校:情報科でより体系的に、情報社会の課題やデータ、アルゴリズム、セキュリティなど
扱うテーマ例(近年増えているもの)
- 炎上、誹謗中傷、名誉毀損
- なりすまし、乗っ取り
- 課金トラブル
- フェイクニュース
- 生成AI画像・ディープフェイクの悪用
- 刑事罰や法的責任につながる行為
3. 学校単独では限界があるから、外部連携も増えている
学校だけで最新の技術変化に追いつくのは簡単ではありません。そのため、次のような外部連携を活用する学校も増えています。
- PTA向け講演会
- 警察による出前授業
- 外部講師(専門家、IT企業など)
- 端末利用ルールの説明会
PTAの役割 … 家庭と学校をつなぐ橋渡し
ひとりで抱えないための「つなぎ役」
PTAは、学校任せにも家庭任せにもせず、家庭と学校をつなぐ「橋渡し役」になれます。この役割は、いま非常に重要で、PTAが担える支援例としては以下があります。
保護者向け啓発
- フィルタリングやペアレンタルコントロールの基本
- 年齢別の声かけ、家庭ルール例
- トラブル時の相談導線(学校・行政・警察・専門窓口)
ルールづくり支援
- 家庭ごとの「わが家のルール」作成を後押しするテンプレート配布
- 子ども参加型のルールづくりの紹介
学校との共通理解づくり
- 学校で扱っている内容を保護者に分かりやすく共有
- 家庭の悩みや実態を学校へ届ける(無理のない運用にする)
社会への働きかけ
- 分かりやすい安全設計、子どもに配慮した初期設定の要望
- 行政・地域との連携強化
子どもを守ることと、子どもの可能性を守ることは、どちらも大切です。
「禁止」だけでは、子どもが自分で判断しなければならない場面に対応できません。
家庭での設定とルール、そして日々の対話。学校の学びとの連携。PTAの橋渡し。
未成年のSNS利用規制
子どもとデジタル機器
インターネットとの向き合い方

















