県PTA協議会からの独立を経て、子どもたちにより寄り添う組織へと進化
横須賀市PTA協議会
横須賀市PTA協議会
子どもたちの未来を見据えた決断
任意加入制度から始まった議論
市P協では個人情報保護法の改正をきっかけに、2019年、「PTAは有料会員サービスではありません。加入非加入にかかわらずすべての子どもに平等な活動を」スローガンに掲げ、市内全PTAの「任意加入制度」を推進しました。保護者にとって参加の自由を尊重することは、義務感をなくし、組織の信頼を高める大きな一歩となりました。しかし、その道のりは簡単ではなく、当初は「任意加入推進」の記事が掲載された広報紙が学校で配布中止になるということもあったそうですが、校長会への丁寧な説明を重ね、協力を得ることができたことで、市内全校へ広げることができたそうです。
想定していたことではありましたが、やはり会費収入は減少に転じ、財政的な課題が表面化することになりました。保護者の負担を軽くする一方で、従来通りの県P日P会費を単位PTAからの会費からお願いするのは難しい」――どうすれば子どもたちのために組織を維持できるのか、議論が始まりました。ここから、「これからのPTAの在り方」を本格的に問い直すことになります。
あり方検討委員会の設置と葛藤
子どもたちの未来を守るために
2021年、市P協内に「将来のPTAあり方検討チーム」を立ち上げ、翌年には正式に「検討委員会」を設置しました。議論の中で浮かび上がったのが、「県Pとの関係をどうするか」という問題でした。
横須賀市は中核市であり、教育政策や予算は市独自で決められる事も多いため、県Pでの議論と実情にずれがありました。さらに、市P協の会費収入の約4割を県Pに納めている現状も重い負担となっていました。「つながりを断つことはしたくない。しかし、このままでは子どもたちに還元できる資源が減ってしまう」――迷いと葛藤の中で、議論は続けられました。目指すゴールを明確に描きながら数年かけて準備を進め、2023年3月、市P協はついに県Pからの退会を総会で決議しました。そこにあったのは「つながりを断つためではなく、横須賀の子どもたちの未来を守るため」という強い思いでした。
退会決議後も、県Pとは慎重に意見交換を進めました。一方的な退会は、市内外のPTAに混乱を招くことが懸念されたからです。横須賀市P は県P内で最大規模の市P協であり、単Pや他市P協への影響も大きく、「退会の連鎖」を引き起こす恐れがありました。
大切なのは丁寧な説明を重ね、理解を得ること。改革を成功するために、各方面への説明に力を注ぎました。その結果、段階的な議論と情報共有によって、大きな混乱なく移行が実現しました。
信頼を支えた「情報発信」
議論を支えたもう一つの柱が「情報発信」でした。市P協はホームページを単なる広報の場にとどめず、保護者と課題を共有しながら共に考えるための「対話の場」と位置づけています。実務的な疑問をデータベース化したり、各校の工夫を紹介するコラムを掲載したり。情報を一方的に発信するだけでなく、保護者の声を受け止めて次の改善につなげる仕組みを整えています。
ホームページには、全国の事例を紹介する「PTA活動のアイデア集」や、PTAにありがちな疑問を整理した「やりがちだけどやってはいけないこと」など、現場で役立つ情報が数多く掲載されています。さらに、PTA業務のアウトソーシングについても紹介されており、負担軽減に向けた実践的なヒントを得ることができます。わかりやすく整理されたホームページ ≫ は参考になる情報の宝庫であり、信頼される活動の土台となっています。
新しい体制と挑戦
横須賀市P協の歩みから見えるのは、負担軽減と子どもへの還元を両立させるための模索と実行です。退会は決して「楽な選択」ではなく、数年にわたる議論と準備を経てたどり着いた結論でした。
その過程で支えとなったのが、保護者との丁寧な情報共有です。充実したホームページを通じて、疑問に答え、声を受け止める姿勢は信頼を築くうえで欠かせませんでした。
横須賀市P協の取り組みは、いま改革を考える他地域のPTAにとって「実現可能なヒント」に満ちています。
PTAの皆様へのインタービューなどをもとに、参加したくなるPTAをつくる改革、脱強制・改革の実践的な情報として、1冊の本にまとめています。
これから改革をしていこうという皆様に、少しでも参考になれば幸いです。



