一般社団法人 全国PTA連絡協議会

誰のために何をする組織かが明確でなかった
一般社団法人 東京都PTA協議会

作成:2024/04/27  更新:2024/08/21
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事例紹介 … 一般社団法人 東京都PTA協議会

岡部様

お話しを聞いた方

岡部様 2020年度〜 会長(現任)

インタビュー日付

2024年5月6日

協議会ホームページ

東京都PTA協議会 ≫ 

誰のために何をする組織かが明確でなかった

2020年2月のコロナ禍を機に、組織や事業の改革をスタートした東京都PTA協議会。
改革を今も推し進める岡部さんにお話を伺いました。

東京都PTA協議会(以下「都P」)は、2001年頃より会員地区が徐々に減って来ていましたが、当時の執行部がそこに何らかの手を打つことはなく、前例踏襲を基本とした危機感のない組織運営がなされて来たそうです。

2015年度から都Pに関わる岡部さんは、そういった組織運営に疑問を感じ、価値観の合う仲間と改革に乗り出しました。

コロナ禍をきっかけに方針転換

それまでの都Pでは、保護者向けの講演会やバレーボール大会、広報紙コンクール、子ども向けのイベントなどを例年実施していましたが、それらはすべて「市区町村PTAや各校のPTAでもできる事」であり、かつコロナ禍では実施が難しいものでした。

コロナ禍の到来でまず考えた事は「一斉休校で学校に集まれないPTAのために何ができるのか」であり、「PTAに必要な情報の集約・発信・共有を通じて、PTAの支援をすべきだ」という結論にたどり着きました。

IT化の推進

情報発信のためにまず都Pは、「ptatokyoドメインメールアドレス」の提供を開始しました。都内約1,300校の学校名をつけたメールアドレスを作成し各校に付与。
希望するPTAは、校内外の連絡用や各種アカウントのIDとしてこのメールアドレスを無料で利用できます。

個人に紐づくアドレスではないため、会長や役員が代わっても永続的に利用できるというものです。
このメールアドレスを活用して、PTAのIT化が進んでくれれば良いという思いがありました。

メールアドレス
メールアドレス
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パンフレット
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メールアドレスの付与と並行して、協議会内ではオンライン会議ツール「Zoom」の活用を始めていました。
それまでは役員会や理事会、総会といった会議体はすべて事務所に集まってのリアル開催でしたが、コロナ禍以後は開催が難しくなっており、オンライン会議の導入を急ぐ必要があったためです。

そして、このZoom導入の知見を活かし、2020年6月に「全都PTAオンラインミーティング」を初開催しました。もともと3月に「全都PTA会長会」というリアル企画を予定していましたが、コロナ禍により企画実施が難しくなり「だったらオンラインでやってみようか」と開催にこぎつけました。

このオンラインミーティングは「都内のPTA役員がテーマごとのグループに分かれ、自校の事例を話し、他校の事例を聞くことにより情報交換を行う」会であり、現在も年間2回開催されています。

メールアドレス付与を始めとするIT支援に関しては、Wi-Fiルーターのレンタルプラン紹介、Zoomライセンスの利用に対する助成、OfficeやGoogleのグループウェアライセンスの無償提供、スマホのPTAプランなどがあり、多くのPTAに利用いただいています。

日本PTA全国協議会からの退会

活動目的を再定義し、PTA支援に注力すべき都Pとして、次にクリアすべきハードルは全国組織(日P)からの退会でした。
都Pは会員から会費をいただいて活動しており、会費収入のほぼ半分を日Pに収めているのに、日Pからは都Pの会員に還元できるものが得られないという事が、都Pで長年の課題となっていました。

退会にあたっては、まず「退会に向けた議論を開始すること」を2022年5月の理事会で決議し、3か月ほどかけてさまざまな観点からの協議を重ねつつ、総会・理事会での決議を経て退会を最終決定したそうです。
その後、日本PTAとの意見交換なども実施し、2023年3月に退会されています。

東京都PTA協議会

2023年1月より、都Pの事業対象は東京都内の公立小学校/公立小中一貫校の中学校/義務教育学校の各PTAとなったそうです。

それまでは公立小学校のPTAや連合会のみを会員としていましたが、新しく始めたPTA支援事業などについて、小中一貫校や義務教育学校の中学校PTAからも問合せを受ける事が増え、条件に合致する一部の中学校PTAは、希望すれば都Pのサービスを使う事ができるようになりました(通常の中学校PTAは対象外です)。

会員制度の廃止

つながれ

続いての都Pの改革は、2023年度からの会員制度廃止という思い切ったものでした。
2020年度以降、新しく創設した単位PTA会員制度に賛同するPTAも出始め、会員が属する地区数は増加しつつありました。
しかしながら、区市町村単位の連合会退会が続き、会員校数は減少する一方でした。

都Pは一般社団法人であるため、団体としての公益性の観点からは、東京都のすべての対象校にサービスを活用する権利を付与すべきでありますが、その一方で都Pに会費を納めている会員と、そうでない非会員への対応は区別すべきであり、そのダブルスタンダードを維持することが都Pの運営上、さまざまな点で難しくなって来ていました。

会員制度を廃止することは、都Pの既存会員にとっても非常に重要であるため、会員である連合会の幹部の方々とは、何度も協議を行いました。「金銭的や人的な負担がなくなるなら歓迎」という方も居れば「もらえる会費はもらっておけばいいのに」という方も。

さまざまな意見がある中で、決め手になったのは「東京都の協議会としてもっとみなさんに認知してもらうため、心理的・物理的なハードルがあるならそれを可能な限り下げたい」という会長の思いでした。

認知してもらうことの大切さ、難しさ

そうして会員制度の廃止に踏み切った都Pですが、例のない取り組みだけに、その周知には苦労されているそうです。それまでは会員の連合会や単位PTAだけに向き合っていれば良かったのですが、これからは東京都の全ての対象校・連合会と向き合う必要が出て来ました。

そこでまず考えたことは、各市区町村の連合会を訪問する事でした。
各自治体の教育委員会(PTA担当)に電話で連絡し、連合会の会議などで、都Pの説明に時間を取ってもらえないか交渉。
地区によっては「来てもらうかどうかは役員会で協議します」などと言われることも。
長年の協議会運営でいかに会員以外を見て来ていなかったかを痛感することになりました。

それでも根気強くアプローチを続けたところ、都内62の自治体のうち20数か所の連合会にはお邪魔することが叶い、「誰のために何をする組織なのか」を会長さんたちに直接お伝えすることができました。

各地域の連合会と定期的にコミュニケーションを取ることは、結果として都Pや事業のファンを増やすことにつながる重要な施策だと考えており、現在も継続中です。

東京都

また、会員制度の廃止に伴い会費収入がなくなることについて「活動資金はどうするのか」と様々な方から質問を受けるそうです。

都Pには「東京都小学校PTA協議会互助会」という保険事業を営む関係団体があり、都Pはそこから数十年来にわたり活動資金の支援を受けて来ました。

今後も互助会から経済的な支援を受けて活動することは可能ですが、互助会の運営は都P役員のOB・OGが担っており、考え方や価値観の点で相違があるため、互助会の支援は断り、都P独自の財源で組織運営をしていく方針への転換を決定しています。

改革を進めて

改革で難しかった点

  • 関係者の活動への関わり度合に差があり、特定のメンバーが引っ張らざるを得ない
  • 関わり度合の差は情報格差につながり、理事会などで賛否の意思表示ができない方がいる

改革で達成できたポイント

  • 誰のために何をする組織なのかが組織内で明確になったこと

残る改善点

  • 関係者の一部に当事者意識を持ってもらえていないところがある
  • 次代を担うメンバーをどうやって集めていくのか、決まったしくみがない
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