コンプライアンス 3.会費

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学校経費、PTA会費に関する側面

PTAでのコンプライアンス 3. 会費

コンプライアンス
 
PTAでのコンプライアンス(1〜4)掲載概要

PTA活動に関する政府の見解、法律定義でのPTA、任意団体、社会教育団体、PTA活動の公共性、学校施設利用など

任意団体、任意加入、熊本PTA裁判、活動の任意性、強制性の排除、公平性の担保、未加入者への対応、退会者の会費返還裁判、卒業記念品裁判など

学校経費の設置者負担、寄付・寄贈の対象、寄附採納手続き、学校徴収金、会費徴収、教員の会費返還請求裁判、学校徴収金としての会費集金など

PTA会費の適正な徴収と支出、会計口座、口座管理、会計担当者、PTA予算の健全性、繰越金、PTA会計に関する不正行為、不正行為への対策など

社会の変化に伴い、任意加入の周知・徹底、情報開示、事業のスマート化など、PTA活動の適正化に向けた対応は多岐に渡り、時間も情報も必要です。
PTAの存在及び活動に関する法律構成が曖昧な部分もありますが「PTAでのコンプライアンス(1〜4)」では、PTAでのコンプライアンスや、関係する法的な側面などからPTAのあり方や活動を考えています。

当協議会では、PTAが任意の団体して、保護者の意見を学校運営に反映し、学校の活動を支援する適切な活動を行えるよう「PTA活動の意義や運営を再確認すること」「再定義されたPTA活動をサポートすること」などの情報発信や各種サービスの提供を行っていきます。

学校経費とPTA会費

学校の経費は、学校設置者の負担

学校にかかる経費は、設置者が負担すべきものです。PTAからの支援には一定の要件があります。
  • 学校支援す活動経費については、予算額を含めてPTA会員の総意であること
  • 公費負担すべきとされている経費、各種会合、研究会等の分担金や会議費、教職員に対する餞別金、記念品代、その他謝礼などについては学校支援活動経費に含めないこと
学校教育法

第5条(学校の管理と費用負担)

学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する。
学校の設置者とは、市町村立の学校(公立学校)は地方公共団体、国立の学校は国、私立学校は学校法人です。
また、ここでいう法令に特別の定めについては、公立小中学校の教員の人件費は、都道府県が負担しています。
よくあるご相談 … PTA組織運営
PTA会員の総意とは

学校徴収金等取扱のガイドライン

学校徴収金等取扱(岡山県の事例)

学校徴収金等取扱のガイドラインについては、地方公共団体により、取扱規程、要綱、取扱マニュアルなどの整備状況が異なります。
以下は、岡山県教育委員会による「学校徴収金等取扱マニュアル(2021年3月改訂版)」からの引用です。

PTAの事業の企画は、規約及び活動方針に基づき事業内容が組織内で十分検討され、会員の総意により決定される。このことから、組織内活動経費については、組織として決定した内容を尊重することが必要である。

しかし、学校支援活動経費については、保護者負担の軽減の観点から、学校はPTAに対して、支援活動の内容を事前に協議することが必要である。

なお、学校運営費等に対するPTAからの支援は原則差し控え、やむを得ず支援を受ける場合は必要最小限にとどめ、前年度から継続して支援を受ける場合には、漫然と前例を踏襲することなく、支援を受けることが適切であるか否か、学校とPTA間で定期的に検討することが必要である。

PTAとの協議に当たって、学校が留意すべき事項は次のとおりである。

  1. 校長は、学校支援活動の目的・支援内容等をPTAから詳細に説明を求めること
  2. 提案された学校支援活動については、予算額を含めてPTA会員の総意であることを確認すること
  3. 校長は、PTAから提案された支援を受けるかどうかについて、学校内で十分検討すること
  4. PTA等から支援を受けることが可能な経費は、県が負担する経費(配分予算)で行う標準的な水準を上回る、より良い教育環境を望むPTA等の考えに基づき、学校教育の充実・発展のため、PTA等の同意のもとに善意・自発的な要望により提供される経費(学校設備や備品等の充実のための経費)とする
  5. 学校支援活動経費として、次のようなもの支援を受けないこと
    • 学校徴収金等取扱マニュアルにおいて、公費負担すべきとされている経費(公費負担とすべき経費が不足する場合は、速やかに財務課に相談すること)
    • 各種団体(高P連・高教研等)、各種会合、研究会等の分担金や会議費
    • 教職員に対する餞別金、記念品代、その他謝礼など
  6. 継続して支援を受けている事業についても、前年度の活動から目的達成の評価を行い、事業内容を再点検するとともに、より効果的な方策がないか見直しを行うこと

学校への寄付・寄贈

割り当て寄付や住民負担転嫁の禁止

地方財政法

第4条の5(割当的寄附金等の禁止)

第四条の五 国(国の地方行政機関及び裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第二条に規定 する下級裁判所を含む。)は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共 団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。

第27条の4第1項(市町村が住民にその負担を転嫁してはならない経費)

市町村は、法令の規定に基づき当該市町村の負担に属するものとされている経費で政令で定めるものについて、住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、その負担を転嫁してはならない。
地方財政法では、学校設置者が負担すべき経費の住民への転嫁禁止が定められています。
法からは「公立学校は住民に対し強制的に寄付金を徴収してはならない」という点も明白です。
一方で、純粋な寄付行為には問題はありません。

PTA協力費や学校支援活動経費(埼玉県草加市の事例)

以下は、草加市による「草加市立小中学校におけるPTA協力費取扱いガイドライン(2013年10月21日)」からの引用です。未整備の自治体もありますが、お住まいの自治体のサイトで確認してみましょう。

第2条(留意事項)

学校がPTA協力費による支援を受ける場合にあっては、次のいずれにも該当しなければならない。
  (1)
PTA自らの発意に基づくものであること。
  (2)
PTA会員の総意に基づくものであること。
  1. 前項の支援に関し、校長は保護者負担の軽減を図る見地からPTAと協議を行うものとする。
  2. 校長は、PTA協力費についてPTAから委任を受けて会計処理を行うに際しては、当該PTAにおいて規約がある場合を除き、公費に準じた取扱いにより適正に会計処理に当たるものとする。

第3条(公費負担)

学校の建設、管理運営及び教育活動に要する経費で、次に掲げるものは公費負担とする。この場合において、学校共通の教育水準維持に必要な経費に、PTA協力費を充ててはならない。
  (1)
学校施設建設に要する経費
  (2)
学校設備及び備品の整備に要する経費
  (3)
学校施設、設備及び備品の修繕並びに保守管理に要する経費
  (4)
教職員の給料・手当、非常勤職員の報酬及び臨時職員の賃金並びに学校の管理運営及び教育活動に要するこれらの者の旅費
  (5)
学習指導要領等に基づき学校共通の教育を行うため必要な経費
  (6)
教務及び学校維持管理運営に必要な消耗品費、印刷製本費、光熱水費等

第5条(報告)

校長は、PTA協力費による支援について毎年度、その状況をPTAに報告するものとする。

PTA予算での学校への寄付・寄贈

PTA予算での学校への寄付・寄贈での論点になるのは、PTAによる寄付行為が、任意加入の条件のもとPTA会員の総意による自主的なものかどうかという点です。

任意加入の会員から徴収された会費

PTAへの入会にあたり任意加入の説明、入会意思の確認が行われ入会した会員から、徴収された会費であることが前提となります。

意思確認なしで入学と同時に加入、半強制的な状況下での加入によって徴収された会費の場合は、対象外です。
寄付・寄贈行為は本人の自発的な意思に基づいて行われるものであり、会員資格の問題クリアが必要です。

PTA予算への明記

寄付・寄贈を行う場合には、あらかじめ予算書に明記して総会での承認を得ることが必要です。
年度の予算が余ったから、何かを買ってしまうといった不明瞭な対応は避けるべきです。

寄付・寄贈には、寄附採納の手続きが必要

PTAから備品を寄付・寄贈する場合は、自治体が定める手続きが必要です。
具体的には、自治体に寄付・寄贈という意思を示し、自治体がこれを受諾することにより成立する契約を、学校にお願いし「寄附採納」の処理をしてもらうことが必要です。

寄附採納の手続きをしていない場合、PTA所有物の扱いになるため、将来の買い換えや修理、廃棄などはPTAの責任において行うことになります。

特に、PTAによる寄付・寄贈の備品などで事故が起こった場合は、PTAが管理責任などを問われるケースもあるため注意が必要です。

寄附採納取扱(茨城県結城市の事例)

以下は、結城市による「結城市寄附採納事務取扱規程(2013年4月30日)」からの引用です。
未整備の自治体もありますが、お住まいの自治体のサイトで確認してみましょう。

第3条(寄附採納の取扱い)

寄附採納に関する事務の取扱いについては、次に掲げる事項を調査し、行政運営に支障をきたさないよう努めなければならない。
  (1)
法令に違反しないこと。
  (2)
公序良俗に反しないこと。
  (3)
行政の中立性、公平性等が確保できること。
  (4)
政治的な団体又は個人からの寄附でないこと。
  (5)
社会問題を起こしている法人又は個人でないこと。
  (6)
寄附物件を設置するための条件整備が必要なものについては、その場所等が確保できること。
  (7)
係争の原因となるおそれがないこと。
  (8)
維持管理経費等著しい市の財政的な負担とならないこと。
  (9)
寄附物件が、市において管理することが不適当なものではないこと。

会費での消耗品購入の事例

学校保健安全法

第3条(国・地方団体の責務)

国及び地方公共団体は、相互に連携を図り、各学校において保健および安全に係る取り組みが確実かつ効果的に実施されるようにするため、学校における保健及び安全に関する最新の知見及び事例を踏まえつつ、財政上の措置その他の必要な施策を講じるものとする。

第4条(学校保健に関する学校の設置者の責務)

学校の設置者は、その設置する学校の児童生徒等及び職員の心身の健康の保持増進を図るため、当該学校の施設及び設備並びに管理運営体制の整備充実その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
学校保健安全法では、学校の設置者は、児童生徒等および職員の心身の健康のために、必要な設備の設置に努めるとあり、地方公共団体は、学校が確実かつ効果的に実施されるよう、財政上の措置その他の必要な施策を講じる者とするとしています。

PTAで消耗品を購入

コロナ禍においては、消毒液やウェットティッシュなどの衛生用品をPTAで購入するケースもあったかと思います。

保護者はもちろん、児童生徒等および職員の心身の健康のための活動であり、消耗品である消毒液やウェットティッシュなどの衛生用品をPTAで購入し、学校と共同で使用するなど、厳密に使用者が区別できない場合は、合理的な対応が必要でしょう。

一方で、日常的に学校運営に必要なもので、PTA活動においても利用する物品(事務用品、手洗い用石鹸、動植物の維持費用など)についてなど、寄付・寄贈状態が継続する場合には、公費・会費のどちらを充てるか学校側との十分な協議が必要です。

学校徴収金

学校徴収金(学校預り金)

学校徴収金とは

学校徴収金とは、保護者が学校に納入する費用、学校の指定により購入する物 品の費用、旅行業者へ支払う修学旅行費用、希望者が受験する模擬試験等の受験料など、保護者 が負担する学校教育活動の費用のことです。

言い換えれば、教育活動において必要となる経費の内で、保護者が学校教育の充実・発展を願い、受益者負担の考えに基づいて負担している経費で、公費ではなく、学校の預り金です。

その管理と取扱いは、教育活動の充実・発展という所期の目的を達成するために、包括的に学校長に信託されているものであり、各学校はこの負託に応じるために最大限の努力を行う責務があると考えます。

地方自治法

第210条(総計予算主義の原則)

一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない。

第235条の4(現金及び有価証券の保管)

  1. 普通地方公共団体の歳入歳出に属する現金(以下「歳計現金」という。)は、政令の定めるところにより、最も確実かつ有利な方法によりこれを保管しなければならない。
  2. 債権の担保として徴するもののほか、普通地方公共団体の所有に属しない現金又は有価証券は、法律又は政令の規定によるのでなければ、これを保管することができない。
  3. 法令又は契約に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体が保管する前項の現金(以下「歳入歳出外現金」という。)には、利子を付さない。

学校徴収金なのひとつである給食費については、学校給食法があり、公会計化も進んでいますが、学校で行われる集金の多くは、第210条にある歳入歳出予算としては処理されていません。

第235条の4では、地方公共団体の所有に属さない現金の保管は、法律または政令の規定によるものでなければ禁止となっています。

公会計

公会計と私費会計

学校で保護者から集金した学校徴収金が、地方公共団体の歳入歳出予算に編入されないということは、学校の集金事務の法的効果を地方公共団体に帰属させないということであり、法的には、地方自治法の対象外となる私費会計と考えられます。
公会計 私費会計
管理規定 各自治体の財務規則等教育委員会または学校判断
徴収方法 口座振替等、児童手当から振替 学校指定口座から振替、現金徴収
徴収者 自治体(一部は学校)学校
監査実施者 監査委員会、議会教職員、PTA
情報公開 自治体サイト、広報資料学校配布物

私費会計の費目

PTA会費を学校徴収金として集金している場合、PTA会費は、管理受託経費の区分となります。
学校給食費については、私費会計としての学校徴収金から公会計化への取り組みが進んでいます。
学校徴収金 学校指定物品
個人負担経費 管理受託経費
学校給食費
修学旅行費等
教材/テスト費
学年費/学級費
部活動費
共済掛金等
PTA会費
同窓会費
生徒会費
後援会活動費
制服
体操服
カバン等
補助教材等
※日本スポーツ振興センター災害共済掛金(460円)など

学校徴収金の取扱い

学校徴収金の取扱い

学校徴収金は、私費会計として包括的に学校長に信託されているものであり、監査を行う立場の教職員やPTA、学校配布物などによる情報公開などが適切に行われる必要があります。

教員の負担軽減の観点からも、文部科学省が、給食費だけでなく他の学校徴収金についても公会計化に向けた取組を進めるべきですが、まず、会計上の手続きについて、各地方公共団体において、関係規程等を整備し、適切に行うことが必要だと考えます。

学校徴収金事務取扱(事例)

地方公共団体により、取扱規程、要綱、取扱マニュアルなどの整備状況が異なります。
以下は、2023年1月11日にインターネット上で確認できた情報の一部です。
条例・規則・規程・要綱・指針 の違い

法令の階層構造

憲法―法律―政令―省令―告示等 … 国が定める法令
        ―条例―規則等 … 地方公共団体が定める法令
法令には、相互に矛盾することなく、法秩序を保持するため、上下の関係があり、その効力に差があります。
最高法規は憲法であり、立法府である国会が制定する法律は憲法に反することはできません。
また、同様に法律の規定に違反するような政令、省令、条例、規則等を制定することもできません。

条例

  • 地方公共団体が議会の議決で制定
  • 内容は、地方公共団体の事務や、法令から委任された事務
  • 住民の権利義務については、原則として条例
  • 刑罰は、条例でのみ定めることが可能
  • 条例の効力は、その地方公共団体の区域内のみ

規則

  • 地方公共団体の長が決裁(教育委員会や選挙管理委員会などが定める規則もあり)
  • 市地方公共団体の長に属する事務について制定
  • 規則単独で制定以外にも、法律や条例の実施手続きなどについても制定

規程

  • 一定の目的のために定められた一連の条項の総体をいい、一般には法律・命令・条例・規則等の発令形式以外のものの名称
  • 組織上の細目や事務処理手続き、その他事務処理上必要な事項を定める場合が一般的
  • 法律、条例、規則などの範囲内で定められており、法規的な傾向や特色は原則としなし

要綱

  • 業務を処理するうえで統一的な処理を行うための内規
  • 要綱と要領は、行政機関の内部規律であり実質的な差異はなし
  • 法律や政令、条例や規則とは異なり、法的な効力はなし

指針

  • ガイドラインとか基準とかを意味する言葉
  • 法律や政令、条例や規則とは異なり、法的な効力はなし

学校徴収金とPTA会費

会費を学校徴収金として集金

学校がPTA会費を集金

学校への業務委託

PTA会費徴収や預貯金通帳の保管など、PTAに関する業務の一部を学校に委任している場合には、業務委託契約(準委任契約)を作成するなど、PTAから学校へ委任内容を明確にしておく事が重要です。

PTAが取得した個人情報(会員情報)を学校(第三者)に提供しない限り、学校によるPTA会費徴収は不可能です。
学校への個人情報の提供は、個人情報保護法における第三者提供の例外規定となる業務委託であることを明確にしておくこと必要です。

業務委託契約にあたっては、PTA総会などで保護者の合意を必ず得るようにしましょう。

PTA入会関連書類 テンプレート
PTA業務の一部を学校に委任している場合

団体しての要件

PTA規約などで、PTA団体が権利能力なき社団として要件を満たしていることが前提です。
また。PTAが外部(学校)と契約を締結する場合は、自然人であるPTA会長が「PTA会長」という肩書き付きで契約当事者になります。
PTAの法的側面
PTAは権利能力なき社団
PTAの法的側面
契約当事者としてのPTA

個人情報の取り扱い

業務委託に際しては、PTAが取得した個人情報を学校へ提供することについて、保護者の確認を取っておきましょう。具体的には、「入会申込書」に個人情報の利用目的(PTA会費徴収)と学校に業務委託する旨を記載しておく対応が必要です。

学校への業務委託

PTAの「入会申込書」に「PTA会費の引き落としを学校に委託することに同意する」などの項目を設けて、保護者の確認を取っておきましょう。

仮に事前の説明なく、学校徴収金と一緒にPTA会費を徴収した場合、PTAが強制加入であるかのような誤解を招きかねません。 こうした誤解を避けるためにも、「入会申込書」には、PTA加入意向とともに、学校への業務委託についても同意を取るようにしましょう。

業務委託契約(準委任契約)とは 委託者が発注者の業務を第三者である受託者に実施してもらう場合、業務委託契約を締結します。民法上の委任・準委任・請負のいずれかを問わず、広く「業務委託契約」という名称が使用されることが多いですが、同じ「業務委託契約」という名称であっても、その実態が、委任・準委任であるか請負であるかによって、受託者(ここでは学校)の負う義務の性質が変わります。

委任契約とは

委任契約は、 当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生じる契約です(民法643条、旧民法643条)。

委任契約と準委任契約の違い

委任契約と準委任契約との違いは、 委任契約は、法律行為を委託する契約であるのに対し、準委任契約は、事実行為(事務処理)の委託をする契約です。
法律行為の例としては、契約を締結するための意思表示における代理人契約等があげられえます。
一方の事実行為は、理論上は無限に想定しえます。たとえば、セミナーでの講演、広告宣伝業務、調査業務などです。これらを事実行為(事務処理)委託する契約は、準委任契約と整理されます。
実際の取引においては、委任契約よりも、準委任契約の方が、広く用いられている契約形態であると考えられます。

委任契約と請負契約の違い

請負契約は、当事者の一方がある仕事を完成させることを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことによってその効力を生じる契約です
委任契約(準委任契約)との最大の違いは、 請負契約は、仕事の完成が、契約内容となっている点です。
たとえば、セミナー講師を受託し、セミナーのアンケートによる評価が悪くても契約違反になりません。

よくある誤解として、「委託者は、請負にした方が有利であり、受託者は準委任にした方が有利であるため、可能な限り、このように交渉するべき」というものがありますが、あくまでも、請負に該当するのは仕事の完成を約するもの、準委任に該当するのは善管注意義務をもって事務処理を約するものです。

PTA会費徴収に関しては、以下のような性質があり、準委任契約に親和的と考えられます。

  • 達成するべき結果を明確にすることが難しい。
  • 達成するべき結果は、受託者が適切な業務提供をしても達成できないことがあり得る。

学校が保護者の名簿をPTAに提供

都道府県や市区町村の「個人情報保護に関する条例」では、教育委員会(学校)は、保有する個人情報を利用目的以外のために第三者に提供してはならないと規定されている場合が一般的です。

公立学校の実施機関である各自治体の「個人情報保護に関する条例」を確認してください。
こうした条例がある場合、本人の同意を得ずに、学校からPTAに対して児童・生徒や保護者名簿(個人情報)を 提供することは、条例違反となる可能性があります。

学校側から保護者に対して、学校の保有する個人情報をPTAに提供することについて同意を得るなどの対応が重要です。具体的には「学校における個人情報の取扱いならびに使用の同意について」などのの同意書に「学校の保有する個人情報をPTAに提供します」の項目を記載しておく対応です。

学校給食費の公会計化

学校給食費の公会計化とは

公会計化

学校給食費の公会計化とは、学校徴収金として学校が徴収していた学校給食費を、地方公共団体の会計に組み入れる「公会計制度」を採用することです。

文部科学省では、教員の業務負担の軽減等に向け、学校給食費の公会計化を促進すると共に、保護者からの学校給食費の徴収・管理業務を地方公共団体が自らの業務として行うことを、「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」を作成(2019年7月)するなどして、促進していています。

保護者が指定した口座から学校ではなく、自治体が引き落とすこととなるため、引き落とせなかった場合でも児童生徒が学校へ現金を持参したり、教職員が徴収に回ったりすることはなくなります。

公会計化導入後のPTA会費集金

給食費の集金については、A〜Cいずれも徴収・督促共に学校から自治体に移行
区分 Type A Type B Type C
費目 教材費等 PTA会費 教材費等 PTA会費 教材費等 PTA会費
徴収・督促 学校 学校PTA 自治体
※自治体により細かな対応が異なるため簡易的な区分です。

学校給食費の公会計化に伴い、PTA会費を学校給食費と併せて自治体が一括徴収(Type C)する、静岡県富士市、大阪府吹田市など例もありますが、PTA会費は引き続き学校で収納管理(Type A)が、多いようです。

本来、学校とは別団体であるPTAは、PTA会費は独自で集金し管理(Type B)するのが理想的です。

PTA会費

会費徴収

本来、PTAは、任意団体であり、その入退会は会員の意志で決められるべきものです。
一方、少なからずのPTAで、入学と同時に自動的に加入、全員加入を前提とした運営がされてきました。

時代は変わり、PTAは入退会自由の団体ということが広く認知されるようになり、PTA団体には、任意加入の説明と加入意思の確認が求められています。

PTA会費徴収も、任意加入の説明と加入意思の確認の上で行われる必要があります。

消費者契約法

第2条(定義)※一部抜粋

この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
  1. この法律(第四十三条第二項第二号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
  2. この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。

第4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)※一部抜粋

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる
重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認

消費者庁「消費者契約法」逐条解説の第2条では、「その他の団体」としてPTAが例示されており、PTAは契約の主体として、消費者契約法を遵守しなければいけない立場と考えます。

第4条については、以下が記されています。
消費者が事業者の不適切な勧誘行為に影響されて自らの欲求の実現に適合しない契約を締結した場合には、民法の詐欺(同法第 96 条第1項)が成立しない場合でも、契約の成立についての合意の瑕疵によって消費者が当該契約に拘束されることは衡平を欠くものであるため、消費者は当該契約の効力の否定を主張し得るとすることが適当である。

つまり、消費者契約法では、事業者(PTA)が消費者(保護者)に必要な情報を十分に説明せずに行った契約や、消費者が契約せざるを得ない状況下における契約は不当であり、取り消しできるとしています。

教諭によるPTA会費返還請求裁判

裁判所

2023年7月、鹿児島県立高校の教諭が、鹿児島簡裁にPTA会費返還求める少額訴訟を起こしています。
提訴の内容は、同意がないままPTA会費を給与から天引きされたとして、校長と元PTA会長を相手取り、6年分の会費計1万6560円の返還を求めるものです。

訴状によると、PTA会費は月230円。教諭が2023年5月、校長と当時のPTA会長に返還を求めたところ、引き去り停止には応じたが、2017~2022年度分の返還は拒否されたとなっています。

PTAは答弁書で、教諭が2017年度に着任してから6年余りの間、会費が明記された給与明細書を受け取りながらも異議を唱えていなかったと主張し「PTA会員であることを少なくとも黙示的には承認していた」と反論しています。
11月20日付の南日本新聞では、以下の様に報じています。。

PTA入会や会費を巡り、教員が提訴するケースは珍しく、学校関係者に波紋が広がる。

これに対しPTAと校長は答弁書や準備書面で、教諭が6年余りの間、会費が明記された給与明細書を毎月受け取りながらも異議を唱えていなかったと反論。
「会員であることを少なくとも黙示的には承認していた」としている。

「これまで払わないといけないものだと思い込んできた」と男性教諭は振り返る。だが、長男の小学校入学を機にPTAへ疑問を抱くようになったという。
「PTAに入るのが当たり前という現状に一石を投じたい」と、裁判を起こした意図に理解を求める。

この訴訟において、PTAの任意加入に関して教員と保護者との間に立場の違いがあると考えます。
  • 保護者の視点では、PTAは任意の団体であり、入退会は任意です。
  • 一方で、教員は会費の任意性が不十分であると考えており、訴訟を起こしました。
  • 校長は、PTA会則に基づいて会費を徴収したと主張しています。

PTA会則には、保護者、教員の会員資格があるとの表記はありますが、入学や赴任と同時に自動的加入や強制加入であるとの表記はないのが一般的です。

仮に、会員からの会費は強制徴収すると会則に書かれている場合でも、任意加入の団体なので、会則を自動加入や強制加入に変えない限り、会費の強制徴収は難しいと考えます。

今後の裁判で、返金することで判決が確定した場合は、保護者だけでなく教員に対しても、PTA任意加入の説明、同意書の取得が必須であるという流れがより進むと思われます。

PTA
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