SNSは厳格な管理へ、2025年は歴史的な転換点

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SNS利用は「自由な広場」から、道路や電気のような「公共インフラ」としての規制へ

SNSは厳格な管理へ、2025年は歴史的な転換点

全国PTA連絡協議会
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SNS規制をめぐる動き

オーストラリアでは、2025年12月から世界で初めて16歳未満のSNS利用を全面的に禁止する法律を施行されています。違反したプラットフォーム企業には最大約50億円の罰金が科されます。
アメリカでもフロリダ州などで14歳未満のアカウント取得を禁止する州法が成立したほか、連邦レベルでも児童の性的搾取や依存症対策として規制の議論が進んでいます。
欧州でも、フランスなどで年齢制限の導入が進んでおり、青少年を有害コンテンツから守る動きが広がっています。

日本では「16歳未満のSNS利用禁止」のような、年齢による一律の法的規制は、ありません。
「賢く使わせる(リテラシー教育)」という姿勢が主流であり、自治体レベルで利用時間の目安を示す条例はあっても、罰則を伴う強制的な禁止には至っていません。

闇バイトや性被害、いじめの温床となっている実態を受け、専門家の間では規制の必要性について議論が続いています。2025年現在、日本におけるSNS規制は、誹謗中傷対策の強化とプラットフォーム事業者の責任明確化を軸とした新しい法整備(4月から施行された情プラ法)が行われています。

規制が進む主な理由

SNS規制が「自主規制」から「法的強制」へとシフトした経緯には、従来の対策では防ぎきれない深刻な社会問題(若年層の健康被害や組織犯罪など)の顕在化があり、規制が進む主な理由としては、以下が考えられます。

一方で、規制のあり方については「表現の自由」や「知る権利」を制限する懸念があるとして、国内外でその正当性や実効性について議論が続いています。

青少年の心身保護 …SNS依存、いじめ、摂食障害、性的搾取などのリスクから子供を守るため
社会秩序の維持 …偽情報による選挙への影響や、SNSを起点とした組織犯罪の防止
被害者救済の迅速化 …誹謗中傷を受けた際の投稿削除や発信者情報の開示をスムーズにするため

なぜ「自主規制」では不十分だったのか

かつてのSNS運営は、各企業が独自に定めるガイドラインに基づいた自主規制(セルフ・レギュレーション)が中心でした。現在でも、プラットフォーム各社(Google、YouTubeなど)は、オンラインギャンブルや不適切な広告に対する独自規制を2025年に入ってから順次強化しています。
一方で、以下の問題が深刻化し、何らかの形での国家による介入が不可欠な状況になりつつあります。

アルゴリズムの弊害

利用時間を延ばすために刺激的な情報を推奨する仕組みが、若年層の依存やメンタルヘルスの悪化を招いています。
過去には、テレビの見過ぎなども問題になりましたが、テレビにはユーザーに応じた対応がなく、ネットのアルゴリズムの問題は、依存を招きやすいなど深刻であると指摘されています。

犯罪のプラットフォーム化

日本ではここ数年、SNSを介した「闇バイト」による強盗・特殊詐欺の急増が社会問題となっています。
実行役だけでなく、首謀者の一部も逮捕されるなど事件の構造が明らかになりつつあり、SNS利用に関する法規制強化の必要性が議論されまています。

偽情報の拡散力

選挙における偽情報(フェイクニュース)などは、自主規制では情報の拡散スピードに追いつけず、拡散が選挙結果に影響を与える懸念から、法規制のあり方について国会で議論が進められています。
古くは、2019年暮れからのCOVID-19における公衆衛生への実害も指摘されています。
利用者も注意すべき点 SNS利用時の不適切な投稿(誹謗中傷、なりすまし、著作権・肖像権の侵害)は、運営によるアカウント停止だけでなく、侮辱罪(2022年に法定刑引き上げ)や名誉毀損による法的責任を問われるリスクが高まっています。

情報流通プラットフォーム対処法

情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)は、従来のプロバイダ責任制限法を改正・発展させた法律として、2025年4月1日に施行されました。
この法律により、SNSでの誹謗中傷被害者が「どこに申請すればよいか分からない」「申請しても放置される」といった状況の改善が期待されています。

主なポイントは以下の通りです。

削除対応の迅速化 …「7日ルール」の導入

削除対応の迅速化

大規模SNS事業者(X、YouTube、Instagram等)に対し、誹謗中傷などの削除申請を受けた場合、原則として7日以内に対応の可否を判断・通知することが義務付けられました。

これにより、事業者は削除基準を策定・公表し、専門の窓口を整備するなどの透明性の向上が必要となりました。
運用は2025年夏頃から本格化しており、報告義務を怠った事業者には是正命令などの罰則が適用される可能性があります。

対象となる事業者

利用者が多く、社会的な影響力が大規模プラットフォーム事業者が指定されることとなり、月間アクティブユーザー数が概ね1,000万人以上のサービスなどが対象となっています。

総務省による2025年の事業者指定状況は、Google、LINEヤフー、Meta(Facebook/Instagram)、TikTok、X(旧Twitter)の5社に加え、ドワンゴやサイバーエージェント、Pinterestなども、順次指定される予定です。

透明性の向上と体制整備

削除基準の公表と運用状況の報告
事業者は、どのような投稿が削除対象になるのか、具体的な基準をあらかじめ策定し、公表する義務があります。
年に1回、削除申請の件数や実際の対応状況をまとめたレポートを公表しなければなりません。
この仕組みにより、利用者は、事業者がどのように投稿を管理しているかを把握することが可能です。
体制整備
削除申請をスムーズに受け付けるための専用窓口や手続きを整備する必要があります。また、適切な判断を行うため、十分な知識と経験を持つ「侵害情報調査専門員」を選任することが義務付けられました。

実効性を高めるための罰則

これまでの法律にはなかった、事業者に対する直接的な法的措置が導入され、総務大臣は、義務を果たしていない事業者に対して改善を勧告・命令できます。命令に従わない場合、最大で1億円の罰金が科される可能性があります。

偽情報抑制のガイドライン

総務省が2025年3月3日に公表した「インターネット広告の新指針案(正式名称:デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス案)」は、企業が意図せず偽情報や悪質サイトに広告費を流し、その活動を支えてしまうこと(広告収益の遮断)を防ぐためのものです。

経営層の関与と責任の明確化

これまで現場任せになりがちだったネット広告の配信管理について、企業の経営陣が積極的に関与し、責任を持つことを求めています。
具体的には、リスク認識の観点から、自社の広告が悪質サイトに掲載されることで、ブランド価値が毀損されるリスクを経営課題として認識することを促しています。また、対策に必要な予算や人員を適切に確保することを推奨しています。

広告配信の排除対象となるカテゴリー

指針案では、広告主が配信を避けるべき「不適切なサイト・コンテンツ」として以下の8つのカテゴリーを具体的に定義しています。
  1. 犯罪を助長するもの
  2. わいせつ・違法な性表現
  3. 死・暴力に関するもの
  4. 詐欺(なりすまし型「偽広告」など)
  5. 差別・人権侵害
  6. 商標権・著作権侵害(海賊版サイトなど)
  7. 違法薬物
  8. その他、社会通念上不適切なもの
出所:総務省(2025年3月)デジタル広告の流通を巡る諸課題への対応に関するモニタリング指針(案)  ≫、 総務省(2025年9月)デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会中間取りまとめ  ≫

国内におけるスマホの利用制限

SNS利用の規制ではありませんが、2025年現在、日本国内におけるスマートフォン利用を制限する地方条例があります。

いずれの条例にも罰則はなく、条例の主な目的は、行政側が目安を示すことで、市民に自制を促したり、家庭内でのルール作りをサポートしたりすることです。

背景には、スマホ依存による睡眠不足や生活リズムの乱れ、学力低下、あるいは歩きスマホによる事故や特殊詐欺などの社会問題があり、その対策として条例が導入されています。

全市民を対象とした利用制限(愛知県豊明市)

2025年10月1日に施行された「豊明市スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例」は、全国で初めて大人を含む「全市民」に対して利用時間の目安を示したことで注目されています。

利用時間の目安として、仕事や勉強、家事などを除く自由時間のスマホ使用を1日2時間以内にすることを推奨しています。
夜間の使用制限としては、小学生以下は午後9時、中学生以上は午後10時以降の使用を控えるよう求めています。

豊明市の住民アンケート

2025年10月に愛知県豊明市が実施した住民アンケート(条例施行後の調査)では、以下のような結果が出ています。

2使用時間の変化は。条例施行後、スマホなどの使用時間に「変化はなかった」と答えた人が65.4%に上りました。一方で、「使用時間を短くした」など変化があったと答えた人は、7%にとどまっています。

意識への影響は、実際の行動変容は限定的であるものの、回答者の39%(4割弱)が「生活を見直すきっかけになった」としています。また「使用時間を気にするようになった」と答えた人は27%でした。

市側はこの結果を受け、使用時間が劇的に減ったわけではないものの、「自身の生活習慣を振り返る一定の啓発効果があった」と評価しています。

  • なお、この調査は2025年10月1日の条例施行直後に実施されたもので、対象は市内在住・在勤・在学の182人です。市は今後、年内に小中学生を対象とした詳細な調査も実施する予定としています。

青少年のゲーム・ネット利用制限(香川県)

2020年4月に施行された「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」は、子どもの依存症対策に特化した条例です。
利用時間の目安として、18歳未満の子どもに対し、ゲーム利用を平日60分(休日は90分)まで、スマホ利用を午後10時(中学生以下は午後9時)までとするよう保護者に努力義務を課しています。

2022年に高松地裁は、この条例について「憲法に違反しない(合憲)」とする判決を下しています。

特定の行為を制限する条例

特殊詐欺対策
三重県松阪市では、2025年12月よりATM操作中に通話しながらのスマホ利用を制限する条例案が提出されています。
歩きスマホの禁止

神奈川県大和市(2020年〜)や東京都世田谷区、荒川区、足立区、葛飾区、愛知県江南市などが、公共の場所での「歩きスマホ」を禁止・制限する条例を定めています。

具体的には、道路、駅前広場、公園などの公共の場所でスマホを操作する場合、「通行の妨げにならない場所で立ち止まって行うこと」を求めており、看板等での啓発が行われています。

法律上の罰則がなくても、歩きスマホが原因で他人に怪我をさせた場合は、過失傷害罪に問われたり、多額の損害賠償を請求されたりするリスクがあります。

自転車の「ながらスマホ」は厳罰化

歩行中とは異なり、自転車を運転しながらのスマホ操作は道路交通法によって禁止されており、2024年11月より罰則が大幅に強化されました。
罰則 …
6ヶ月以下の懲役、または10万円以下の罰金
反則金 …
2026年4月からは「青切符」の対象となり、1万2000円の反則金が科される見通し

未成年のSNS利用規制

子どもとデジタル機器

インターネットとの向き合い方

保護者
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