日本のSNS規制はどうあるべきか?

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日本のSNS規制はどうあるべきか?

全国PTA連絡協議会
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SNS規制をめぐる3つのポイント

2025年12月時点では、日本におけるSNS規制の主な論点は、① 誹謗中傷への実効的な対策、② 青少年の保護と自由のバランス、そして③ 選挙における情報の公正性の3点に集約されます。

① 誹謗中傷・偽情報への対応(情プラ法)

2025年4月施行の「情報流通プラットフォーム対処法」により、SNS事業者への義務が強化され、被害者から削除申請があった際、事業者は一定期間内(目安として1週間程度)に判断を下し、結果を通知することが義務化、また削除基準の公表や、運用状況の報告も求められています。

法による規制は、表現の自由を不当に制限しないか、また事業者が過度な「自主検閲」に走らないかという懸念が依然として議論されています。

② 青少年の利用制限と保護

オーストラリアなどで導入された「16歳未満のSNS利用禁止」などの動きを受け、日本でも議論が活発化し、日本では、年齢による一律の法的規制には慎重な立場が主流で、「デジタルリテラシー教育」による対策が優先されています。

SNSの長時間利用による依存や、ネットいじめ、性的搾取から子供をどう守るかが焦点となっており、一律禁止は情報へのアクセス遮断による情報格差を生むという反対意見がある一方、一部の自治体では、罰則のない独自のガイドラインを設ける動きも出ています。

③ 選挙・政治活動における規制

2025年夏の参議院選挙などを背景に、選挙期間中のSNS利用に関する課題は整理されていますが、選挙活動の自由を妨げない範囲で、どこまで事業者に法的責任を負わせるかがか論点です。

収益化の禁止
候補者が選挙期間中にSNS投稿で収益を得るいわゆるインプレッション稼ぎの規制
偽情報(フェイクニュース)
生成AIを用いた偽動画などが民主主義を脅かすとして、迅速な削除やファクトチェックの義務

規制により懸念されること

憲法・権利上からは

表現の自由と知る権利
日本国憲法第21条が保障する表現の自由には、情報を発信するだけでなく、受け取る権利(知る権利)も含まれます。一律の利用禁止は、若者から重要な情報源を奪う「過度な権利制限」にあたるとの批判があります。
検閲の禁止
国家が通信内容を監視したり、一律に遮断を命じたりすることは、憲法が禁じる「検閲」に抵触する恐れがあるため、慎重な議論が求められています。

実効性と副作用

隠れ利用によるリスク
一律に禁止しても、子どもが親の目を盗んで利用したり、規制の緩い「闇サイト」へ流入したりするリスクが指摘されています。これにより、かえって大人の目が届かない場所で深刻な被害(性的搾取や犯罪)に遭う懸念があります。
情報格差(デジタル・デバイド)
SNSは現代の教育や社会生活に不可欠なインフラとしての側面もあり、禁止によって同年代のトレンドや情報から取り残される「情報格差」の発生が懸念されています。

教育・育成の観点から

「鍛錬」としての教育
規制は一時的な「絆創膏」に過ぎず、教育こそが長期的な「鍛錬」であるとする主張です。若いうちに失敗も含めてSNSとの距離感を学ぶ機会を奪うと、大人になってからより深刻なトラブルに巻き込まれるという「リテラシー教育重視」の意見が根強くあります。
賢く使わせる文化
日本では、オーストラリアのような「法律で一律禁止」する国とは対照的に、ガイドラインや教育を通じて「賢く使わせる」方向を目指すべきとされています。

日本における青少年のSNS規制

法規制でなく事業者による年齢確認と保護者による管理機能を強化

2025年12月現在、日本における青少年のSNS規制は、海外での厳格な年齢制限(オーストラリアの16歳未満禁止法など)と、国内の「表現の自由・知る権利」のバランスの間で揺れている状況ともいえ、現在の日本における具体的な論点は以下の通りです。

1. 法的な一律制限 vs 自主的な管理

日本政府や有識者の多くは、年齢による一律の利用禁止には慎重姿勢です。理由は、SNSが若者の重要な情報源や自己表現の場となっており、禁止が「情報格差」や「適切な距離感を学ぶ機会の喪失」を招く懸念があるためです。

現在は「青少年インターネット環境整備法」に基づき、保護者が管理(フィルタリング設定)を行い、事業者が環境を整えるという「自主管理」が基本路線です。

規制派の主張(法案検討の背景)
メンタルヘルスへの深刻な影響
SNS特有のアルゴリズム(おすすめ機能)による依存、ボディイメージの歪み、ネットいじめなどが、若者の心身に深刻なダメージを与えているという科学的データが重視されています。
事業者の責任の限界
自主管理では「インプレッション(閲覧数)稼ぎ」を優先するプラットフォームの構造を変えられないため、法的罰則(数億円〜数十億円規模の罰金など)を伴う規制が必要だとする主張です。
  • 2025年12月現在、日本では愛知県豊明市のように使用時間の目安を示す「条例」を設ける自治体も出ていますが、罰則のない「基本理念」に留まっており、国レベルでの一律禁止には至っていません。

2. 「実効性のある」年齢確認の導入

多くのSNSは規約で「13歳以上」としていますが、自己申告制のため形骸化が指摘されています。
本人確認の議論として、2025年、政府内ではマイナンバーカードやAIによる顔認証を用いた、より厳格な年齢確認(エイジ・ベリフィケーション)を事業者に義務付けるべきか検討されています。

SNS別の年齢制限と保護者向け情報
Instagram 13歳以上 13〜17歳は「10代の利用制限」により、夜間の通知停止などの保護機能が適用されます。
お子さんにInstagramを安全にご利用いただくために ≫ 
TikTok 13歳以上 13〜15歳のアカウントは初期設定で「非公開」になりています。
保護者向けガイド ≫ 
X 13歳以上 登録時に13歳未満の生年月日を入力するとアカウントが作成できません。
保護者および未成年者向け情報 ≫    Xでの保護者の同意について ≫ 
YouTube 13歳以上 13歳未満はYouTube Kidsの利用、または保護者管理の「管理機能付きアカウント」が必要です。
保護者向け管理機能に関する家族向けガイド ≫ 
LINE 制限なし 規約上の制限はありませんが、フィルタリング設定等では「12歳以上」が推奨されています。
保護者・教育関係者の皆さんへ ≫ 
なぜ年齢制限があるのか?
法的な要件 (COPPA)
米国の「児童オンラインプライバシー保護法 (COPPA)により、13歳未満から個人情報を収集するには保護者の厳格な同意が必要なため、多くの企業が一律13歳以上としています。
子供の安全と健康の保護
オンラインいじめ、性犯罪、不適切なコンテンツ(摂食障害や自傷行為を助長するもの)への接触リスクを最小限にするためです。
心身への悪影響の防止
SNS依存や、体型・ライフスタイルを他人と比較することによるメンタルヘルスへの悪影響が懸念されています。

3. プラットフォーム側の機能制限

法規制に先行して、事業者が若年層向けの保護機能を強化する動きが加速しています。
Instagramの「ティーンアカウント」は、2025年より日本でも順次導入されています。16歳未満はデフォルトでアカウントが非公開になり、知らない人からのメッセージ受信が制限されます。
また、1日60分を超えると利用停止を促す通知が届き、設定変更には保護者の承認が必要となっています。

また、依存性を高める「おすすめ機能」を18歳未満には制限したり、夜間の通知を停止するアルゴリズムの制御機能の導入が進んでいます。

ティーンアカウントとは

SNS各社は、18歳未満の利用者を守るための「ティーンアカウント」という保護機能を大幅に強化しており、主な特徴と制限内容は以下の通りです。

デフォルト設定としてのアカウントの自動制限として、

非公開設定
新規・既存を問わず、ティーンのアカウントは自動的に「非公開」に設定されます。承認したフォロワー以外は投稿を見ることができません。
メッセージ制限
フォローしている人、または既につながっている人からしかメッセージを受け取れなくなります。
不適切なコンテンツの制限
攻撃的な表現や、自傷行為、美容整形を助長するようなセンシティブな内容が表示されにくくなります。

その他、保護者による管理機能や利用時間の管理として

ペアレンタルコントロール
16歳未満のユーザーが設定を変更(例:アカウントを公開にする等)しようとする場合、保護者の許可が必須となります。保護者はガイド機能などを通じて、子どもが誰とメッセージをやり取りしているか(内容は不可)を確認したり、利用時間を制限したりできます。
スリープモード
夜10時から朝7時までの間は通知がオフになり、DMには自動返信が送られます。
利用時間制限のアラート
1日の利用時間が60分を超えると、アプリを閉じるよう促す通知が表示されます。

4. 有害コンテンツへの対応強化

こども家庭庁を中心に、SNS上の性的コンテンツや自殺・自傷を助長する投稿、執拗なメッセージ(グルーミング)から子供を守るための法的措置が検討されています。

学校・教育現場では、SNSを介したいじめやSNS起因の性被害が増加していることから、デジタルリテラシー教育の義務化レベルでの引き上げが議論されています。

結論として、日本は「法で一律に禁じる」のではなく、「厳格な年齢確認の仕組み」を事業者に求めつつ、「保護者による管理を容易にする機能」を強化させる方向で調整が進んでいます。

青少年に対するSNS規制の論点

実効性のある年齢確認と悪質なアルゴリズムの抑制

2025年12月現在、日本におけるSNSの「法的一律制限(禁止)」か「自主的な管理(教育・機能制限)」かを巡る議論は、単なる賛否を超えて、「国家の介入度合い」と「子供の自己決定権」をどう定義するかという深い対立軸へと進化していると考えます。

1. パターナリズム(保護主義)としての賛否

規制推進派は、未成年は判断能力が未発達であり、中毒性の高いアルゴリズム(レコメンド機能)から自力で身を守ることは不可能であり、国家が交通安全における「シートベルトの着用義務」と同じように、健康被害(依存症や鬱)を防ぐために強制的に介入すべきであり、パターナリズムとして介入・干渉が必要であると主張しています。

一方、慎重・反対派は、子どもにも「幸福追求権」や「情報アクセス権」があり、一方的な禁止は、若者の政治参加や社会学習の機会を奪う「大人の都合による隔離」であり、人権侵害に近いものである主張しています。

2. 実効性と地下潜伏の懸念

法で禁止しても、VPN(仮想専用線)の使用や年齢を偽ったアカウント作成により、規制をすり抜けることが容易であるり、技術的回避のイタチごっこを前提とした対策が必要と考えられる。

大手SNSの利用が禁止されることで、より監視の目が届かない、サイバー犯罪や不適切コンテンツが蔓延する「闇のプラットフォーム」へ子どもたちや若者が移動し、かえって被害が見えにくくなるリスクが指摘されています。

3. デジタル・セーフティ・バイ・デザインの義務化

現時点では「一律禁止か、放任か」の二択ではなく、「SNSの設計自体に規制をかける」という以下のような第3の道も有力な議論となっています。

アルゴリズムの透明化
依存を促す仕組みと指摘されている「無限スクロール」や「自動再生」を、18歳未満には禁止または制限するよう法律で義務付けを行う。
デフォルト設定の厳格化
自主的な管理に任せるのではなく、最初から「非公開設定」「DM制限」を強制するよう国が事業者に命じるという、法的強制力を持った設計変更を要求する。

4. 経済的・国際的競争力の観点

10代という最も吸収力の高い時期にSNS(デジタルのコミュニケーション・ツール)から切り離すことは、将来的なIT人材としての競争力を削ぐことになるとの懸念があり、ITリテラシー低下のリスクが指摘されています。

オーストラリアやフランスのような「禁止・制限」の動きと、米国の一部の州(フロリダ州など)が導入した厳格な法律を日本がどの程度参考にするか。海外との足並み揃え、日本の「青少年インターネット環境整備法」を改正し、より踏み込んだ「年齢確認の義務化」を行うべきかが焦点です。

青少年インターネット環境整備法とは 正式名称は「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」で、青少年(18歳未満)がネット上の有害情報(犯罪、暴力、性、アダルトなど)に触れることを防ぎ、安全に利用できる環境を整えることを目的としています。
保護者の義務
子供のインターネット利用状況を把握し、適切に管理(ペアレンタルコントロール)する責任があります。
携帯電話事業者の義務
使用者が18歳未満の場合、原則としてフィルタリングサービスの提供が義務付けられています。また、販売時にはフィルタリングの有効化設定を行う必要があります。
メーカー・OS事業者の努力義務
フィルタリングを容易に設定できるような製品開発やOSの提供に努める必要があります。
青少年の努力義務
自身もネットを適切に活用する能力(メディアリテラシー)を習得するよう努めることが理念として掲げられています。

2017年の改正(2018年施行)でスマホやタブレットにも対象が拡大され、保護者の同意があればフィルタリングを解除できるものの、解除手続きを厳格化し、事業者への説明義務やメーカーへの事前インストール義務などが強化されましたが、実効性には課題も指摘されています

5. 家庭のプライバシーへの介入限界

どこまでを「親の教育方針」に任せ、どこから「公権力(法律)」が介入すべきか。一律禁止は、各家庭の教育方針を否定することになりかねないという議論があり、家庭教育の聖域をどう考えるかが問われています。

規制を家庭に任せると、リテラシーの高い家庭の子は守られるが、放置されている家庭の子は野放しになるという「保護の格差」生じます。格差の拡大を埋めるために一律の法規制が必要だという意見もあります。

こども家庭庁を中心にソフトな法規制への移行を模索

2025年12月時点の日本政府の姿勢は「一律禁止は副作用が大きすぎるが、事業者の自主管理(野放し)も限界である」という認識に立っており、こども家庭庁を中心に「実効性のある年齢確認」と「悪質なアルゴリズムの抑制」を軸とした、ソフトな法規制(規律)への移行を模索しています。

選挙や政治活動におけるSNS規制

SNS事業者の自主的な対策と政府によるガイドライン策定が対応の中心

2025年12月現在、選挙や政治活動におけるSNS規制は、民主主義の根幹に関わる課題として議論が加速しています。特に2025年7月の参議院選挙前後で、以下の具体的な論点が浮き彫りになりました。

1. 投稿の「収益化」制限

SNS上の「インプレッション稼ぎ」が、偽情報や過激な誹謗中傷を助長しているという指摘から、規制の議論が進んでおり、選挙期間中、候補者や政治活動に関する投稿から得られる広告収益(収益配分)を停止・制限する案が検討されています。

現状 2025年の参院選前には法整備が間に合わず、自民党などはSNS事業者に対し「自主的な収益化停止」を要請するにとどまりました。
課題 収益停止の対象範囲(候補者本人のみか、第三者も含むか)や、憲法が保障する「表現の自由」や財産権との兼ね合いが大きなハードルとなっています。

2. 誹謗中傷・偽情報への「即日対応」

選挙期間という限られた時間内での被害を最小限に抑えるため、削除対応の迅速化が求められています。
2025年4月施行の情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)では、通常の投稿削除には7日間の猶予がありますが、政治家や候補者への誹謗中傷については、その猶予を2日間に短縮して事業者に判断を促す運用が議論されています。

生成AIによる偽動画(ディープフェイク)が選挙結果を左右する懸念から、総務省はSNS事業者に対し、AI生成コンテンツのラベル表示や迅速な削除を要請しています。

3. 外国勢力による世論操作への警戒

外部勢力がSNSを通じて特定の候補者を攻撃したり、社会の分断を煽る「情報の誠実性」への脅威が深刻視されています。
監視体制の強化として、政府は内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を中心に、選挙介入を目的とした偽情報の拡散を監視・特定する新組織の設置を検討しています。

また、総務省は「DIGITAL POSITIVE ACTION」などのプロジェクトを通じて、官民連携による有権者のリテラシー向上と事業者の自主規制を並行して推進しています。

4. 公職選挙法の適用範囲

現行の公職選挙法ではネット選挙が解禁されていますが、SNS特有の動きに対応しきれていない点が課題です。
2馬力選挙対策として、本人以外の第三者(インフルエンサー等)が関与する選挙運動の透明性をどう確保するか、またその際の「買収」にあたる行為の定義などが論点です。

また。候補者を当選させないための「落選運動」がSNSで過熱した際、どこまでが正当な批判で、どこからが違法な虚偽事項公表にあたるかの判断基準が議論されています。

現在、一律の法的規制には慎重な意見も根強く、「SNS事業者の自主的な対策」と「政府によるガイドライン策定」の組み合わせによる対応が中心となっています。

未成年のSNS利用規制

子どもとデジタル機器

インターネットとの向き合い方

保護者
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