義務や負担から脱却
楽しさとつながりを大切にした新しい形への挑戦
神奈川県横浜市立鴨志田緑小学校 PTA

従来の慣習にとらわれない柔軟な運営を目指し、保護者が主体的に関わる新たな仕組みを導入。
今回は、改革の中心人物の一人である後藤代表に、その取り組みと成果、そして今後の展望について伺いました。
会長一任制から複数代表制へ
「みんなで支える」PTA へ
改革の第一歩となったのは、2021年度の組織体制の見直しです。それまでの単一会長制を廃止し、複数名の代表制を導入。現在は3名の代表で運営しています。これにより、役員の負担が偏らず、協力しながら柔軟に対応できる体制が整いました。「友人と一緒に立候補する人も増え、役員になるハードルが下がったことを実感しています」。
さらに、2024年度には規約を改定し、入会・退会届を整備。PTAの加入は任意であることを明示した上で、活動のゼロベース見直しを行い、委員会を再編しました。「やりた い人が、やりたいことを、やれるだけ」。このシンプルな方針のもと、持ち回り担当や「1人1回委員」といった従来の義務的ルールを撤廃しました。
保護者同士のつながりを生む「親鴨会」
自由に参加できるボランティアコミュニティ
改革によって新たに生まれたのが、ボランティア組織「親鴨会」です。興味に応じて自由に参加でき、掛け持ちも大歓迎。現在は約3割の保護者が在籍しており、LINE WORKS で気軽に雑談したり、イベントを企画したりと活発に活動しています。
親鴨会は 3 つのグループで構成されています。
- 学校活動サポーターズ:学校行事など教育活動を支援
- イベントサポーターズ:PTA 主体のイベントを企画・実施を担う
- パソコンサポーターズ:IT 分野のサポートやツール活用を補助
出入り自由、決まった活動もありません。保護者は興味や得意分野に応じて自由に参加できますが、実際には複数のグループを掛け持ちする人も多いようです。現在は約 3 割の保 護者が在籍し、LINE WORKS で雑談したり、イベントを企画したりと、和気あいあいと活動しています。

じゃんけん列車は自然に会話が弾み、顔見知りが増えました。

IT活用で “つながる PTA” へ
Google × LINE で情報をもっとオープンに
「情報の透明化」も大きな柱となりました。Google Sites でホームページを開設し、LINE オープンチャットや LINE WORK を導入。さらに、オンラインストレージで資料を一元管理し、会議はオンライン参加も可能になりました。
Google Sites は広告がなく、操作もシンプル。IT に詳しくない保護者でも簡単に扱える点が好評だといいます。
また、活動紹介のために note も開設。情報発信の幅が広がっています。
「パソコンサポーターズ」の存在も、大きな助けとなっています。IT に詳しい保護者だけでなく、「勉強したいから参加したい」という人も増え、ツールを使いこなす人材が着実に育っています。
PTA は “サードプレイス” へ
家でも仕事でもない、もうひとつの居場所
改革によって、執行部の雰囲気は大きく変わりました。「決まったことを淡々とこなす」から「やりたいことを主体的に考える」へ。一方で、「おやじの会」の活性化や父親の参加率向上といった課題も残っています。小学生の保護者は、子どもの世話・仕事・家庭と多忙を極めます。しかし、子どもが多くの体験をし、親子で地域と関わるこの時期は、まさに “ゴールデンエイジ”。
家庭と学校、地域が自然につながり合うことで、子どもを中心とした安心できる環境が生まれます。
鴨志田緑小PTAは、そのハブとなる “サードプレイス” を目指しています。
地域と一緒に育つ PTA
「学校・家庭・地域」の三者をつなぐハブに
近年、治安への不安が高まる中、学校・家庭・地域がつながることは子どもたちの安全にも直結します。
鴨志田緑小PTAは、伝統行事を大切にしながら、誰もが参加しやすいイベントを企画し、地域とのネットワークを育てていく方針です。「まずは一歩、参加してみる」――そんなきっかけを増やすことで、子どもたちを見守る“地域の力”を強めていきます。
今回の取材で見えてきたのは、「義務」や「負担」といった従来のPTA像から脱却し、楽しさとつながりを大切にした新しい形への挑戦。鴨志田緑小PTAの取り組みは、全国のPTA改革を考える上で大きなヒントとなりそうです。
PTAの皆様へのインタービューなどをもとに、参加したくなるPTAをつくる改革、脱強制・改革の実践的な情報として、1冊の本にまとめています。
これから改革をしていこうという皆様に、少しでも参考になれば幸いです。
協力いただいたPTAの皆様、ありがとうございました。
