問題と解決「誰が、何のために、どうするのか?」
埼玉県 さいたま市立栄和小学校 PTA
協力いただいたPTAの皆様、
さいたま市立栄和小学校 PTA
改革のきっかけを教えてください。
発端はPTA役員募集です。
栄和小学校PTAの課題が明確になったのは、私が会長に就任した1年目の2023年1月、「同意確認もされてなく、来年度の役員を強制された」という、ごく小さなX (旧Twitter) の投稿からでした。
この投稿から、さいたま市教育委員会からも「至急、同意確認を行うように」というお達しがくる事態となり、市教委、学校、PTAが一緒になってPTA改革が突然始まりました。
投稿の翌月には、活動の説明をして任意加入を実施したものの、市教委からは、様々な問題を指摘されました。そこで、PTA活動の課題の見直しを進めることになりました。
お金の問題の他にも、役員の強制選出、PTA会費の集金方法、学校公務内でのPTA運営サポート、これまでの活動費の繰越金、地域の高齢化、登校時の見守り、PTA補償制度、上位団体の使途不明金など多くの課題が浮かび上がりました。
子どもの安全を守る見守り活動や旗持ちに関しては、残さなければならない活動として、PTAではなく、学校から保護者へお願いしてもらうことになりました。
任意加入による2024年4月現在の加入率は70%ぐらいです。
市教委と一緒に改革を進めたのですね。
実は、もともとは、広報紙をやめるとか、子どもたちが楽しめるイベントとか、今の時代に合った活動に切り替えていこうと考えていて、少しずつ変えていくつもりでた。
しかし、X(旧ツイッター)により、市議会議員からも注目されたことで、市教委と一緒に急激に大きく変えることになりました。
このことは、逆に改革のチャンスとなりました。
他校からは、栄和小がいろいろ変えると影響があるのでやめてくれという声もありましたが、教育委員会が後ろ盾としていましたので、気にすることもありませんでした。
改革にあたり、重視したのはどういう点ですか?
「誰が、何のために、どうするのか?」という視点で、1年かけて活動の棚卸をしました。
PTA活動の目的として、多くの保護者の方が腹落ちするものは、「「保護者として、子どもにどんな学校生活を送ってほしいのか?」の答えだと考えています。
私自身がPTAに関わることになったのも、もし、学校で何かあったときに学校任せにしていたら後悔すると思ったからです。
保護者は、我が子が学校生活を安心に安全に過ごせることが、最も大事なことと考えています。
なので、そこを守っていきたいと思っています。
そこで、本校のPTAとしては、次のような方針を立てました。
- 事件/事故のない学校生活
- 学校体験の向上
- 夢の育成
この活動方針のもと、
- 学校の課題を保護者としてサポートし、
- 保護者の声を学校にリクエストしていく、
一方通行ではない協力し合う団体であるべきと考えました。
改革で達成できたポイントを教えてください。
今回の見直しで、予算の透明化ができたかと考えています。
前述の通り、PTA会費以外に集金していた教育振興費や学校施設に対しての修繕積立金の廃止を行い、渉外費・地域交流費・校外委員会活動費などと「似通った予算科目も整理しました。
IT活用として最終的に取り入れたのは、オンラインバンキング、ホームページの開設、Wi-Fiの導入の3点です。
これまで、PTA会費の集金は給食費と一緒に、学校公務の時間内でサポートいただいていました。
これは、全保護者だからできたことのひとつでしたが、今後は、会員と非会員の保護者に分かれます。
学校公務の時間を一部の保護者だけに使うことにもなるので、学校委託を中止しました。
これにより、PTAの会計の業務がかなり圧迫されることになりますので、会計の業務を軽減すべく、オンラインバンキングの導入を検討したのですが、従来までの信用金庫では任意団体向けのそのサービスがなく、PTAでも可能なオンラインバンキングができる機関に移行しました。
その結果、会計の業務は前よりも軽減するどころか、会計監査にかかる時間も大幅に短縮されました。
ホームページを開設することでも、大幅な業務改善ができました。
これまでの本校PTAでの広報活動は、タイムリーに発行する「PTAだより」の印刷配布と学校ホームページへの掲載、定期的に発行する広報紙の印刷配布と多岐にわたり、30名近くの役員と30万円以上の活動費、それに学校公務の協力を必要としていました。
ホームページを開設することで、オンラインバンキング同様に学校委託を中止でき、かつ30名近くの役員と30万円以上の活動費をまるごと削減、さらには保護者の声を学校にリクエストしていく場として、透明性があり、公平な環境が構築できたと考えています。
実は、ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールや、Line worksやkintoneなどの共有するためのグループウェアの導入も予算に組み込み計画したのですが、その導入は逆に効率化できないと判断し、Wi-Fiとオンラインストレージ (Google Drive) だけ導入し、他は見送るとこにしました。
また、子どもの見守りや登校班の編成でのIT活用も試みました。
見守りについては、GPSやRFIDによるものが様々ありますが、PTAの活動費だけでは難しいものでした。
登校班の編成も、座標計算による自動化を試みましたが、まだまだ改善の余地のある結果となりました。
こうしたIT活用は、これからのPTAには必須で、今後も検討を重ねていく予定です。
登校見守りボランティアの当番表や登校班の編成など、まだまだITで効率化できると考えています。
ある意味、ここまで多くの見直しができたのは、他の団体との関わりがないからだと言えるかもしれません。
しかし、その結果、市のPTA協議会が案内する補償制度に加わることができなくなりました。
本校PTAの活動が「誰が、何のために、どうするのか?」とした時、決して上位団体のための活動ではありません。
こうした見直しを抱えるPTAにとって、役員不足に活用できるITを提供する、同意確認にその必要性とテンプレートを提供する、といったサポートがほしいという思いもあります。
そうしたひとつの答えが、全国PTA連絡協議会への登録でした。補償制度も全Pの制度を利用しています。
現在のPTA本部の活動について教えてください。
2024年度から委員は完全廃止します。
PTAの運営は本部だけでやっていく形になります。
見守りや旗持ちの活動は学校からのお願いという形で募集していますが、PTAでは、とりまとめや割り振り、場所の見直しなどをしています。
また、学校運営協議会と地域のスクールサポートネットワーク推進協議会に参加して、保護者の声を意見として述べること、ここで議論したことでPTAが担うべきことを活動としています。具体的には、運動会、音楽発表会などの学校行事のボランティア、資源回収やベルマーク、見守りサポート、110番の家の活動などです。
現在は、学校行事ボランティアも本部役員でできているので、ボランティアの募集はやっていません。
現在の課題はどんなことですか?
課題は役員不足です。
役員は応募制にしましたが、2023年度は数名の応募があったものの2024年度は今のところゼロです。
どうすればPTA役員に応募してくれるのか、検討中です。
PTA活動自体がやりたくない活動ではなく、「PTAがあってありがとう」と思ってもらえるものにしたいです。
例えば、去年取り組んだのはAEDの設置。
PTAとして校内に3台設置して、市教委が設置した1台と合わせて、校内に計4台あります。
他には、PTAの総合補償制度に加入したり、運動会の子どもの熱中症防止の目的でテントも買ったりという実績をアピールしています。
現在の会長、副会長が在籍している間に、次を任せられる人に関わってもらいたいです。
そのためにも、有意義な楽しい活動であることを知らせていきたいと思います。
どのように保護者への周知を行っているのでしょうか?
会員以外にもPTAのことを伝えたいので、学校からのメール配信を使わせていただいています。
前述の通り、ホームページは、無料でできるサービス、KDDIのJIMDOを使って充実させています。
ブログの部分だけは、誰でも更新できるようにしています。本部内でも、LINEしか使えないという人もいますので、そういう人たちでも使えるようなアプリが充実するところでやっています。
また、本校PTAのあり方を伝える「PTAガイドブック」を作成して、保護者に配布しています。
今後の活動について教えてください。
将来的には、ベルマークやPTAまつりなどのボランティアとして、子どもが参加できる活動をしていきたいという夢があります。
子ども向けのイベントは、スポーツ系の楽しいだけのものではなく、理系、文系などの将来的に子どもたちの可能性を広げられるような体験学習的なものをやりたいと考えています。
学校にもたくさん提案しているのですが、学校からは、1年生から6年生までが参加できるものという条件があり、まだ実現には至っていません。
子どもたちが全員参加できるように、学校と協力して授業中にやりたいという思いがあります。
本校PTAは、何かを「させられる」団体ではなくなりました。
活動の本質を踏まえて、無駄な活動は、さらに無くしていく予定です。
しかし、何も「しなくていい」のではなく、その分、子どものために何が「できるのか」だと考えており、共感と賛同をいただけるような活動をしていく「これからの団体」にすることこそ、今後の課題かと考えています。
インタビューを終えて
突然、PTA改革を始めることになった栄和小学校PTA。その先頭に立って、エネルギッシュに改革を進めてこられた市村会長のお話しは、子どもたちの未来に向けての温かい思いがあふれていました。
これからの栄和小学校PTAは、活動の担い手を増やすなど、次の段階に進んでいくと思います。
子どもの笑顔のために、「栄和小学校PTAがあってよかった」と思えるPTAをさらに目指して頑張ってください!