改革事例 栄和小学校PTA

改革事例 栄和小学校PTA

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問題と解決「誰が、何のために、どうするのか?」

埼玉県 さいたま市立栄和小学校 PTA

Case Study

協力いただいたPTAの皆様、ありがとうございます!

さいたま市立栄和小学校 PTA

栄和小学校

お話しを聞いた方

市村様 2023年度〜 会長(現任)

インタビュー日付

2024年4月18日

PTAホームページ

さいたま市立栄和小学校 PTA ≫

改革のきっかけを教えてください。

発端はPTA役員募集です。

栄和小学校PTAの課題が明確になったのは、私が会長に就任した1年目の2023年1月、「同意確認もされてなく、来年度の役員を強制された」という、ごく小さなX (旧Twitter) の投稿からでした。この投稿から、「至急、同意確認を行わなくてはならない」と深刻に捉え、学校とPTAが一緒になってPTA改革が突然始まりました。

投稿の翌月には、活動の説明をして任意加入を実施したものの、その活動の説明内容に、様々な問題があったことが発覚し、PTA活動において、何が正しいのか、正しくないのか、見直しを進めることになりました。

改革のきっかけ

同意確認を行う、ということは任意活動になりますので、子どもたちのすべての保護者参加ではなくなります。すると、何が公平かという前提がすべて誤りになっていくのです。わかりやすいところで、教育振興費がそれにあたります。

一部の保護者の会費で、保護者とは関わりのない子どもたちに活用するのも不公平ですし、会費を出している保護者の一部の子どもだけを対象にするのも不公平です。それは入学記念品や卒業記念品などでも言えることです。

こうしたお金の問題の他にも、役員の強制選出、PTA会費の集金方法、学校公務内でのPTA運営サポート、これまでの活動費の繰越金、地域の高齢化、登校時の見守り、PTA補償制度、上位団体の使途不明金など多くの課題が浮かび上がりました。

任意加入による2024年4月現在の加入率は70%ぐらいです。

学校と一緒に改革を進めたのですね。

実は、もともとは、広報紙をやめるとか、子どもたちが楽しめるイベントとか、今の時代に合った活動に切り替えていこうと考えていて、少しずつ変えていくつもりでた。
しかし、Xにより、様々な方面からも注目されたことで、急激に大きく変えることになりました。
このことは、これはPTA改革の大きなチャンスと捉え、そのすべてを見直ししたわけです。

改革にあたり、重視したのはどういう点ですか?

まず、前述の通り、何が正しいのか、正しくないのかがベースにあります。具体的には、コンプライアンスに準拠することです。PTAについて、しっかりと規定している法律はありませんが、学校に関わりのある団体として、それに準ずる法令対応が求められます。また、コンプライアンスとは法令遵守と捉えがちですが、法令だけではなく、社会規範や組織倫理であったりもします。

組織倫理としては、「誰が、何のために、どうするのか?」という視点をしっかり持ち、1年かけて活動の棚卸をするべきと考えたわけです。 PTA活動の目的として、多くの保護者の方が腹落ちするものは、「保護者として、子どもにどんな学校生活を送ってほしいのか?」の答えだと考えています。

私自身がPTAに関わることになったのも、もし、学校で何かあったときに学校任せにしていたら後悔すると思ったからです。自分が小学生の時には、遊具で遊ぶ友だちの足がロープに絡み、大怪我をする事故を目の前で見ました。担任からはやってもいない窃盗事件の犯人につるし上げられることもありました。

その一方で、修学旅行や工場見学、運動会に音楽発表会など、今でも鮮明に思い出せるいい思い出です。ですので、ひとりの保護者として、自分の子どもが学校生活を安心に安全に過ごせることが、最も大事なことと考えています。その上で、子どもが大人になった時に生きる力となる、かけがえのない一生に一度の小学校生活を送ってくれればと願っています。

そうした思いから、本校PTAとしては、次のような方針を立てました。

  • 事件/事故のない学校生活
  • 学校体験の向上
  • 夢の育成

この活動方針のもと、①学校の課題を保護者としてサポートし、②保護者の声を学校にリクエストしていく、一方通行ではない協力し合う団体であるべきと考えました。

サポート
PTAガイドブックより

改革で達成できたポイントを教えてください。

一番大きな点は、朝の旗持ちです。
これまで本校PTAでは、PTAの委員会活動として校外指導委員会を設置し、その役員に朝の旗持ちを行っていただいていました。しかし、任意化したことで、その役員が集まらなかったのです。そこで実態調査を行ったのですが、ごく一部の地域しか旗持ちをしてなかったことや、旗持ち指定の場所に実際には誰も立っていなかったことなどが発覚したのです。

法令上では通学路は学校管理下ではありませんが、すべての子どもたちを安全に登校させるという目的は学校もPTAも同意できると思います。旗持ちをお願いする保護者の保険などの対応もあり、学校とPTAと共同で、旗持ちをすべての保護者にお願いする形にすることができました。

また、今回の見直しで、予算の透明化ができたかと考えています。
前述の通り、PTA会費以外に集金していた教育振興費や学校施設に対しての修繕積立金の廃止を行い、渉外費・地域交流費・校外委員会活動費などと似通った予算科目も整理しました。一部の子どもだけを対象とする入学記念品や卒業記念品、一部の外部団体だけが収益を得るような活動などは廃止しています。

さらには、PTA会費の集金方法も見直しています。
これまで、PTA会費の集金は給食費と一緒に、学校公務の時間内でサポートいただいていました。これは、全保護者が会員だからできたことのひとつでしたが、今後は、会員と非会員の保護者に分かれます。
学校公務の時間を一部の保護者だけに使うことにもなるので、学校委託を中止しました。

一方、PTA活動を運営する本部業務の軽減を目的に、多くのICT導入も検討しました。
ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールや、Line worksやkintoneなどの共有するためのグループウェアの導入も予算に組み込み計画したのですが、PTAでそれを活用することで効率化につながるかと言えば、それは別でした。
最終的に取り入れたのは、オンラインバンキング、ホームページの開設、Wi-Fiの導入の3点です。


PTA会費の集金を学校委託から中止したことにより、PTAの会計の業務がかなり圧迫されることになりますので、会計の業務を軽減すべく、オンラインバンキングの導入を検討したのですが、従来までの信用金庫では任意団体向けのそのサービスがなく、PTAでも可能なオンラインバンキングができる機関に移行しました。
その結果、会計の業務は前よりも軽減するどころか、会計監査にかかる時間も大幅に短縮されました。

ホームページを開設することでも、大幅な業務改善ができました。
これまでの本校PTAでの広報活動は、タイムリーに発行する「PTAだより」の印刷配布と学校ホームページへの掲載、定期的に発行する広報紙の印刷配布と多岐にわたり、30名近くの役員と30万円以上の活動費、それに学校公務の協力を必要としていました。

ホームページを開設することで、オンラインバンキング同様に学校委託を中止でき、「PTAだより」に関わる印刷と配布にかかわる工数も大幅に削減、広報紙に関わる30名近くの役員と30万円以上の活動費をまるごと削減、さらには保護者の声を学校にリクエストしていく場として、透明性があり、公平な環境が構築できたと考えています。

また、子どもの見守りや登校班の編成でのICT導入も検討しました。
見守りについては、GPSやRFIDによるものが様々ありますが、PTAの活動費だけでは難しいものでした。登校班の編成も、座標計算による自動化を試みましたが、まだまだ改善の余地のある結果となりました。

こうしたIT活用は、これからのPTAには必須で、今後も検討を重ねていく予定です。
登校見守りボランティアの当番表や登校班の編成など、まだまだITで効率化できると考えています。


こうした見直しの中で、本校PTAではコンプライアンスを理由に上位団体である市のPTA協議会から退会をしています。
その結果、市のPTA協議会が案内する補償制度に加わることができなくなりました。

本校PTAの活動が「誰が、何のために、どうするのか?」とした時、決して上位団体のための活動ではありません。

こうした見直しを抱えるPTAにとって、役員不足に活用できるICTを提供する、同意確認にその必要性とテンプレートを提供する、といったサポートがほしいという思いもあります。
そうしたひとつの答えが、全国PTA連絡協議会への入会でした。補償制度も全Pの制度を利用しています。

現在のPTA本部の活動について教えてください。

2024年度から委員会は完全廃止となりました。PTAの運営は本部だけでやっていく形になります。

見守りや旗持ちの活動は、2023年度に安心できるものができたかと思っています。
本年度は、1年間で得た知見を反映し、より安心できるものにしていき、それが継続できるよう効率化を進めることだと考えています。

また、学校運営協議会に参加して、保護者の声を意見として述べること、ここで議論したことを地域のスクールサポートネットワーク推進協議会と協調し形にしていく活動としています。

具体的には、運動会、音楽発表会などの学校行事のボランティア、あいさつ運動、資源回収やベルマーク、見守りサポート、110番の家の活動などです。
こうした活動に多くの方からご参加いただけるよう、色々とアイデアを出し合っています。

PTA本部の活動
PTAガイドブックより

現在の課題はどんなことですか?

課題は役員不足です。
役員は応募制にしましたが、なかなか集まることはなく、どうすればPTA役員に応募してくれるのか、検討中です。PTA活動自体がやりたくない活動ではなく、「PTAがあってありがとう」と思ってもらえるものにしたいです。

例えば、去年取り組んだのはAEDの設置。PTAとして校内に3台設置して、市教委が設置した1台と合わせて、校内に計4台あります。他には、PTAの総合補償制度に加入したり、運動会の子供の熱中症防止の目的でテントも買ったりという実績をアピールしています。

どのように保護者への周知を行っているのでしょうか?

会員以外にもPTAのことを伝えたいので、学校からのメール配信を使わせていただいています。

前述の通り、ホームページは、無料でできるサービス、KDDIのJIMDOを使って充実させています。
ブログの部分だけは、誰でも更新できるようにしています。本部内でも、LINEしか使えないという人もいますので、そういう人たちでも使えるようなアプリが充実するところでやっています。

また、本校PTAのあり方を伝える「PTAガイドブック」を作成して、保護者に配布しています。

ガイドブック

今後の活動について教えてください。

本校PTAは、何かを「させられる」団体ではなくなりました。
活動の本質を踏まえて、無駄な活動は、さらに無くしていく予定です。

しかし、何も「しなくていい」のではなく、その分、子どものために何が「できるのか」だと考えており、共感と賛同をいただけるような活動をしていく「これからの団体」にすることこそ、今後の課題かと考えています。
例えば、ご自身の子どものための直接的な活動や、ご自身の子どもと一緒にできる活動というのは分かりやすく、そうしたアイデアを形にもできればと考えています。

PTA活動は、「将来子どもがどんな大人になってほしいか」だとも思います。
前述の通り、子どもが大人になった時に生きる力となってほしいというのが理想ですので、PTA活動はその道を作れることだと思います。

あくまでもアイデアですが、ベルマークやPTAまつりなどのボランティアとして、子どもが参加できる活動するのもひとつの手だと思います。
また、子ども向けのイベントは、理系、文系などの将来的に子どもたちの可能性を広げられるような体験学習的なものができないかと学校と共同で色々と検討しています。

今後の活動
PTAガイドブックより

インタビューを終えて

突然、PTA改革を始めることになった栄和小学校PTA。その先頭に立って、エネルギッシュに改革を進めてこられた市村会長のお話しは、子どもたちの未来に向けての温かい思いがあふれていました。

これからの栄和小学校PTAは、活動の担い手を増やすなど、次の段階に進んでいくと思います。

子どもの笑顔のために、「栄和小学校PTAがあってよかった」と思えるPTAをさらに目指して頑張ってください!

書籍化!

インタビュー詳細 + 脱強制・改革の実践的ノウハウ

PTA こうやって変えました

PTAの皆様へのインタービューなどをもとに、参加したくなるPTAをつくる改革、脱強制・改革の実践的な情報として、1冊の本にまとめています。
これから改革をしていこうという皆さまに、少しでも参考になれば幸いです。

協力いただいたPTAの皆様、ありがとうございました。

参加したくなるPTAをつくる改革

学校からの個人情報漏洩、保護者・教員の全員自動加入と役職・活動強制、違法寄付等、課題山積の旧態PTA。不適切な状態を脱し、参加したくなるPTAをつくるにはどうすれば良いのか。

任意加入の徹底、目的の明確化とスリム化、IT活用と透明化など、一足先に改革を実現した現場のリーダー達に学ぶ、新しいしくみのつくりかた。

全国PTA連絡協議会 編著
PTA こうやって変えました!
Case Study
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