学習塾に使える助成制度やヒント

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家庭教師費、塾費用の負担は? 助成制度の事例や新しい学びのスタイル

学習塾に使える助成制度やヒント

全国PTA連絡協議会
保護者として、子どもの可能性を伸ばすために、教育費は惜しみたくないと考えますが、子育て世帯にとって、補助学習費といわれる、通信教育や家庭教師費、塾費用の負担は少ない割合となっています。ここでは、補助学習費に使える助成制度の事例や、活用次第で補助学習費の負担軽減につながるオンラインによる学びや人工知能を利用した家庭教師の情報をまとめています。

補助学習費の現状

教育費における補助学習費の負担

教育費は、以下の3つに分類され、子どもの教育や学習にかかる費用全般のことです。

1.学校教育費

学校で教育を受けるために支出する費用

2.学校給食費

給食にかかる費用

3.学校外活動費

学習塾や家庭教師、習い事などにかかる費用

学校外活動費は「補助学習費」と「その他の学校外活動費」に分けられ、補助学習費には、通信教育、家庭教師費、塾費用などが区分されています。

教育費 = 学校教育費 + 学校給食費 + 学校外活動費(補助学習費 + その他の学校外活動費)

補助学習費の負担割合は、幼小中高全ての攻守において、公立より私立の方が高くなっています。
また公立中学校では、負担割合が56.3%となっています。

年間の教育費の内訳(校種別)

学校区分幼稚園小学校 中学校高等学校(全日制)
公立/私立 公立 私立 公立 私立 公立 私立 公立 私立
教育費
合計
165,126
100.0%
308,909
100.0%
352,566
100.0%
1,666,949
100.0%
538,799
100.0%
1,436,353
100.0%
512,971
100.0%
1,054,444
100.0%
学校教育費
61,156
37.0%
134,835
43.6%
65,974
18.7%
961,013
57.7%
132,349
24.6%
1,061,350
73.9%
309,261
60.3%
750,362
71.2%
学校給食費 13,415
8.1%
29,917
9.7%
39,010
11.1%
45,139
2.7%
37,670
7.0%
7,227
0.5%
0
0.0%
0
0.0%
学校外活動費 90,555
54.8%
144,157
46.7%
247,582
70.2%
660,797
39.6%
368,780
68.4%
367,776
25.6%
203,710
39.7%
304,082
28.8%
補助学習費 29,885
18.1%
42,118
13.6%
120,499
34.2%
377,663
22.7%
303,136
56.3%
262,322
18.3%
171,377
33.4%
246,639
23.4%
家庭内学習費
合計
8,982
5.4%
11,881
3.8%
14,398
4.1%
42,699
2.6%
16,276
3.0%
40,028
2.8%
22,640
4.4%
31,786
3.0%
通信教育
家庭教師費
8,404
5.1%
11,969
3.9%
23,237
6.6%
52,946
3.2%
29,379
5.5%
36,964
2.6%
16,301
3.2%
26,530
2.5%
学習塾費 11,621
7.0%
17,636
5.7%
81,158
23.0%
273,629
16.4%
250,196
46.4%
175,435
12.2%
120,397
23.5%
171,149
16.2%
その他 878
0.5%
632
0.2%
1,706
0.5%
8,389
0.5%
7,285
1.4%
9,895
0.7%
12,039
2.3%
17,174
1.6%
その他の学
校外活動費
60,670
36.7%
102,039
33.0%
127,083
36.0%
283,134
17.0%
65,644
12.2%
105,454
7.3%
32,333
6.3%
57,443
5.4%
単位:円 表内の比率は、学校外活動費に対する割合
※各項目の比率が20%以上の項目は赤数値で表示
出典:文部科学省 2021年度子供の学習費調査

塾費用はいくら?

上記の表にあるように、学習塾にかかる年間費用の平均は、

幼稚園では、公立で11,621円、私立で17,636円、
小学校では、公立で81,158円、私立で273,629円、
中学校では、公立で250,196円、私立で175,435円、
高等学校では、公立で120,397円、私立で171,1490円です。

中学校の場合、公立のほうが私立よりも高額です。
公立のほうが高額な理由として考えられるのは、私立の場合、中高一貫で高校受験がない場合があるものの、公立では高校受験準備があるためと推察します。

自治体による補助学習費の助成制度

助成制度

教育費は人生の三大支出のひとつ。年間支出が大きいうえに、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と、約20年間も支払い続けるため、家計に大きな負担がかかります

塾の存在は、成績アップや受験にとって必要なものでが、利用する場合は、それなりの費用がかかります。

地域によって、利用できない地域もありますが、塾を対象とした補助金制度もあり、金額や内容は地域ごとに異なりますが、年間5~10万円の費用を負担してくれます。
自治体のホームページでの確認をお勧めします。

東京都受験生チャレンジ支援貸付事業

受験生チャレンジ支援貸付事業は、東京都内の中学3年生・高校3年生(又はこれに準じる方)向けに学習塾、各種受験対策講座、通信講座等の受講料や、高校・大学等の受験料の捻出が困難な一定所得以下の世帯へ必要な資金の貸付を無利子で行っています。東京都の補助を受けて、東京都社会福祉協議会が実施しています。

利用にあたっての所得要件がありますが、対象の高校・大学等に入学した場合、所定の手続きをもって返済が免除されます。利用した方の99%が、返済を免除されている事業です。

  • 準じる方とは、高校・大学等中途退学者、高等学校卒業程度認定試験合格者、定時制高校4年生、浪人生等
利用条件など詳しい情報は、東京都社会福祉協議会 専用サイト ≫
貸付内容貸付限度額対象
学習塾等受講料200,000円中学3年生・高校3年生など
受験料27,400円中学3年生など
80,000円高校3年生など

大阪府大阪市 習い事・塾代助成事業

塾

子育て世帯の経済的負担を軽減するとともに、こどもたちの学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供するため、市内在住の小学5年生から中学3年生の約5割を対象として学習塾や家庭教師、文化・スポーツ教室など(オンライン学習塾などを含みます)の学校外教育にかかる費用を月額1万円を上限に助成する事業です。

なお、2022年度までは、塾代助成事業の名称で、市内在住の中学生の約5割を対象に実施されていました。

現時点では、所得要件がありますが、大阪市のサイトで次のようなに記載されています。
2024年度後期分(10月~3月利用分)からは所得要件が撤廃される予定です。
ただし事業の実施については、2024年度予算の成立が前提となります。

利用条件など詳しい情報は、大阪市習い事・塾代助成助成事業 専用サイト ≫

助成額対象
10,000円/月額小学5年生から中学3年生

福岡県福岡市 子ども習い事応援事業

子どもの将来がその生まれ育った環境に左右されずに、個性や能力を伸ばし、自己肯定感を育めるよう、電子クーポンを交付し、文化・スポーツ教室、学習塾等の習い事にかかる費用を助成する事業です。
生活保護または児童扶養手当を受給している世帯が対象の事業です。

利用条件など詳しい情報は、福岡市子ども習い事応援事業 専用サイト ≫

助成額対象
10,000円/月額小学5年生から中学3年生

千葉県千葉市 学校外教育バウチャー事業

生活保護世帯または児童扶養手当全部支給世帯の小学5、6年生の児童を対象にクーポンを支給し、民間の学習塾や習い事などに通うための費用を助成する事業です。
  • 学校外教育バウチャーとは、学習塾や習い事などの学校外での教育サービスに限定して利用することができるクーポンです、
利用条件など詳しい情報は、千葉市 学校外教育バウチャー事業 ≫
限度額対象
120,000円/年額小学5〜6年生

千葉県南房総市 教育サービス利用助成事業

子どもたちの個性や才能を伸ばす機会を提供するとともに、子育て世帯の経済的負担を軽減することが目的の助成事業です。
市内の小学校5年生と6年生を対象に、所得要件のない全国初の取り組みとして2015年度にスタートしました。
利用条件など詳しい情報は、南房総市 教育サービス利用助成事業 ≫
対象区分助成額対象
生活保護世帯
市民税非課税世帯
上記以外は所得に応じて
7,000円/月額
6,000円/月額
5,000円〜7,000/月額
小学5年生〜
中学3年生

茨城県つくば市 子どもの学習塾代助成事業

生活保護または学援助費を受けている方が対象です。
利用条件など詳しい情報は、つくば市 子どもの学習塾代助成金 ≫
限度額対象
5,000円/月中学生

東京都文京区 中学生学校外学習費用助成事業

所得要件のある東京都の事業「受験生チャレンジ支援」との併用はできませんが、文京区就学援助費を受けている方が対象です。
利用条件など詳しい情報は、文京区 中学生学校外学習費用助成事業 ≫
限度額対象
100,000円/年中学2年生または3年生

東京都 学習環境整備費(スタディクーポン方式)

東京都では、2020年度に区市町村への補助事業として、被保護者自立促進事業(包括補助)に、学習環境整備費(スタディクーポン方式)を追加し、各区市町村では、この補助金を財源とした独自のスタディクーポン事業が可能となりました。

国立市 くにたちスタディクーポン

生活保護受給世帯を対象として2021年度に事業開始。
助成額対象
100,000円/年
150,000円/年
200,000円/年
小学1年生〜中学2年生
高校1~2年生
中学3年生・高校3年生

多摩市 被保護者次世代育成支援事業

生活保護受給世帯を対象として2023年度に事業開始。
助成額対象
100,000円/年
150,000円/年
200,000円/年
小学4年生〜中学2年生
高校1~2年生
中学3年生・高校3年生

補助学習費に使えるスタディクーポン

スタディクーポン事業とは、子どもの教育格差を解消することを目的とし、2011年の東日本大震災を契機に公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下CFC)が寄付金を原資に開始したプロジェクトです。

CFCでは、企業や個人からの寄付金を原資に、主として経済的な理由によって教育を十分に受けることができない子ども、若者及びその家族に対する支援活動を通じて、貧困の世代間連鎖を断ち切ることを活動の目的としています。

具体的に次のような活動を行っています。

  • 学習塾・家庭教師・通信教育などの受講料として利用できるスタディクーポンの提供(15~30万円/年額)
  • 子どもと定期的な面談を行い、学習・進路・生活などの相談する大学生等のボランティアの派遣
スタディクーポン型の学校外教育費助成事業は、行政での政策導入事例もあり、2012年度の大阪市による「大阪市習い事・塾代助成事業」に続き、複数の自治体で政策導入されています。
  • 千葉県南房総市(2015年度)
  • 佐賀県上峰町(2018年度)
  • 東京都渋谷区、千葉県千葉市(2019年度)
  • 沖縄県那覇市(2020年度)
  • 東京都国立市(2021年度)
  • 東京都多摩市(2023年度)
スタディクーポンの取り組みに関する詳しい情報は、公益社団法人 チャンス・フォー・チルドレンのサイトをご覧ください。
スタディクーポンのインパクト

「塾は必要なのか」「学校教育と塾はどう分担するのか」といった議論もあります。一方で、実際には、学習塾・家庭教師・通信教育など学校外の環境で子どもたちの教育を担っている状況もあります。

スタディクーポンは、限られた地域からですが、ソーシャルイノベーションが起こり、そのインパクトが定量化されることで政策化が始まり、広がりが見られるなど、NPOの成功事例として素晴らしい展開だと思います。

スタディクーポンの広がりは「どうやって日本の子どもたちを社会全体で支える仕組みを作っていくのか」に対する一つのあり方です。2020年度には、東京都による政策化がなされましたが、今後も、導入成果を定量的に分析するなど、効果検証も必要です。

私たち保護者だけでなく社会全体で、教育の公共的意義、国民の負担といった大きなテーマに対する議論の機会を増やしていきたいと考えます。

公益財団法人 マブチ国際育英財団

事業は2021年にスタートし、松戸市・柏市・流山市の中学3年生75名に対して、2021年8月から利用できるスタディクーポン(総額1,500万円)が提供されました。2022年度は対象者を高校1年生まで拡大し、128名の中学生と高校生に対して、スタディクーポンが提供されています。

公益財団法人がスポンサーとなり、地元地域の子どもたちへスタディクーポンを提供するモデルは、全国初です。

助成額対象
200,000円/年中学3年生または高校1年生

株式会社三井住友フィナンシャル(SMBC)グループ

SMBCグループから2023年度~2025年度クーポン提供費および事業運営費等として3億円の資金支援を受け、2023年5月より事業がスタート、9月には196名にスタディクーポンが提供されています。
助成額対象
200,000円/年中学3年生または高校1年生

子どもの体験奨学金事業 ハロカル

ハロカルとは、スタディクーポン事業を行うCFCによる新しい試みで、家庭の経済格差による子どもの「体験格差」解消を目指し、全国各地で活動するNPO団体等と協働して、子どもの文化芸術活動や自然体験機会を届ける子どもの体験奨学金事業です。

CFCでは、2022年度は東東京と岡山の2エリアでトライアル事業を、2023年度は沖縄と石巻を加えた4エリアで事業を展開、今後もさらなるエリア拡大を目指していくとしています。

詳しい情報は、公益社団法人 チャンス・フォー・チルドレンの子どもの体験奨学金事業「ハロカル」をご覧ください。

助成制度以外での補助学習費の負担軽減

塾のキャンペーンや制度

塾によってキャンペーンや割引制度などは異なりますが、費用を軽減できるサービスもあります。
  • 入学金無料や、初月分授業料無料などの期間限定キャンペーン
  • 成績優秀な学生が利用できる特待生制度
  • 兄弟割引(例:ご兄弟姉妹のうち、低額の方の授業料を20%割引、それぞれの授業料を10%割引など)
  • 紹介割引(例:図書カードなどの金券やデジタルギフト1,000円~3,000円など)

福利厚生代行サービス

保護者の勤務先などが提供している「福利厚生代行サービス」があれば、優待など費用を軽減できるサービスが利用できる場合もあります。入会手続き後では適用されないケースもあるので、事前の確認をお勧めします。調べておくことをオススメします。

福利厚生サービスの例

オンライン塾

オンライン オンライン塾の場合は、比較的費用が抑えられます。
オンデマンドで動画視聴するタイプのほか、リアルタイムで授業を受けられるオンライン塾もあります。オンデマンドで動画視聴型の場合、強制力がないため、自主的に勉強する習慣が求められます。

メリット

  • 塾に通う必要がない
  • 時間の融通がきくため忙しくても利用しやすい
  • 全国どこでも質の高い授業が受けられる
  • 講師に気を遣わなくてよい
  • 人間関係に悩まされない

デメリット

  • 授業を受けるため端末の用意・ネット整備が必要
  • 勉強仲間がいない
  • 学習環境を整える必要がある

学習アプリ塾

学習アプリには、費用がかからないものもあり、上手に利用すると費用負担が大きく変わります。
不得手な科目のみ学習塾など対面指導を受け、その他は学習アプリを積極活用するなどは、負担軽減できる有効な手段となります。

学習アプリの事例

人工知能の家庭教師アプリ

AIチューター

人工知能の家庭教師アプリ AIチューターは、GPT-4を活用した革新的な家庭学習・家庭教師アプリで、学習者が困難な問題を写真で撮影し、LINEで送信するだけで、リアルタイムで解説が得られます。

さらに、疑問点については、より詳しく質問することが可能で、子どもたちは自分のペースで理解を深めることができます。

AIチューターは、LINEのチャットツールで提供されるため、子どもがスマートフォンに熱中する力学を利用して、内発的に生まれる学習意欲を一緒に育てる側面もあります。

人工知能を利用して、子どもたち一人ひとりにあわせた指導が提供される新しい学びのスタイルは、上手に活用すれば、少ない負担で、学習者の高い意欲と能力を引き出す可能性を秘めていると考えます。

利用事例では、中学生や高校生がAIチューターを手元においての勉強する以外にも、子どもの受験を控えた保護者が、子どもの学習サポートに利用している事例もあります。
公式サイトによるとサービス開始8ヶ月で19,000人の利用となっています。

子どもの教育費

保護者と地域
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