PTA活動のスマート化を進めるには? アウトソーシングも選択肢
PTA活動のスマート化
PTA活動のスマート化
PTA活動の見直しが必要な背景
情報技術の進化
IT革命が生まれた2000年以降を振り返るだけでも、日常生活の一部は様変わりしています。当時は、携帯電話に音楽や動画サービスはもちろん、カメラも搭載されていません。
電車に乗る際は乗車券を購入し、紙の地図で目的地を調べていましたが、今では、すべてスマホ上で実現されています。
PTA活動へのICTの積極的な利活用が求められています。
コンプライアンス
法律の改正や、PTAの在り方への理解が進む中、子どものためにと良い理念を持っていたとしても、コンプライアンス上問題のある運営では、PTAの存続は難しいものがあります。- PTA任意加入の説明、PTA加入の意思確認
- 個人情報の適切な取り扱い
- 学校への寄付や寄贈の適切な手続き
- 活動の強制、免除理由の開示強要
学校現場の変化
- 学校ではなく、保護者や地域が担うべき活動の明確化
- 学校における働き方改革
担い手である保護者変化
- 女性の就業率は増加化中、25~44歳の就業率は77.4%(2020年)
- 1985年と2022年を比べると、共働き世帯が、43.4%から73.4%と主流に
- 家族構成の変化(ひとり親世帯の増加、単独世帯の増加、三世代等の減少など)
- 労働意識変化(子どもができても、ずっと職業を続ける方がよいが多数派)
家族の姿の変化
スマートな組織に向けて
スマートなPTA活動を考える
ICT利活用で見た事業の分類
ICT利活用も選択肢となる活動
- ベルマーク・ウェブベルマーク
- 研修会・セミナー
- イベント
ICT利活用すべき活動
- 広報(ウェブサイト、プッシュ型の配信)
- 会議(オンライン)
- 文書(クラウドで共同作業、クラウドに保管のみ)
- 連絡(役員・委員など運営側での双方向)
- 連絡(運営側からの配信、運営側と保護者の双方向)
- フォーム(各種申込や議決、アンケート)
PTA活動のスタイル
以下は、スマートなPTA活動を考える場合に、論点となる意見の例をまとめています。サポーター制
サポーター制とは、担当者となる委員長だけを決めて、各事業毎に、協力いただける保護者や地域の方を募集する形式で、導入あたってのポイントは、2点あります。- 必要な人数集まらなければ、事業中止、事業規模の縮小を前提での運営
- メールやLINEなどの一斉配信ツールと、Googleフォームなどの応募受付ツールの準備
具体的には「あと3人足りません。誰か参加できませんか? 集まらないとXXXが中止になります!」のようなタイムリーな配信が必要となり、リアルタイムの応募状況の管理も必要です。
ペーパーレス化
紙媒体を中心とした活動から、活動場所が制限されない デジタル媒体を中心とした活動へのシフト- 配布物の作成や配布準備のために来校の必要性が減少
- 印刷物に関する経費削減
- 情報共有は、メール、LINE、配信アプリを活用
時間の壁
PTA関連の会議は、平日の昼間の場合もあり、有職者は、休暇や時間休を取っての参加が必要です。また、繁忙期の場合や自営業では、業務への支障も考えられます。- 開催スケジュールの柔軟な運用
- リアルとオンラインのハイブリッド形式での会議開催
研修会
- 自主参加や自己研鑽の研修会への動員
- リアルでなくオンライン併用だと便利
- いつでも視聴できるオンデマンド(YouTubeなどを利用)が便利
- 市区町村郡や都道府県単位の連合会でコンテンツの共同利用
広報活動
- 目的は、過去の事業実績か、タイムリーな情報配信か
- 広報活動の効果測定(閲読率や満足度の調査)
- 広報コンクール、質の高い制作物は重要か?
- ホームページの利用で見に来てもらうか、配信か?
- 広報活動を保護者や地域への情報配信システムで代替
- 制作を外注する必要性は?
外注化が検討される業務(例)
これまで慣例的に保護者が請け負ってきたが、- 運動会のパトロールなど、準備や当日の運営など保護者の負担が大きいと思われる活動
- 交通安全や防犯を目的とした子ども安全マップの制作など、プロに任せることでクオリティーが上がる活動
- PTA講演会の講師選定や配信など、より専門的な知識や情報が必要な活動
- オンライン化、IT導入など、専門的な知識や情報が必要な活動
事業の外注も選択肢
スマートなPTA活動には、各事業毎の精査が必要です。精査の結果、具体的な改革を行う場合、いくつかの選択肢が考えられます。
- 事業の運営方法やあり方を再定義
- 一旦、事業を縮小、休止
- アウトソーシングを利用して事業を継続
外注化の理由は効率化?
外注化の理由として、効率化がよく挙げられます。
企業であれば、利益追求に向けた手段の一つとして効率化は必要なことですが、PTAにおける、効率化とは、負担軽減の意味合いではないでしょうか。
負担軽減策の前に、事業の目的や実施効果などの観点から事業の必要性を先に検討すべきです。
その上で、必要な事業の実行にあたり、負担軽減の選択として外注化が選択肢となります。
外注先としての元保護者
広報紙やウェブサイトなどの広報活動においては、仕事や趣味などで制作業務に明るい保護者も少なくありません。
こうした保護者に広報担当者を引き受けていただいた場合には、クオリティーの高い広報活動が可能ですが、継続性についての課題が残ります。
同じクオリティーを維持する場合には、企業への外注と共に、地域住民でもある元担当者だった方に、仕事として発注することも選択肢となります。
地域の企業
ラクスルやプリントパックなど、ウェブで発注可能な印刷会社は、PTAで利用しやすいサービスです。地域に印刷や製本を行う会社があれば、地域のPTAとして、一度、相談をしてみてはどうでしょうか。
PTAの担当者は変わりますが、発注先からは継続した対応が受けられます。
自治、運営の当事者意識
PTAの担い手である保護者にとって、当事者として組織の自治、運営をしているとの意識は重要です。アウトソーシングサービス利用は、道具などのレンタル利用、ネットサービスなどインフラ利用、または、事業そのもの丸ごと外注するのなどのパターンがあります。
いずれの場合でも、運営の当事者は誰なのかの観点は必要です。
丸ごと外注?
「外注するのは手軽で便利だけど、地域や生活と無関係な企業に丸投げ?」との意見もあります。丸ごと外注の形式でイベントを実施した場合、当事者である保護者が集まる理由がなくなることが問題です。
外注の利用例として、イベント機材はレンタルし、イベントの企画から運営スタッフまでの丸ごと外注はせずに、PTAで企画や運営を行うなどがあります。
既に外注を利用している?
そもそも、周年行事のグッズ制作、学芸会のDVDなど、何らかの形で外注を利用しているPTAもあると思います。- 周年では、PTAとしての子どもの記憶に残るお祝いの表現などに利用
- DVDは有償ービスとして、保護者から希望者を募り、PTAが注文を取りまとめ発注
- 決済手数料を払って会費集金を企業に委託(厳密には学校もPTAから第三者への委託)
プロのサービスには関与しづらい
外注先はプロとしてPTAから発注を受け、企業としてサービスを提供します。こうしたサービスは、一般的に、地域らしさや伝統的な要素は反映されていません。
提供される側の保護者は、プロのするパッケージだし・・・、余計なことはしない方がとも感じます。
サービスする側とされる側の意識を作らない外注の活用が望まれます。
人は関与する機会を失うと集まりにくくなります。
自らが関与することで、アイデアが生まれ、楽しく協力ができ、学び合える地域ならでは機会が生まれます。
丸ごと外注による負担軽減の先には、集まり話し合い、課題の共有や解決の機会が失われていく可能性
オンラインでイベント
オンラインイベントは、保護者向けのセミナー、子ども達に向けたけたクイズ大会やラジオ体操など様々な事例があります。 一方で、「集まって、だらだらと話す」などのコミュニケーションも大切です。外注化やオンライン化の検討には、人がリアルに集える機会とのバランスは大切です。
自治・運営を失った形式での外注
必要な事業として、PTAが丸ごと外注をする場合、適切な費用負担者は、PTAによる会費、行政による公費、参加者から徴収なのか声もあります。自治・運営を失った形式での外注は、PTA当事者として自治・運営を行う中で、足りないリソースを外注で補うのとは全く異なります。
賛成・反対を尋ねたみたら
賛成
- 負担やストレスを軽減できるなら、お金を払っても利用したい
- プロにお願いしたほうが効率的で、よりよいものができるのではないか
- PTA活動に参加をする時間がないから、会費が高くても外注して自身の来校頻度を下げたい
- 人数集めのような会合なら代行利用もアリだと思う、代役でも平気な担当ならいいのでは?
- PTA活動全体を民間委託にすればいい
- PTAデジタル化を外注しては?
反対
- 教員や保護者が協力して行うのが本来のPTAの目的だから、外注することに違和感を感じる
- 費用対効果が見合わない(コスパが悪い)
- 企業の利益が含まれているので割高では?
- そもそも外注してまで行う事業なのか
外注を適切に活用して、楽しく協力しながらPTA活動
PTA業務の外注サービス
講師派遣サービス
ファミリード
家庭教育学級担当とセミナー講師を結びつける情報サービス
従来行われていた学校へ講師が訪問する形式の「対面型」の他、講師も保護者もZoom等でつなぐ「オンライン講座」、事前に講座を録画して一定の期間に公開する「動画視聴型」の3つの形式を提案しています。
2020年6月設立、運営会社:一般社団法人ファミリード
アウトソーシングサービス
PTA’S(ピータス)
PTA業務のアウトソース先を、簡単に検索することができる、外部企業とのマッチングサイト
PTA’Sには、PTAサポーターと呼ばれる、保護者に代わってPTA業務を代行する企業が登録しており、PTAが必要とするサービスを簡単に検索できる、PTA支援サービスです。
アウトソース先は「印刷」「清掃」「警備」「記念品」など12の業種カテゴリーに分かれ、それぞれのカテゴリーから必要な企業を選べます。
アウトソース以外にも、PTAならではの疑問に答える情報発信、研修・相談会の開催、さまざまな課題を解決する企業とのコラボレーションなど、お役立ち情報を提供しています。
2021年3月設立、運営会社:合同会社さかせる
PTA業務アウトソーシングサービス
近畿日本ツーリストグループ各社のノウハウを、ひとつの窓口で対応するサービス修学旅行等を通じた教育現場との接点を生かし、印刷・デザイン、WEBサイト作成、人材派遣、イベント関連、出張事業・学習支援、保険、グッズ関連など、幅広いニーズに対応できる体制を構築しています。
- 人材派遣:株式会社ツーリストエキスパーツ(添乗員の育成・旅行業務の人材派遣会社)
- イベント関連:株式会社イベントアンドコンベンションハウス(イベントの企画・制作、TVや映画の制作会社)
- 印刷・デザイン、WEBサイト制作:株式会社KNTビジネスクリエイト(近ツリの事務センターから始まった業務受託会社)
外注サービスのメニュー(例)
外注におけるポイントはどの部分を外注するかです。
あくまで自治・運営を行う中で、足りないリソースを補うための外注利用です。
事業の外注化検討をきっかけとして、保護者、学校、地域が話し合いを重ねていくプロセスは、PTAにとって大変意義のある活動です。
当事者意識を持って、合意形成を行い外注を利用することは、協業しての課題の解決です。
こうした事がきっかけとなり、子どたちや学校における教育課題についても、理解が深まり共有が始まります。