キャリア教育における課題

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保護者として地域や企業の一員としての理解とサポートも重要

キャリア教育における課題

全国PTA連絡協議会
キャリア教育に必要とされるものは、時代の変化と共に変わっていきます。行政には、課題や今後の方向性を示すことが求められています。子どもたちが将来明確な職業観と勤労観をもって社会に出られるようなキャリア教育環境を目指し、保護者としても、地域や企業の一員として、子どもたちのキャリア教育サポートしていくことが重要です。
下記を参考しています。
  • 文部科学省 国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター これまでのキャリア教育推進施策の展開と課題(2002年)
  • 文部科学省 国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター キャリア教育が促す 学習意欲(2014年3月)
  • 文部科学省 中央教育審議会答申 今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について 抜粋(2011年)
  • ベネッセ教育総合研究所 キャリア教育・就職支援の現状と課題に関する調査 調査報告書 結果概要(2010年)

キャリア教育の歴史と背景

キャリア教育推進の歴史

キャリア教育という文言が中央教育審議会答申に登場し、その必要性が提唱されたのは、1999年12月です。
現在の課題を知るためには、これまでどのような方針のもとキャリア教育が進められてきたのか理解する必要があります。

答申では、新規学卒者のフリーター志向の広がり、若年無業者の増加、若年者の早期離職傾向などを深刻な問題として受け止め、それを学校教育と職業生活との接続上の課題として位置づけた上で、キャリア教育を提唱しています。

2003年6月、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣及び経済財政政策担当大臣からなる「若者自立・挑戦戦略会議」がとりまとめた「若者自立・挑戦プラン」でも、キャリア教育の推進は重要な柱の一つとなっています。

そこでは、若年者の雇用問題を「深刻な現状と国家的課題」として認識し、政府全体としてその対策を講ずる枠組みの中に位置付けています。

学校でのキャリア教育は、文部科学省も2004年の予算措置から始まりましたが、当初は、勤労観や職業観を説くなど、若年者の就職を目的にした教育が行われ、キャリアについての包括的な教育ではないとの批判もありました。

その後「市民として、地域住民として生きるための幅広いキャリア発達」「学校で学ぶこととキャリアの関係」などへの理解が進み、 2020年度の新学習指導要領では、学校での学びと自分の将来がつながっているという教育になっています。

キャリア教育推進の背景

キャリア教育推進された背景には、日本に生じている2つの大きな課題が関係しています。
環境

就職・就業をめぐる環境の激変

第一の課題の最も大きな要因は、就職・就業環境の急激な変化です。

グローバル化の進展により、企業は競争にさらされ、コスト削減や合理化が求められています。

その結果、製造部門の海外移転や営業・販売部門の再構築などが行われ、さらに雇用調整も進められています。

また、職業人として求められる資質や能力も大きく変化し、即戦力志向や業務の高度化により、経験者採用や中途採用、外部委託の比重が高まっています。

さらに、定型的な業務では正規雇用から一時的・非正規雇用への切り替えも広がっています。

これらの動きにより、求人は減少し、求職者と求人のミスマッチが拡大し、新卒者の就職にはさまざまな課題が生じています。

さらに、従来の終身雇用や年功序列型の雇用慣行が見直される中、若者にとって将来の生活や職業人としての方向性を描くことが非常に難しくなっていると考えられます。

グローバル化、雇用形態の変化など、日本社会の構造は、大きな転換期

若者自身の資質等をめぐる課題

第二の課題は、若者の勤労観、職業観や職業人としての基礎的・基本的な資質・能力をめぐる変化です。

働くことへの関心や意欲、態度、目的意識、責任感など広い意味での勤労観や職業観の未熟さをはじめ、コミュニケーション能力や対人関係能力、基本的マナーなど職業人としての基礎的資質や能力の低下など発達上の課題も指摘されています。

このような課題は、求人が多く、企業が教育や訓練に力を入れていた時代には、社会的な関心も低い状況が続きましたが、現在では、経済状況が厳しくなり、若者の課題が顕在化化しています。

若年労働力の逼迫が予測される中、若者の意識や資質が向上しない限り、学校からの職業への移行には、依然として課題が残ります。

若者の勤労観や職業観の未熟さ、基礎的資質や能力の低下など発達上の課題も

キャリア教育の現状を見ると

課題

国では、若者の職業観や雇用問題に関して「深刻な現状と国家的課題」であると認識し、若年者の雇用や就業をめぐる問題を解決することの一環として、キャリア教育を推進してきました。

その結果、キャリア教育を「フリーターや若年無業者の増加防止」の対策として誤解されているケースも少なくありません。

フリーターや若年層の無業者増加、早期離職などの課題は、今日の経済状況や社会状況、労働市場の変化と深く関連があり、学校からの職業への移行(学校教育と職業生活との接続)で解決する言い切れません。

社会全体の動きとの関連を視野に入れ、複合的・多面的に見ていく必要があります。

キャリア教育と職業教育

キャリア教育と職業教育

キャリア教育と職業教育の違いについて、文部科学省の定義を参考にしてみましょう。
職業教育は、具体的な職業人としての能力開発なのに対し、キャリア教育は、職業教育を含んだ広意義での意識、知識、能力、技能開発だと言えます。

育成対象の能力

キャリア教育 一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度
職業教育 一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度

教育活動

キャリア教育 普通教育・専門教育を問わず様々な教育活動の中で実施される。職業教育も含まれる。
職業教育 具体の職業に関する教育を通して行われる。この教育は、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育成する上でも、極めて有効である。

キャリア教育と職業教育の基本的な考え方

  • 幼児教育から高等教育にかけて体系的、かつ実践的に職業人に社会・職業との関連を重視した基礎的・汎用的能力を身に付ける。
  • 学校において基礎的、発展的な能力開発、仕事に向かう意欲や態度の育成などを行い、体系的に職業教育への道筋を整備。
  • 学校が生涯にわたって社会人、職業人としてのキャリア形成の支援の場であるための機能充実を図る。

方向性と視点

キャリア教育は、幼児期の教育から高等教育まで体系的に進めることの中心として基礎・汎用的能力を確実に育成するとともに、社会・職業との関連を重視し、実践的・体験的な活動を充実することとされていて、重要な視点として、2点があります。
  1. 仕事をすることの意義や、幅広い視点から職業を考えさせる指導を行う。
  2. 社会的・職業的自立や社会・職業への円滑な移行に必要な力を明確化する。
明確化する必要な力とは、以下の5要素です。
  • 基礎的・基本的な知識・技能
    読み・書き・計算などの知識・技能といった能力である。
  • 基礎的・汎用的能力
    分野や職種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力である。
    • 人間関係形成・社会形成能力
    • 自己理解・自己管理能力
    • 課題対応能力
    • キャリアプランニング能力。
  • 論理的思考力・創造力
    物事を論理的に考え、新たな発想などを考え出す力である。
  • 意欲・態度及び価値観
    学習や学校生活に意欲を持って取り組む態度や学習内容に関心を持つこと。
  • 専門的な知識・技能
    将来を展望しながら必要な専門性を選択肢、それに必要な知識・技能を育成すること。

4領域8能力の枠組

中教審答申に先立ち、研究会では、海外のモデルが検討され、試作として取り上げられたのが、下の図の左側の4領域8能力の枠組みです。その後、日本の実情を考慮し、図の右側の4つの基礎的・汎用的能力なのです。
4領域8能力
出典:文部科学省 キャリア発達にかかわる諸能力(例)」(4領域8能力)の開発過程について

基礎的・汎用的能力

基礎的・汎用的能力 分野や職種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力である、基礎的・汎用的能力は、以下の4つです。

人間関係形成・社会形成能力

人間関係形成能力とは、多様な他者の考えや立場を理解し、意見を聞いたり伝えたりすることができる力です。さらに自分の役割を果たしつつ協力・協働していける力が社会形成能力といえます。
例:コミュニケーション・スキル、チームワーク、リーダーシップなど

自己理解・自己管理能力

自己理解能力は自分の可能性を肯定的に理解する力、自己管理能力は主体的でありながら自律的であろうとする力です。変化の激しい社会にあって多様な人々と協働していくには、自らをコントロールしつつ「自分はやればできる」と思える力が大切です。
例:自分の役割を理解する、ポジティブに考える、ストレスマネジメントなど。

課題対応能力

仕事では様々な課題に出会います。まず課題に気づき、その本質を正しくとらえ、適切な計画を立てて処理・解決していく力が、課題対応能力です。
グローバル化の進む現代では、従来の考え方や方法にとらわれずに物事を前に進めていくことが求められています。また情報化に伴って、主体的に情報を選択し活用する力はとても重要です。実行力はもちろんですが、さらに評価を適切に行い次へ進むための改善につなげることも大切です。

キャリア・プランニング能力

キャリアプランニング力とは、自ら主体的に判断してキャリアを形成していく力です。この能力は、社会人・職業人として生活していくために生涯にわたって必要となる力です。

キャリア教育に関する課題

キャリア教育における課題

キャリア教育については、その必要性や意義の理解が学校教育の中で高まってきており、実践の成果も徐々に上がってきています。

キャリア教育担当の教員

小学校から大学まで、キャリア教育を専門とした指導教員、職員はほとんどいないのが現状です。

例えば、高校では進路指導の先生、大学ではキャリアセンター職員が在学学生の進路に関する業務を行なっています。しかし、高校卒業後の進路や大学卒業後の就職先で実績を上げることを主たる目的とした業務です。

最近では、大学のキャリアセンターも低学年キャリア教育に取り組む大学も増えてきましたが、就職活動の対策ではなく、低学年を含めてキャリアについてプログラムを企画、運営する専任の担当者がいる大学は少ないのではないでしょうか。

また、キャリア教育を「新しい教育活動を指すものではない」としてきたことにより、従来の教育活動のままでよいと誤解されたり、一人一人の教員の受け止め方や実践の内容・水準にばらつきがあることも課題としてうかがええます。

職場体験活動への焦点化

現場では、キャリア発達を促すためには「体験活動」が最も効果的との認識が広がり、職場体験活動の実施をもってキャリア教育とを行なったとする傾向もありました。
確かに職場体験活動は、実際の経験を通して様々な学びができる重要な実践方法ですが、職場体験に依存した指導方法だけでなく、様々な教育活動を通してキャリア教育が実践されるべきだと考えます。
文部科学省が2005年度に「キャリア・スタート・ウィーク」事業を開始し、中学校における5日間連続の職場体験活動を推進するための全国キャンペーンを展開、2008年度まで継続し、4年間合計で11億円を超える予算措置を講じています。 キャンペーンの効果は大きく、2008年度の実施率は96.5%、5日以上の実施がそのうちの20.7%となっています。
出典:国立教育政策研究所 職場体験・インターンシップ実施状況等調査

キャリア教育に対する誤解

キャリア教育は「フリーターや若年無業者の増加防止対策である」と誤解される傾向もありました。
この事は、小学校や中学校、いわゆる進学校と呼ばれる高等学校における体系的なキャリア教育の推進が、当初遅れた一因ともなったと指摘されています。

職業教育における課題

職業教育における課題

専門的な知識・技能を伴う職業教育は、学校教育のみで完成するものではなく、学校教育を終えた実社会でも身につけ、向上させることが可能です。学校は、地域や産業との関係性をより強化し、生涯学習の視点を踏まえ教育のあり方を考える必要があるということです。

一部を除いては、基本的には学校内で完結する内容として教育課程を編成するという側面が強調されてとらえられがちです。

また、社会・職業との関連が薄く、実践性が伴わない教育(例えば、高等学校の普通科等)については、教育内容・教育方法を工夫していく必要があると考えられます。

企業における課題

収益化の難しさ

ビジネスとして教育や就職に関わる企業も多いですが、その中でも「キャリア教育」をメインとして事業展開している企業は多くありません。

ビジネス参入企業から見た場合に顧客となる、学校・子どもたち・企業のキャリア教育に対する認識は、緊急度の高い領域ではないとの考えもあり、キャリア教育は、企業による収益化が難しいとされています。
キャリア教育の評価も難しい部分があり、参加人数を基準にしている場合もあります。

キャリア救育を継続するには、学校卒業後の実践の場として、学校と企業の連携が必要ですが、キャリア教育事業を立ち上げても持続的に拡大することが難しいと指摘されています。

担当者の負担

キャリア教育を行うには、企業の担当者に負担がかかるという課題もあります。
キャリア教育の代表的な手法であるインターンシップは、多くの企業では採用担当者が担います。

採用担当者による主目的ではないインターンシップに関する対応、また、学生受け入れに協力する各部門に生じる負荷を企業してどう考えるかも課題といえます。

学生における課題

大学

キャリア教育に対する理解

教育の受け手である子どもたち、特に高校生や大学生にキャリア教育の必要性が理解されにくい状況もあります。

成績評価に直接影響する科目での勉強を重視し、評価がつきづらいキャリア教育に対する意識は低くなりがちです。また、この世代の多くの子どもたちは、遠い先の人生を考えるよりも、目の前にある楽しいことに流れる部分もあるものです。

子どもたち自身が、キャリア教育は今やるべきことであるという緊急性を感じていない状況があります。

周囲からの視線

子どもたちが、積極的にキャリア教育に取り組むと、友人との会話の中には将来に関する発言や意見もでてきます。

本来は、そこで友人同士で理解や共感が生まれるべきですが、周囲からは「意識高い」と言われてしまう場合もあります。この場合の「意識高い」は、否定的なニュアンスが強く、周囲から浮いてしまうこともあります。

キャリア教育に真剣に取り組みたくても周囲の目が気になるとの声もあります。

下記の統計数値などは、国立教育政策研究所の統計資料を参考にしています。

学校における課題

学校現場では、教職員の長時間労働が大分前から問題視されてきました。文科省も解決に向けて取り組んでいますが、まだ十分な成果をあげられていません。
専門スタッフや外部人材の配置が考えられますが、予算化が進んでいない現状です。専門スタッフとしてサポートする企業側も、収益に結びつくかどうかは難しい課題です。

小学校

小学校

小学校では、キャリア教育担当者が配置されていますが、担当者が1人のみで、担当者がほかの担当と兼任している状況があり、担当者がキャリア教育に集中できないという課題があります。

小学校におけるキャリア教育を成功させるには、組織の確立や全体計画作成を推進する必要があります。

  • キャリア教育担当者の配置は、83.9%
  • 全体計画の作成は、63.4%
  • 年間指導計画の作成は、46.7%
  • 道徳や学級活動の中でキャリア教育を実施している小学校は、92.3%
  • 総合的な学習時間の中で実施しているのは、91.9%
  • 各教科の中でキャリア教育を取り入れているのは、87.2%
  • キャリア教育の学習内容等でよく行われているもの(中学校への訪問や見学、体験入学、学校説明会)は、88.9%

中学校

中学校

中学校では、小学校に比べキャリア教育が進み、定着化しています。

  • キャリア教育担当者の配置は、98.0%
  • 進路指導主事を兼任している担当者は、61.4%
  • 全体計画の作成は、81.3%
  • 年間指導計画の作成は、76.7%

学校での学習と将来の仕事との関係

多くの学校で職業体験活動が実施されている一方で、職場体験活動への焦点化の課題があります。
体験活動だけにとどまらず、広く社会で通用する知識や技術、技能が幅広く身に付く教育、「学校での学習と将来の仕事との関係性」が理解できる教育が求めれています。

国際調査の比較でみると、日本の中学生は「将来自分が望む仕事に就くために良い成績をとる必要がある」「勉強すると日常生活に役立つ」の問いに対して、回答率が低くなっています。

キャリア教育における意識の違い

キャリア教育(進路指導)において、保護者や生徒と学校側や教員の意識が、異なる点も課題です。
  • 保護者や生徒:自分の個性や適性を考えること、理解する学習
  • 学校側や教員:保護者の期待が進学先の選択やその合格可能性にあると認識

高等学校

高等学校

高等学校では、就職指導や進学指導は行われているものの、就職指導や進学指導のみに終始する学校が少なくない事が課題です。

また、普通科の高等学校におけるインターンシップ実施率が低いことも課題です。改善されつつありますが、キャリア教育でのインターンシップを望む学生の声は多くあります。

大学

大学 大学では、社会で活躍する実践的なスキルや知識を身につけられるかという点が重要です。

社会人基礎力が多くの学生に不足

キャリア教育の課題としては、専門的な能力育成よりもまずは「基礎学力」「自己分析」「自ら考え自分の意見をまとめる力とそれを表現できる力」「自分のライフプランを考える力」の育成があげられます。

学生と企業における認識の違い

就職時の大学生の悩みの上位は、志望動機や自己PRなどの自己分析と、面接や筆記の採用試験に関わることです。
一方で、キャリアセンターや企業側では「粘り強さ」「チームワーク」「主体性」「コミュニケーション能力」「社会人基礎力」「基礎学力」などが大学生に欠けていると感じてます。
大学

大学全体でのキャリア教育

キャリア形成を支援する制度自体は整えている大学が多いものの、キャリア教育に関する意識が共有されず、教職員の間で温度差があることも指摘されています。
  • キャリア教育は特定の教職員がやる仕事とであると認識している。
  • 教職員は多少なりとも学生のキャリア形成に影響を与えているとの認識がない。
  • 教職員の協力体制や大学側の理解が不十分である。
  • カリキュラムとキャリアセンターとの連携に課題がある。

キャリア教育の充実に向けた対策

教育課程への位置付け

文部科学省 文部科学省 中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」には、以下のような記載があります。

各学校におけるキャリア教育に関する方針の明確化

  • 各学校のキャリア教育の基本的な在り方を内外に示すとともに、学校の特色や教育目標に基づいて教育課程に明確に位置付けるべきであり、これらを通じて、全体的な方針や計画を明らかにしておくことが必要である。
  • 初等中等教育においては、キャリア教育の全体計画やそれを具体化した年間指導計画を作成している学校が少ないという指摘があり、子どもの発達の段階に応じた課題や、それぞれの地域や学校の実態等を踏まえ、キャリア教育の指導計画を作成することが必要である。

各学校の教育課程への適切な位置付けと、計画性・体系性を持った展開

  • キャリア教育は、学校教育を構成していくための理念と方向性を示す教育であり、そのねらいを実現させるためには、関連する様々な取組が各学校の教育課程に適切に位置付けられ、計画性と体系性を持って展開されることが必要である。
  • 留意すべきは、キャリア教育はそれぞれの学校段階で行っている教科・科目等の教育活動全体を通じて取り組むものであり、単に特定の活動のみを実施すればよいということや、新たな活動を単に追加すればよいということではないということである。
    各学校では、日常の教科・科目等の教育活動の中で育成してきた能力や態度について、キャリア教育の視点から改めてその位置付けを見直し、教育課程における明確化・体系化を図りながら点検・改善していくことが求められる。
キャリア教育が教育課程に適切に位置付けられる

中途退学者や無業者への支援

キャリア支援

キャリア教育を工夫し、成果をあげている学校や企業も増えてきていますが、学校や企業どちらにも属していない人たちに対する、キャリア教育の支援も必要です。

文部科学省では、中学校・高等学校・教育委員会に、中途退学者や卒業はしたものの進学も就職もしていない無業者に、進路相談に応じたり必要な知識技能を提供したりするよう呼びかけています。

また、高等教育機関には、学籍を持っていなくても参加できるような教育プログラムの作成を提唱しています。

中途退学者や無業者に対するキャリア教育の支援では、職業安定所、若者サポートステーションなどと連携した取り組みも期待されます。

教育コーディネーターの役割

教育コーディネーターには以下の役割が期待されています。
  1. キャリア教育プログラムの開発、提案、マネジメント
  2. 学校教育と産業界の橋渡し(キャリア教育は、学習指導要領に沿った系統学習ではなく、学校・地域・企業による協働プロジェクト)
  3. キャリア教育の意義や効果についての地域や保護者への広報活動

キャリア教育とSDGs

SDGs目標4は、2030年までに「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」を目標としています。

目標4のターゲット4.4には、「2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事および起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。」とあり、キャリア教育の充実とそのものと言えるのではないでしょうか。

SDGsにおいて「質の高い教育」は他のすべての目標実現の前提になります。

キャリア教育のこれから

キャリア教育

キャリア教育の充実に向けた対策として、義務教育から高等教育まで体系的な改善が必要とされています。
キャリアを積み上げていく上で必要な知識などを教科・科目を通して理解させることが必要です。

キャリア教育の教育課程における明確化・体系化や、大学でのキャリア教育科目の設置、学部の設置などが進むことで、子どもたち自身が、キャリア教育の必要性をより実感していくと考えます。

キャリア教育の充実に向けた対策では、企業や社会との連携強化も求められます。たとえば、教育体験や教材を充実させるために、学校だけでなく保護者、地域、企業との連携強化が必要です。取り組みやすいところでは、卒業生・地域の職業人などのインタビューや対話、就業体験活動などの機会の提供などがあります。

ギガスクールをはじめ、にオンラインを利用した教育の機会が増えてきています。
キャリア教育でも、インターンシップにオンラインを活用するなど、ICT技術の積極的な利活用が望まれます。

子どもの教育

保護者と地域
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