SNS利用の低年齢化とリスク認識

こうしたことを背景に、SNSに起因する犯罪被害者の低年齢化、被害児童者数の増加などの影響が出ています。
低年齢化が進むスマートフォン利用
自分専用のスマホを持つ小学生が増加中
NTTドコモ モバイル社会研究所「モバイル社会白書2024年版」≫ によると、自分専用の端末として携帯電話を子どもが所有している割合は、小学5年生で42%、小学6年生では65%と、約半数の子どもがスマホを持っています。
スマートフォン利用率ついては、小学学1年生で3割、小学5年生で半数を超える。さらに中学2年生では9割を超えています。
所有している携帯電話の種類

利用している携帯電話の種類

- 小中学生の保護者が回答
- 「スマートフォン」はキッズスマホ、iPhone、Androidスマートフォンを集計
- 「キッズケータイ」はフィーチャーフォンを含め集計
- 「スマートフォン」と「キッズケータイ」をどちらも所有している場合は、スマートフォン所有として集計
- 家族などで共有しているものを含め、子どもが利用している機器の有無を小中学生の保護者が回答
使い始め理由は、緊急時連絡がトップ 51%
小学生の場合、男子は「緊急時の連絡」が最も高く49%。2番目の理由は「いる場所の把握」34%。女子も「緊急時の連絡」が最も高く5%。2番目の理由は「子どもに欲しいと言われたから」36%。
女子は「緊急時の連絡」と「子どもに欲しいと言われたから」が同率で最も高く45%、次いで「友達が持ち始めた」が40%。
スマートフォン使い始め理由
小学生(性別)

中学生(性別)

- スマホを持たせている保護者が回答
小学生の携帯所有は、スマホが主流に
2021年を境として小学生のスマートフォン所有率がキッズケータイ所有率を上回り、現在でも上昇傾向が続いています。中学生のスマートフォン所有率は約8割前後で横ばいです。
所有している携帯電話の種類の種類

- 小中学生の子どもを持つ保護者が回答
- 子どもが所有している機器の有無を保護者が回答
- 「キッズケータイ」はフィーチャーフォンを含め集計
- 「スマートフォン」と「キッズケータイ」をどちらも利用している場合は、スマートフォン利用として集計
小学生のスマホ利用率が増加中、利用率は低学年45%、高学年61%
小学生1〜3年生(低学年)の利用率は45%で、キッズケータイの利用率は11%に比べ約4倍、小学生4〜5年生(高学年)の利用率は61%で、キッズケータイ約3.5倍となっています。中学生のスマートフォンの利用率も増加傾向で、中学生の利用率は9割を超えています。
利用している携帯電話の種類

- 小中学生の子どもを持つ保護者が回答
- 家族などで共有しているものを含め、子どもが利用している機器の有無を保護者が回答
- 「キッズケータイ」はフィーチャーフォンを含め集計
- 「スマートフォン」と「キッズケータイ」をどちらも利用している場合は、スマートフォン利用として集計
SNS利用も低年齢化
中学生が利用するSNSは、LINE、TikTok、Instagramの順
中学生になると9割以上がSNSを利用、「LINE」を利用が最も多く、男子91%、女子94%、2番に多いのは「TikTok」でそれぞれ65%、45%となっています。また、全学年で女子のほうが利用率が高い傾向となっています。
SNSの利用状況(性別×学年別)

- 小中学生自身が回答
小中学生ともSNS利用率は増加傾向が続く
小学4〜6年生は、6年前31%からほぼ倍増し、2023年は58%となっています。
小学1〜3年生は、6年間11%から25%増加し、2023年のSNS利用率は36%となっています。
SNS利用状況の経年変化(学年別)

- 小中学生自身が回答
小学生高学年と中学生の利用率は
InstagramとTikTokが増加し、Xは減少
SNSのサービス別の利用状況(性別×学年別)
- 「LINE」の利用率は、2018年から2023年の6年間で全学年ともに上昇傾向となっています。
- 中学生、小学生4〜6年生(高学年)では「Instagram」「TikTok」は上昇し、「X」は下降しています。
- 小学生1〜3年生は、「LINE」を除き、利用率に大きな変化はありません。

- 小中学生自身が回答
SNSに起因する事犯
低年齢化するスマホ利用とSNS利用
被害者の低年齢化、被害児童の増加
SNS起因というと、「援助交際募集」など、子ども自身が悪意ある大人に付け入れられる投稿を行った結果の被害を想像し、被害児童の最初の投稿では、「援助交際募集」と「出会目的」をあわせると、投稿内容の23.7%を占めています。
ごく普通にSNSを利用している児童も被害に!
一方で、「プロフィールのみ」が17.6%、「日常生活」が17.3%、「趣味・嗜好」が9.5%と続き、ごく普通にSNSを利用している児童も被害に遭っている様子が分かります。また、被害児童の最初の投稿のうち、大人に泊めてもらいたがる神待ちなど「家出したい」2.9%、死にたいなどの「悩み相談」1.0%と極めて低い数値となっています。
ここでは、2024年に起きたSNSをきっかけとする事件における状況を警察庁の資料をもとにまとめています。
また、SNSに起因する事件とは、SNSを通じて面識のない被疑者と被害児童が知り合い、交際や知人関係等に発展する前に被害にあった場合を指しています。
- SNSとは、本統計では、通信ゲームを含み、届出のある出会い系サイトを除いたもの
- SNSに起因する事犯とは、SNSを通じて面識のない被疑者と被害児童が知り合い、交際や知人関係等に発展する前に被害にあった事犯
- 対象犯罪は、児童福祉法違反、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、青少年保護育成条例違反、重要犯罪等(殺人、強盗、放火、不同意性交等、略取誘拐、人身売買、不同意わいせつ、逮捕監禁)、面会要求等及び性的姿態撮影等処罰法第2条から第6条に規定する罪(面会要求等及び性的姿態撮影等処罰法違反は令和5年から追加)
- 不同意わいせつ及び不同意性交等は、令和5年7月12日以前は強制わいせつ及び強制性交等であり、単純に令和5年以前とその人数を比較できない。
被害児童数の推移(学校種別)
2024年に起きたSNSをきっかけとする事件において、18歳未満の被害児童数が1,486人となり、被害者数は令和元(2019)年から5年連続減少していますが、依然として高い水準で推移しています。
学校種別では、高校生の被害数は令和元年をピークに減少している一方で、中学生の被害数は令和2年に一度減少してものの、その後やや増加傾向にあります。
小学生は、平成27(2015)年に比べ3倍以上と被害児童数が急増しています。
学校種別
5年連続減少、依然として高い水準で推移

小学生
直近10年間で被害児童数が3倍以上に

被害児童数の推移(罪種別)
重要犯罪等は増加傾向、
2024年は前年比233人増の458人で倍増
罪種別では、青少年保護育成条例違反が減少傾向にあります。ただし、殺人や放火のほか、不同意性交等や略取誘拐、不同意わいせつなど重要犯罪等は増加傾向であり、2024年は、前年に比べ233人増の458人と倍増しています。

重要犯罪等の被害児童数の推移
重要犯罪等の大半は、不同意性交等や不同意わいせつ、略取誘拐
2023年に比べ233人増の458人と倍増している2024年の要犯罪等の内訳は、殺人1人、強盗1人、不同意わいせつ102人、不同意性交等287人、略取誘拐66人、逮捕監禁1人となっています。
中でも、不同意わいせつは、前年比69人増で102人、不同意性交等は、191人増で287人となってり、急激な増加傾向にあります。

最初に投稿した者と投稿内容の内訳
最初の投稿者は、被害者からの投稿が約7割
被害者と被疑者が知り合うきっかけとなった最初の投稿者の割合は、被害者からの投稿が約72.1%で、被疑者からは14.7%に過ぎません。
被害者からの投稿の投稿内容の内訳は、「プロフィールのみ」17.6%、「日常生活」17.3%、「趣味・嗜好」9.5%、「友達募集」7.8%など、一見して犯罪に巻き込まれるとは考えにくいものが約半数を占めています。
その他は「援助交際募集」17.8%、「自画撮り」6.0%、「出会い目的」5.9%、「家出」2.9%となっています。

- 「該当なし」とは、ランダム通話等
フィルタリングの利用状況
内閣府の調査によると、スマホでインターネットを利用していると回答した小中学生と高校生(満10歳以 上満17歳以下)の保護者による子供のネット利用の管理方法は、フィルタリングで管理しているのは43.6%。となっています。
一方で、フィルタリングの利用の有無が判明した2022年のSNSに関する事犯の被害児童の内、フィルタリングを利用していたのは11.9%。
被害児童のフィルタリング利用率は11.9%
内閣府調査の43.6%に比べ、被害児童の利用率は低い
小中学生と高校生(内閣府調査)

被害者(警察庁調査)

- 調査結果は四捨五入しているため、内訳の合計値が一致しない場合がある。
フィルタリング活用で見守りを!
小学生がSNSを通じて被害に遭わないために、保護者はどうすればよいのでしょうか。
まず、SNSのほとんどが小学生による利用が禁じられていることを保護者も理解しておくことが大切です。
「TikTok」や「Instagram」は小学生にも人気がありますが、利用は13歳以上と定められています。 もし子どもが利用している場合は、年齢を偽って登録しているのかもしれません。アカウントを削除するように子どもと話しましょう。
オンラインゲームのチャットにも注意
また、オンラインゲームのチャットなどで出会う機会も増えています。
子どもが利用しているゲームにチャット機能が付いているかどうかも確認しましょう。チャットはゲームの設定でオフにできるものもあります。
警察庁の発表では、被害児童全体のフィルタリングについて、90%近くがフィルタリングを利用していなかったとされています。これは、一般的なフィルタリングの実施率が約44%であることを考えると、かなり低い数値です。
保護者は子どものネット利用を見守る責任があります。
フィルタリングで全ての被害を防ぐことはできませんが、フィルタリングを設定すればどんなアプリを、どのぐらいの時間で利用しているかを親が把握できます。
誰かとずっとメッセージを交わしている、などの異変にいち早く気付くことができます。
保護者は、子どもが小学生から高校生まで、スマートフォンやタブレットなど、ネットを賢く使いこなす大人に成長するよう、温かく見守り続ける責任があります。
SNSに起因する事犯の被害実態
警察庁生活安全局では、「インターネット利用に係る子供の犯罪被害等の防止について」で次のように述べています。- SNSを通じて多くの児童が、児童買春や児童ポルノ事犯、青少年保護育成条例違反のほか、一部は強制性交等、略取誘拐などの重大な被害にも遭っている。
- SNSに起因して略取誘拐の被害に遭った児童数は高水準にあり、これはSNS等を介し、面識のない人と直接会うことに対する警戒感が低いことが被害増加の要因の一つと考えられる。
- 児童が自らを撮影した画像に伴う被害は、画像がネット上で公開される恐れがあり、一度公開されると、完全な削除が困難。自画撮り要求行為を禁止する条例が37都道府県で運用されている。
- 児童が加害者となる事例もある。
- 高額な対償を供与するなどの約束をして児童に言い寄り、断れない雰囲気を言葉巧みに作り出すなどして、更なる危害を加えている事例も多い。
検挙の事例
1.女子中学生に対する強要、児童ポルノ製造事件
2021年8月、被疑者(当時27歳、男)は、SNSを利用して被害児童(当時13歳)に裸の画像を送るよう脅迫し、被害児童に裸の画像を撮影させた上、SNSを介しその画像を送信させた。…2022年6月、被疑者は、強要、児童ポルノ製造で検挙。
2.男子中学生等に対するわいせつ誘拐、青少年健全育成条例違反事件
2022年4月、被疑者(当時18歳、男)は、わいせつ行為をする目的で、SNSを利用して被害児童(当時12歳)他1名を誘拐し、自宅においてわいせつ行為を行った。…同年4月、被疑者は、わいせつ誘拐罪、同年5月に青少年健全育成条例違反で検挙。
3.男子高校生による児童ポルノ製造事件
2022年2月、被疑者(当時16歳、男)は、SNSで知り合った被害児童(当時16歳)とのわいせつな行為を動画撮影した。 …同年年5月、被疑者は、児童ポルノ製造で検挙。4.女子高校生に対する児童買春事件
2022年1月、被疑者(当時59歳、男)は、SNSを通じて知り合った被害児童(当時16歳)に対償を供与する約束をして、性交を行った。 …同年4月、被疑者は、児童買春で検挙。子どもとデジタル機器
