コンプライアンス 1.組織

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任意団体、社会教育団体、PTA活動の公共性など

PTAでのコンプライアンス 1. 組織

コンプライアンス
 
PTAでのコンプライアンス(1〜4)掲載概要

PTA活動に関する政府の見解、法律定義でのPTA、任意団体、社会教育団体、PTA活動の公共性、学校施設利用など

任意団体、任意加入、熊本PTA裁判、活動の任意性、強制性の排除、公平性の担保、未加入者への対応、退会者の会費返還裁判、卒業記念品裁判など

学校経費の設置者負担、寄付・寄贈の対象、寄附採納手続き、学校徴収金、会費徴収、教員の会費返還請求裁判、学校徴収金としての会費集金など

PTA会費の適正な徴収と支出、会計口座、口座管理、会計担当者、PTA予算の健全性、繰越金、PTA会計に関する不正行為、不正行為への対策など

社会の変化に伴い、任意加入の周知・徹底、情報開示、事業のスマート化など、PTA活動の適正化に向けた対応は多岐に渡り、時間も情報も必要です。
PTAの存在及び活動に関する法律構成が曖昧な部分もありますが「PTAでのコンプライアンス(1〜4)」では、PTAでのコンプライアンスや、関係する法的な側面などからPTAのあり方や活動を考えています。

当協議会では、PTAが任意の団体して、保護者の意見を学校運営に反映し、学校の活動を支援する適切な活動を行えるよう「PTA活動の意義や運営を再確認すること」「再定義されたPTA活動をサポートすること」などの情報発信や各種サービスの提供を行っていきます。

PTA活動における課題

PTA活動に関する政府の見解

国会 2023年3月3日の参議院予算委員会の中で、岸田文雄首相ならびに永岡桂子文部科学大臣によるPTAに関する言及をまとめると、以下のようになります。

全国のPTAのトラブルについて

個々のPTAで生じるトラブルについては、当該PTAが主体的に判断をして、そして解決するべきもの

PTAの入退会

その具体の運営につきましては、それぞれ各学校のPTAが自主的に判断をしていくものであり、入退会については保護者の自由

PTA退会による子どもの差別について

子どもが嫌な思いをしないようにそれぞれのPTAと学校がよく話し合いをするなど連携しながらお決めいただくことが適切
任意加入に関する国や行政の対応
政府の見解

滋賀県大津市教委の対応(事例)

2019年10月に大津市教委が「PTA運営の手引き(A4/15p)」を作成し、市内90の公立小中学校長・幼稚園長向けに配布しています。

手引きの構成は7つの課題を取り上げ、各課題につき「1.概要」「2.現時点での対応」「3.学校側のリスク」を例示し、「理想的、最低限順守すべき、改善が必要、違法性を問われかねず早急な対応が必要」の4段階での「4.想定される対応策」を示しています。

  • 強制加入の問題
  • 役員の強制の問題
  • PTA事業や事務の見直し
  • 個人情報の問題
  • 会費の学校園聴取金と引き落としの問題
  • 会費の使途不明の問題
  • その他(PTA未加入の子どもへ教育的配慮、PTA必要性の説明)
2019年1月11日付 東京新聞朝刊では、以下の様に報じています。

加入の任意性の問題の他にも、役員の選出方法や非加入者の子への差別などについて、各地で疑問の声が上がっている。「病気や家庭の事情など、役員をできない理由を他の会員の前で説明させるのは人権侵害ではないか」「非加入家庭の子をPTAが編成する通学班に入れないのは、子への教育的配慮という点で問題があるのではないか」などだ。

各地の教委や自治体は従来、独立した任意団体のPTAに対して、積極的な介入を避ける傾向にあった。
一歩進んだ例としては、埼玉県やさいたま市、大分県杵築市の教委で学校長向けにPTA活動に関する注意事項などの通知を出しているが、理想的な対応を示すことに重点が置かれてきた。

同市教委には8日時点で、全国19の市教委などから問い合わせがあった。
市教委生涯学習課の押栗雅則課長は「毎年役員が入れ替わることもあり、保護者が改革するのは難しい。
校長が経験に基づいて事例を紹介したり解決案を提示したりする必要がある。特に任意加入の説明と入会届の提出、非加入家庭の子への配慮は重要」と言う。

大津市教委による「PTA運営の手引きの手引き」は、理想論だけではなく、市教委が現実的な対応を示して評価を行う形式で、PTA活動の適正化における画期的な取り組みでした。

2023年3月3日の参議院予算委員会での質問など、適正化の課題は道半ばですが、多くのPTA連合会などが、活動の手引き配布や研修会を行うなど、課題解決に向けた動きが加速しています。

保護者と直接の接点がある単位PTAでは、適切な活動へとアップデートしたPTAも増え始め、課題解決に向けた取り組みが広がっています。

団体としての法的な側面

法律定義でのPTA

PTAとは、各学校で組織された、保護者と教職員による社会教育関係団体のひとつです。

PTAは任意加入の団体であり、結成や加入を義務付ける法的根拠はありません。
任意の団体とは、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体です。

PTA及び青少年教育団体の相互扶助の精神に基づき、その主催する活動における災害等についてこれらの団体による共済制度を確立し、もって青少年の健全な育成と福祉の増進に資することを目的とする「PTA・青少年教育団体共済法」では、PTAについて以下の様に定義されています。

任意団体であるPTAについて、しっかりと規定している法律はありません。

PTA・青少年教育団体共済法

第2条(定義)抜粋

PTAとは、学校に在籍する幼児、児童、生徒若しくは学生び当該学校の教職員で構成される団体又はその連合体をいう。

PTAは任意団体

PTAは任意団体であり、入退会は自由が原則です。
根拠として、日本国憲法 第21条「結社の自由」がよく引き合いにされています。

文部科学省の事務連絡

2010年4月26日付の文部科学省から各都道府県教育委員会に送付された事務連絡の中では、優良PTA文部科学大臣表彰の選考基準に「任意加入の団体であることを前提」と記載されています。
事務連絡(抜粋)
各都道府県教育委員会 生涯学習・社会教育担当課 御中
文部科学省生涯学習政策局 社会教育課
平成22年度優良PTA文部科学大臣表彰について
優良PTA文部科学大臣表彰につきまして別添のとおりご連絡させていただきます。
今年度は、優良PTA文部科学大臣表彰要項に基づき、各都道府県教育委員会から提出される調査表(別添1)の記載項目と記載例を一部変更しております。
これは、PTAが任意加入の団体であることを前提に、できる限り多くの保護者と教師が主体的にPTA活動に参加できるよう組織運営や活動内容の工夫をしている団体を適切に評価できるようにするものです。
優良PTAの推薦にあたっては、変更点をご確認いただくと同時に、以下の点に注意して審査、推薦いただけますようお願いいたします。
日本国憲法
第21条(結社の自由)
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  1. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

任意団体として成立するには

PTAは法人格を持たない任意団体です。
権利能力なき社団(人格なき社団)が成立するためには、いくつかの要件があります。

団体としての組織をそなえられていること

構成員であるPTA会員の中から代表者としてPTA会長が選任され、PTA会員とは独立した存在とされる組織構成が必要です。

会議では多数決の原則が適用されていること

総会や役員会、常任委員会(本部委員会)などの各種会議において、多数決の原則が実施されていることが必要です。出席者の2/3や全会一致なども意思決定も多数決の原則に含まれます。

構成員の変更にかかわらず団体が存続すること

構成員であるPTA会員の変更とは、児童や生徒の卒業によりPTA会員が退会しても、新入生の保護者が新たにPTA会員として入会することです。
この様に団体の構成員であるPTA会員が変わっても団体が存続していることが必要です。

代表の選出方法、会議の運営方法、財産の管理の方法などを定めていること

PTA規約や細則があり、総会や役員会などの合議体で議決すべき事項などを成文化するのが一般的です。
また、総会で会長など役員が選出され、各役職に応じて業務が決めておくことも必要です。

PTAは権利能力なき社団

私法(市民相互の関係を規律付けるもの)上では、権利や義務の主体になれる「資格」のことを「権利能力」といいます。 この「権利能力」を持たない者は契約を締結するなどの権利や義務を持つことができません。

権利能力をもつのは自然人と法人であり、PTAは法人格を持たない任意団体として「権利能力なき社団」や「人格なき社団」とされています。

  • 一部の連合会や協議会では「社団法人」などの法人格のあるPTAもあります。
PTAの法的側面
PTAは権利能力なき社団
権利能力を持っている者は
自然人:
生まれながらにして権利能力を持つ
法 人:
登記手続きなどルールに基づき一定の範囲内で権利能力を持つ
認可地縁団体制度と自治会

自治会については、1991年の地方自治法改正により、一定の要件を満たせば、認可を受けて法人格を取得することができる制度(認可地縁団体制度)ができました。
この結果、法人格を取得している自治体は、自治会名義での契約や登記なども可能となりました。

PTAについては、組織結成の裏付けとなる根拠法がないため、法人登記はできません。
従って、任意団体としてPTAでは、PTA名で、財産を取得することも、登記することもできません。

PTAは社会教育団体

社会教育関係団体とは

PTAとは「Parent Teacher Association、父母と先生の会」の略で、保護者と教師が協力して子どもの教育環境をより良いものに整えることを目的とした団体で、「社会教育関係団体」として位置付けられています。
社会教育法
第10条(社会教育関係団体の定義)
この法律で「社会教育関係団体」とは、法人であると否とを問わず、公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。
第11条(文部科学大臣及び教育委員会との関係)
文部科学大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、専門的技術的指導又は助言を与えることができる。
2 文部科学大臣及び教育委員会は、社会教育関係団体の求めに応じ、これに対し、社会教育に関する事業に必要な物資の確保につき援助を行う。
第12条(国及び地方公共団体との関係)
国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、いかなる方法によつても、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業に干渉を加えてはならない。

社会教育関係団体としての要件

自主・自律的に運営を行う任意団体としては、PTAの位置づけは、地域で活動する学習サークルと同じです。
PTAが社会教育関係団体であることについては、以下の3要件が必要と考えます。
  • 社会教育行政への協力活動を行っている団体であること
  • 公の支配に属しない団体として、社会教育に関する事業を行うことを主たる目的としていること
  • PTAが、学校や地域において、全児童・全生徒の健やかな成長のために必要な、教育行政への協力活動を行うことは、社会教育関係団体としての公共性があること
公立の学校教育は、地方分権、教育分権に基づくものであり、各地方毎に様々な地域特性(風土、住民気質、教育委員会や学校長の見解、財政事情等)があります。
PTA活動においても、こうした地域特性が反映されていますが、社会教育関係団体としての要件を備えた上での適正な活動は、PTA活動の必須条件です。

PTA活動における公共性

学校からの視点で見たPTA

Complaiance 学校教育における学校の基本的な目的は、子どもの心身及び能力の健全な成長と発展です。

保護者と学校、それぞれの期待

  • 保護者は、子どもの養育に関する情報や見解を、合理的に学校教育へと反映してもらうこと
  • 学校は、個々の子どもの成長発展と共に学校全体としての教育効果

学校が必要としている事

  • 個々の保護者が有する個々の子どもに関する情報
    … 個々の保護者と学校との個別な信頼関係
  • 学校全体として一般的な保護者としての立場からの見解
    … 一般的な保護者としての観点から学校教育を支えるための組織
  • 子どもの成長発展に関与する地域との合理的な連携
    … 保護者も担い手の一人である地域の組織
PTAは、子どもの健全な成長発展を目指して活動することが、基本的な目的であり、学校からは、PTAの存在が学校教育の効果を向上させることが期待できる組織としての活動が求めらています。
一方で、PTAの存在や活動あり方をめぐる関係者の見解が異なるなどの課題もあります。
今一度、PTA活動の意義や運営を再確認することが必要です

PTA活動の公共性

PTA活動は、個々の保護者の子どもだけでなく、保護者一般としての立場から、学校全体の子どもたちに対して、いわゆる「大人」からの支援を行うことを目的とした公共的な活動、また、社会教育団体として「大人」同士が協働し学びあえる活動として位置づけられると考えます。

一方で、「完全な任意団体」としての性格のみを強調すると、PTAとしての活動は、会員と及びその子どもたちのみが受益者となり、閉鎖的で公共性のない私的な目的を有する団体であるとの指摘も生まれてきます。

PTAは、入退会自由の任意団体として、学校・保護者・地域の相互協力により、学校全体の子どもたちに対する公共的な活動、社会教育団体として活動を担う団体であるという意識は重要です。

教育の義務は、学校だけでなく社会全体で

日本国憲法
第26条(教育を受ける権利)
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
  1. しべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
憲法26条には、子どもに対する教育の義務ありますが、子どもたちに教育を受けさせる保護者としての義務の具体的内容を、学校に通わせることだけでなく、「保護者が任意に団体を構成し、学校・保護者・地域の相互協力により子どもたちの成長に貢献するための活動を行うもの」と考える方が、理想論としてだけでなく、現実の学校教育に対する有益性があると考えます。
もちろん、保護者が任意に団体を構成する事が前提です。

学校施設利用の根拠

PTAが社会教育関係団体であること

PTAが、学校施設を無償で確保でき、諸設備を活動に使用できるのは、学校施設令 第3条第1項第二号の許可に基づいています。また、同条第2項にある「他の法令の規定」とは、学校教育法第137条などを指しています。
学校教育法の条文で「社会教育その他公共のため」と明文化されているため、PTAが社会教育関係団体であることが、学校内で活動したり施設を無償で使用したりする法的根拠となっています。
学校施設の確保に関する政令

第3条(学校施設の使用禁止)

学校施設は、学校が学校教育の目的に使用する場合を除く外、使用してはならない。但し、左の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
 一
法律又は法律に基く命令の規定に基いて使用する場合
 二
管理者又は学校の長の同意を得て使用する場合
  1. 管理者又は学校の長は、前項第二号の同意を与えるには、他の法令の規定に従わなければならない。
学校教育法

第137条(社会教育施設の附置・目的外利用)

学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。
社会教育法

第44条(学校施設の利用)抜粋

学校(国立学校又は公立学校をいう。)の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、その管理する学校の施設を社会教育のために利用に供するように努めなければならない。

学校施設の使用

地方公共団体より詳細は異なりますが、東京都の場合は、東京都教職員研修センターによる「東京都公立小・中学校副校長実務必携」に、次のような記述があります。
小・中学校においては、「開かれた学校づくり」をさらに進める上で、PTA活動はもとより、土・日曜日、祝日の児童・生徒の活動や地域 住民の活動に対して、十分な理解と支援を行っていかなければならない。
  • 学校教育に支障がなく、施設・設備を損傷するおそれがないこと。
  • 責任者と利用者が明確であり、営利目的がなく、公益を害する恐れがないこと。
  • 該当校の施設・設備の実態に合った利用形態が遵守されること。

学校施設の使用料

PTA室は地域と学校の連携・協働のため

文部科学省の小学校施設整備指針や中学校施設整備指針(2022年6月改訂)には、地域と学校の連携・協働のためのスペースとして、次の様な記載があります。
  • 学校運営協議会、地域学校協働活動やPTA活動の拠点となる場など地域に開かれたコミュニティスペースの場として計画することが重要である。
  • 学校運営協議会や地域学校協働活動、PTA活動の拠点、企業及びNPO並びに地域運営組織及び農村型地域運営組織等との連携のためのスペースやコミュニティスペースとしての利用のみならず、学校教育における利用も考慮しつつ、必要な家具等を配置し、多様な活動に伴い必要となる諸行為を安全かつ円滑に行うことのできるような面積、形状等とすることが重要である。

施設の使用料の免除や減免

地方公共団体においては、行政財産使用料条例、学校設備使用条例などがあり、公共的団体が団体本来の活動目的で利用する場合は、減額50%など規定がある場合もあります。
PTAが学校施設の使用料が免除されるのは、次の様な考え方が一般的と考えます。
  • 学校内におけるPTA活動は、教育行政への協力活動であること
  • PTAは、その学校の全児童・生徒への学校行事や学校運営を円滑に行うための協力活動を行う公共的団体であること
  • 文部科学省の施設整備指針にあるように、PTA室については地域と学校の連携・協働のため、「学校運営協議会,地域学校協働活動やPTA活動の拠点となる場など地域に開かれたコミュニティスペースの場」として設けられていること
PTA
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