周囲の大人ができること
子どもを性被害から守るために

子どもを性被害から守るために周囲の大人には何ができるのでしょうか。性被害に遭った子どもが発するサインや被害に遭った子どもに対応する際の注意点、専門家への相談窓口などについて確認しておきましょう。
「性暴力」とは?
「性暴力」とは、同意のない性的な行為のことです。性暴力は、個人の尊厳を著しく踏みにじる重大な人権侵害であり、犯罪にもなり得るものです。性暴力による被害に遭っているのは、若い世代の女性だけではありません。
年齢や性別にかかわらず、性暴力の被害を受けることがあります。
女性だけではなく、男性も被害に遭っています。子どもや高齢者の被害もあります。また、加害者の8割は顔見知りであり、恋人同士や夫婦間、親しい人の間での被害もあります。
相手と対等な関係でなかったり、嫌だと言えない状況であったりしたなら、本当の同意があったことにはなりません。
特に、性的な行為に対する十分な判断能力が備わっているといえない年齢の子どもへの性的な行為については、本人の同意の有無にかかわらず、性暴力になり得ることに留意が必要です。
子どもに対する次のような行為は、性暴力に該当します。このことを大人が認識しておくことはもちろん、子どもが性的な行為についても理解できるような年齢になってきたら、保護者など周囲の大人から子ども自身にも伝えておくことが大切です。
子どもに対する性暴力の例
- 着替え、トイレ、入浴をのぞかれた。
- 服を脱がされた。
- 抱きつかれた、キスされた。
- 水着で隠れる部分(プライベートゾーン)を触られた。
- 痴漢にあった。
- 下着姿や裸の写真・動画を撮られた、送るよう要求された。
加害者の8割は顔見知り
- 先生、コーチ、親や親せきなどよく知っている身近な大人から
- 友達、きょうだいから
- 交際相手から
- SNSやオンラインゲームなどインターネットで知り合った相手から
最初に被害に遭ったのは「中学生以下」が約37%
身体的接触を伴う性被害に最初に遭った年齢
(n=576、対象:16から24歳までの若年層)
男の子も被害に遭っています!
性暴力の被害者=(イコール)女の子・女性とは限りません。「男性が性被害に遭うはずがない」「男性なら抵抗できるはず」「男性が被害に遭うのは恥ずかしい」「男性の被害は大したことない」などは、全て誤った思い込みです。
男の子の場合、性的な「遊び」や「いたずら」と軽視されることがありますが、性暴力の被害による心身の傷は深く、その後の成長にも大きく影響を与えることがあります。
男の子・男性も被害者になる可能性があることを理解し、性被害を打ち明けられたときは、決して本人を責めたりせず、必要に応じて専門家からも助言や支援を得ながら適切な対応をするようにしてください。
子どもの性被害に気付いたら
絶対に子どもを責めない
性暴力の被害に遭った子どもは、「自分にも悪いところがあったかもしれない」、「被害にあったことを話すのは恥ずかしい」、「大切な人を悲しませたくない」といった思いなどから、被害をなかなか打ち明けることができません。
子どもから被害を打ち明けられたときは、必ず「話してくれてありがとう」「あなたは悪くないよ」と繰り返し伝えるようにしましょう。話を疑ったり、否定したりせず、子どもの話を信じて寄り添いながら聞いてください。
そして、絶対に「あなたにも隙があった」、「逃げればよかったのに」などと、子どもを責めないでください。
根ほり葉ほり聞き過ぎない、「記憶の汚染」を防ぐ
専門家ではない大人が子どもの話を聞きすぎると、子どもの記憶に影響してしまう場合があります。これは「記憶の汚染」と呼ばれています。
子どもの気持ちはしっかり受け止めつつ、被害の内容や状況などの事実関係については、質問を重ねたり、話を誘導したりすることのないようにして、できるだけ早く警察、ワンストップ支援センター、児童相談所などの専門機関や専門家に相談しましょう。
なるべく早めに診察を受ける
直接被害があることが少しでも疑われる場合には、病院で、診察、治療を受けることが必要です。
その際、証拠採取や性感染症の検査などについても医師に相談してください。
妊娠の可能性がある場合、被害から72時間以内に緊急避妊薬を服用することで、高い確率で、望まない妊娠を防ぐことができます。また、性別を問わず、性暴力の証拠を採取するためにも、早めの受診が大切です。
警察や医療機関に行くときは
警察や医療機関に行くときには、次のものを持っていくとよいでしょう。- 被害に遭った時に着ていた衣服・下着(洗わずにそのままで)
- 被害に遭う前に飲んだもの・食べたものの残り(食器があれば洗わずに)
なお、「証拠となるようなものが分からない」、「72時間以上経ってしまった」という場合でも相談できます。
大人も専門家に相談する
専門家のケアが必要なのは被害に遭った子どもだけではありません。子どもが性被害を受けたショックやストレスで周囲の大人も精神的なダメージを負う場合があります。 どんな対応を取ったらよいか分からないときは、一人で抱え込まずに、速やかに相談機関などのサポートを受け、あなた自身のこころとからだにも気を配りながら、子どもの回復を支えてください。
子どもの性被害を知ったら、どこに相談すべき?
子どもが性被害に遭ってしまったことを知ったら、どこに相談すべきなのでしょうか。子どもが必要なケアを受けられるよう、なるべく早く警察、ワンストップ支援センター、児童相談所といった専門機関に相談してください。性犯罪被害相談電話
最寄りの警察の性犯罪被害相談電話窓口につながります。ワンストップ支援センター
最寄りの性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつながります。- NTTひかり電話からは、Tel:0120-8891-77
ワンストップ支援センターでは診療、証拠採取、緊急避妊薬の処方などの医療的支援、カウンセリングなどの心理的支援、法律相談などの専門機関とも連携しており、性犯罪や性暴力についての悩みや不安を相談することができます。
被害者本人だけでなく、その保護者などからの相談も受け付けています。
電話では相談しづらいというかたは、最寄りのワンストップ支援センターのオンライン問合せ窓口を確認して利用しましょう。メールやホームページの相談フォームからの相談も受け付けているところもあります。
また、性暴力に関するSNS相談 Cure time(キュアタイム)ではチャットで相談することもできます。チャットでは、英語、タガログ語、タイ 語、スペイン語、中国語、韓国語、ポルトガル語、ネパール語、ベ トナム語、インドネシア語など外国語対応も可能となっています。
児童相談所虐待対応ダイヤル
性的虐待による被害等を受けた児童に関する通告・相談はこちら。最寄りの児童相談所の虐待対応窓口につながります。どこに相談していいか分からないが、困っていることがある時
こども、その保護者を対象に、いじめやその他のこどものSOS の相談を受け付ける。原則として、電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。こんなときには支援センターに相談!
性犯罪・性暴力の被害者のためのワンストップ支援センターには、年間およそ6万件の相談が寄せられ、子どもの被害に関するものも少なくありません。
性被害によって、子どもは心身に大きな傷を負い、「異性と会うのが怖くなった」、「誰のことも信じられなくなった」、「夜、眠れなくなった」、「自分に自信がなくなった」など様々な変化が現れます。
子どもが見せるSOSのサインに気付き、なるべく早く警察、ワンストップ支援センター、児童相談所といった専門機関に相談するなどして専門家の力を借り、子どもの心の回復をサポートしましょう。
こんなときにはワンストップ支援センターへご相談を!
性被害による妊娠や性感染症が不安
協力関係にある医療機関において、緊急避妊薬の処方や妊娠・性感染症の検査などが受けられるようサポートします。性被害によるこころやからだへのダメージが心配
被害者やその家族が、医療機関等で必要な治療や心理的支援を安心して受けられるようサポートします。警察に相談するかどうか迷っている
警察による捜査や証拠採取などに関する情報の提供、警察への同行などのサポートを行います。法律や裁判のことがよく分からない
法律の専門家(弁護士など)と連携しながら、法的な手続きをサポートします。今後の生活が心配
被害を受けた子どもやその家族が安心して暮らすことができるように、担当者が必要なことを一緒に考えてサポートします。性被害を未然に防ぐために
子どもを性暴力の被害から未然に守ることも私たち身近な大人の役割です。いざというときに子どもが性暴力から自分の身を守れるように、また、性暴力の加害者となることがないように、幼児期から折を見て次のことを伝えるようにしてください。
子どもたちに伝えておきたいこと
- 水着で隠れる部分(プライベートゾーン)は見せない・触らせないこと。
- 相手のプライベートゾーンを見ない、触らないこと。
- イヤな触られかたをされそうなときは、「イヤだ」、「やめて」と言ってもいいこと。
- イヤなことをされたら、すぐに大人に相談すること。
- 自分は大切に扱われる存在で、相手も自分のように大切に扱われるべき存在であること。
性暴力の被害に遭った子どもは、そのことを親や家族、身近な大人に知られることを恐れ、誰にも相談できずに、被害に遭い続けてしまう場合もあります。
身近な人に知られることなく、専門家に相談できる窓口があることを、日頃から伝えておくことも大切です。
一番大事なこととして、小さな頃から、自分のからだとこころは、自分自身のものであるということを、繰り返し、しっかりと伝えましょう。
そして、子どもが性的な行為についても理解できるような年齢になってきたら、同意のない性的な行為は性暴力であるということについても話し合うようにしましょう。
子どもの異変やSOSにいち早く気付けるような関係・環境をつくるために、日頃から家庭内でコミュニケーションを取り、子どもの言葉にしっかり耳を傾けることが大切です。
また、子どもにとって「身近な大人」は、保護者や家族だけではありません。
日常的に接する機会のある子どもの行動や態度に不自然な点や異変はないか、性暴力の被害を受けているサインはないか、子どもと関わりのある全ての大人が注意深く見守りましょう。
政府広報オンライン(啓発動画)
こどもの性被害のサインを見逃さないで
もっと話そう、理解しよう 性的同意 ~基礎編~
東京都教育委員会による第三者相談窓口
東京都教育委員会では、教職員等による児童・生徒への性暴力等を早期に発見するため、弁護士を相談員として、相談や通報を受け付ける第三者相談窓口を設置しています。
- 匿名での相談も可能です。
- 教職員からの相談や通報も受け付けます。
- 相談や通報を行ったことを理由として不利益な取扱いを受けることはありません。
教職員等による児童生徒性暴力等の相談の流れ

教育職員の性犯罪・性暴力等
