改革事例 那覇市公立小学校PTA

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仕組みで回すPTAへの再設計

那覇市公立小学校PTAの改革事例

全国PTA連絡協議会
下地 渉

お話を伺った方

下地 渉(しもじ・わたる)さん
公立小学校PTA 会長、那覇市PTA連合会 元副会長

インタビュー実施日

2026年2月21日
本稿は下地さんの提供資料およびお話に基づき、当協議会が事例として編集したものです。
特定の団体・個人を評価する目的ではなく、持続可能なPTA運営の参考情報として掲載しています。
 目次から各章へ移動できます。

改革の出発点

この章では、PTA活動の価値を確認しつつ、担い手の固定化や負担集中など継続を難しくする要因を整理します。地域・上部団体との関わりも含め、現場で生じた課題を言語化し、改革の目的と判断軸を共有して、読み手が全体像をつかめるよう前提をそろえます。

活動の価値と、負担集中の同居

下地さんが副会長として参画した当初の印象は「とても素晴らしい活動」でした。
一方で、参加者が固定化し、特定の人に負担が集中している現実にも気づいたといいます。
特に学年役員の負担、そして地域・連合会活動まで重なることで、継続が難しくなると感じ、組織改革に挑戦しました。

判断軸は「子どもファースト」+「会員・単位PTA優先」

改革の根底に置いたのは、俗に言う「子どもファースト」。
加えて、会員の負担や納得感を重視し、単位PTAとしての最適を優先する姿勢を明確にしています。

上部団体との考え方の違いと、退会という選択

一方で、上部団体との関係では見解の相違が大きくなりました。非加入世帯の子どものPTA事業に参加が認められない状況を指摘したことなどを背景に、退会に至った経緯が記されています。報告後、任期中にもかかわらず役職の扱いをめぐる経緯が生じ、総会への参加が難しい状況になった、といった状況も述べられています。

現在は出席が難しい状況(参加機会が限られている状況)の中でも、独自の活動とネットワーク形成に着手し「楽しく負担の少ない活動」の実現を目指しているとしています。

まず事務と業務環境を整える

この章では、運営の土台となる事務体制と業務環境の整備を紹介します。待遇の適正化、端末整備、リモート化、ペーパーレス化を進め、実務の属人化を減らします。担当者が変わっても回るための「仕組み」をどこから作ったか、合意形成の進め方も含めて整理します。

担い手の環境が整うと、運営の属人化がほどける

運営の実務が安定すると、役員の疲弊や引き継ぎ負担が下がり、改善が連鎖しやすくなります。

事務員の待遇を「調査→時給換算→総会承認」で是正

事務員の給与が非常に低い点に着目し、那覇市内の学校を調査。時給換算で再設定し、総会で正式承認を経て給与改定を実現しています。

業務端末の支給とリモート整備、ペーパーレスの徹底

当時はネット環境がなく古いPCを使用、保護者連絡も個人端末を使うなど、公私の境目が曖昧で時間外対応を迫られることも多かったといいます。そこでPC・スマホの業務端末を支給し、リモート環境を整備。以前から進めていたペーパーレス化を「完全化」し、デジタル化を一段進めました。

出勤は週1回程度へ。出納・調整以外の負担を軽減

2023年以降は、PTA事務をリモート勤務中心とし、学校への出勤は週1回程度の契約に。現金精算等の出納作業や学校との調整以外の業務からの解放に成功した、と述べています。

転居後も継続できる体制に(現場業務と事務処理の切り分け)

2026年11月に事務担当者が県外転居することになっても、現場業務と事務処理を切り分けることで雇用を継続し、遠隔でも従事できる体制にしています。

予算の見直しと会費の引き下げ

この章では、事業の棚卸しを起点に予算を整理し、会費に還元していく手順をまとめます。社会環境の変化に合わせて支出を見直し、段階的に会費を調整して納得感を高めます。削減後も活動の質を保つために、開催方法や役割分担をどう工夫したかも具体的に紹介します。

事業を見直すと、自然に予算が整理される

コロナ禍による中止・縮小、デジタル普及によるプライバシー意識や働き方の変化に合わせ、事業そのものを見直し、過剰と判断した予算を削減しています。

段階的に会費を引き下げ、ハレーションを抑える

削減した予算を会費へ充当し、小規模校ならではの会費負担を軽減する方針を示した上で、段階的に実施。年間納付額を12,600円から8,400円へ削減しています。

削減後も「開催方法の工夫」で運営を安定

会費削減後も、行事や事業の開催方法を変えることで、不満なく運営するに至っているとしています。

専門部を見直し、サポーター制へ

この章では、役割の固定化で負担が偏る課題に対し、専門部の見直しからサポーター制への移行までを追います。段階移行の進め方や外部人材の活用など、参加の入口を増やす工夫を整理します。実際の運用でつまずきやすい点(作業量・担い手確保)への対処も含めてまとめます。

属人化の原因を、制度の段階移行でほどく

行事が属人的で献身的な役員に負担が集中していたため、専門部長の廃止→一部専門部廃止→高学年サポーター化→サポーター制へ完全移行、と段階的に進めています。

「小規模校の強み」を活かし、地域にも開く

小規模校の特性を活かし、地域イベントにも参加するなど「楽しく活動」「子ども一緒」の形を目指していると述べています。

重い作業は外部人材も活用。余力を「実のある活動」へ

負担の大きい作業はシルバー人材やスポットバイトを活用して軽減。
余った時間を、保護者の学校見学や防災のミニ勉強会などに充て、サポーター参加者の増加につなげています。

ビジョンで合意形成を進める

この章では、改革を定着させるための合意形成の進め方を扱います。行動指針(ビジョン)を作り、説明会や総会など節目で繰り返し共有します。主体事業を軸に会員の支持を確かめながら、判断軸をぶらさず信頼を積み上げる方法を、伝え方の工夫も含めて整理します。

合意形成は、節目ごとの反復で強くなる

「垣花ビジョン」という行動指針を制定し、入学説明会・評議員会・PTA総会などで繰り返し提示。行動と結果と支持を問いかけ、信頼獲得に尽力したとしています。

主体事業:体育館開放とプール開放

子どもの居場所づくりと体力増強のため、毎週木曜〜土曜の体育館開放、夏休みの学校プール開放を実施しています。

支持の可視化:反対が出た時こそ総会で確認

新任校長から継続に反対される事態が起きた際、関係者間の調整を経て沈静化したのち、PTA総会で継続是非を問うと100%の支持を得た、というエピソードが紹介されています。

公募制で担い手を増やす

この章では、役員選出の透明性を高め、担い手を増やす仕組みを紹介します。公募制への転換に加え、一定期間参加してから就任する運用でミスマッチを減らします。短期の穴埋めではなく、次年度以降も見据えた候補者育成の導線をどう作ったか、実務面のポイントも整理します。

選出の不透明さを減らすと、手が挙がりやすくなる

輪番制や総会での挙手制など従来の方法を「負担が偏りやすく、透明性を確保しにくい」と捉え、公募制を導入しています。

公募は当初苦戦。それでも「ビジョン浸透」が転機に

当初は苦戦したものの、ビジョンの浸透もあって手を挙げる人が増え、次年度会長候補を安定確保できるようになったと述べています。

会長3名制度:1年間のオブザーバー参加でミスマッチを防ぐ

会長3名制度を導入し、公募者は1年間オブザーバー的に参加。実態を見た上で次年度登用の最終了承を得る流れにしています。執行部側が候補者を観察する時間にもなり、就任後の即戦力化につながる、としています。

目標は「3年先以降の候補を2年以内に確保」

人材登用の仕組みができた結果として、3年後以降の会長候補者を2年以内に獲得する状態を目指す、としています。

執行部改革と会則変更

この章では、執行部体制と意思決定プロセスを整理し、誰が何を決めるかを明確にする取り組みをまとめます。権限設計や予算執行の手順を整え、会則改定で制度を文書化します。人数を増やさずに運営を安定させるための着眼点や、変更時に注意した合意形成のポイントも示します。

人数ではなく「権限とプロセス」を整える

就任時は合計9名体制でしたが、現在は会長3名(保護者)+参与2名(教頭+こども園園長)の5名体制に集約しています。

決裁権と議決権で、意思決定を明確化

会長に決裁権、参与に議決権を付与し、人数ではなく「決裁/議決」というプロセスで整理したと述べています。

予算執行の考え方:参与は決裁を持たず、会長が最終決裁

参与は決裁権を持たず、総会で承認を得た予算執行は最終的に会長3名が決裁。権限のない世話役として幹事を置き、校長は学校責任者として相談役を担う体制です。

会則変更は計3回。制度を「文書」で固定する

学校からの意見を踏まえて現体制に至ったこと、制度設計変更に伴い合計3回の会則変更を行ったことが記されています。

近隣校・地域とのネットワーク

この章では、上部団体に依存しない形で近隣校や地域と連携し、学び合える関係を築く取り組みを紹介します。相談対応、勉強会、地域行事への参画などを通じ、横のつながりを育てます。単位PTA同士が支え合うための具体的な関わり方と、継続のための運営上の工夫を整理します。

困った時に相談できる関係が、次の改革を支える

市P連を退会し、地区10校のブロック会議への参加が難しい状況でも、進学先の中学校をはじめ近隣校との関係構築に尽力しているとしています。

相談対応は助言だけで終わらせない

近隣校から相談があれば、助言のみでなく、執行部や学校三役との面会、実例に基づく助言、資料提供まで行う形で貢献しています。

学びと交流の場を「自分たちで作る」

地区PTA勉強会・交流会の開催、自治会祭りへの企画段階からの参画、市主催イベントへの参加などを通じ、独自のネットワーク構築に努めています。

これからの展望

この章では、改革を一過性で終わらせず次の担い手に引き継ぐための展望を整理します。伴走体制、予算承認の仕組み化、周年行事の企画など、次の改善テーマを確認します。活動が続く仕組みを残すために、引き継ぎ・記録・ツール整備をどう位置づけるかも含めて「次の一手」をまとめます。

次年度は「伴走」と「仕組み化」に注力

次年度はアドバイザーとして1年間伴走する予定としています。

予算承認を仕組みにする:Kintone導入

予算承認の仕組み化としてKintone導入を総会議案として決議し、1年間かけて本稼働させるために貢献したいと述べています。

80周年は「式典」より「子どもと祝う」企画へ

創立80周年事業として、授業参観と共同開催し、給食時間に来賓も子どもたちと一緒に食事をし、バースデーケーキを食べる「学校の誕生パーティー」を提案。実施までサポートする考えが示されています。

書籍化!

インタビュー詳細 + 脱強制・改革の実践的ノウハウ

PTA こうやって変えました

PTAの皆様へのインタービューなどをもとに、参加したくなるPTAをつくる改革、脱強制・改革の実践的な情報として、1冊の本にまとめています。
これから改革をしていこうという皆様に、少しでも参考になれば幸いです。

参加したくなるPTAをつくる改革

学校からの個人情報漏洩、保護者・教員の全員自動加入と役職・活動強制、違法寄付等、課題山積の旧態PTA。不適切な状態を脱し、参加したくなるPTAをつくるにはどうすれば良いのか。

任意加入の徹底、目的の明確化とスリム化、IT活用と透明化など、一足先に改革を実現した現場のリーダー達に学ぶ、新しいしくみのつくりかた。

全国PTA連絡協議会 編著
PTA こうやって変えました!
Case Study
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