一般社団法人 全国PTA連絡協議会

子どもたちの教育費 海外との比較で考える

OECD平均と比較、高齢関係社会支出との比較など、日本における子ども・子育て分野への資源投入のあり方を考えることは、私たちや未来を担う子ども達とってとても重要なことです。
国による教育支援施策の充実も重要ですが、まず、私たち国民自身が、未来を担う子どもへの教育に対するマインドを変えていく必要があるかもしれません。
作成:2023/12/01  更新:2024/02/02
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子どもたちの教育

子どもたちの教育費

教育 子どもたちの教育費について考えた場合、学校教育には公的な仕組みがありますが、塾など学校外の教育費については、家庭所得により大きな格差があるのが現状です。
受験対策としての塾は、今後の入学試験のあり方や制度改革により、衰退する可能性がありますが、子どもたちや家庭、社会のニーズの変化で、学校外教育の仕組みはより多様化すると考えられます。
子どもの教育の「担い手」が学校だけでなく、塾や習い事・子ども支援NPOなど、多様化していく流れは、今後も変わらないか、さらに加速していくのではないかと考えます。

社会全体で子どもを支える社会を目指して

「子どもたちの教育費は誰が負担すべきか?」に対する答えは、大きく私費か公費に分けられます。
私費は、本人や家族による支出です。
公費は、税金による国や自治体の予算となります。公費の他に、個人や企業による寄付も含めると、私費か社会全体かもといえます。
子どもたちの教育機会が、家庭の経済状況に左右されない状態が理想的であり、学校外の教育費も含め、教育費の公的負担を目指す必要があると考えます。もちろん、こうした施策の実現には、国民の負担、所得制限のあり方や、学校外の教育事業者の対象など多くの論点があります。

OECD報告書から見た海外との比較

海外との比較は、経済協力機構(OECD)の「Education at a Glance 2022 OECD Indicators」から引用し、まとめています。「OECD Indicators」は、加盟各国などの教育状況を定量的で国際比較が可能な教育データとして、毎年公表されています。
OECD(経済協力開発機構)とは
OECD(経済協力開発機構)は、ヨーロッパを中心に日米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関です。
OECDの目的は、先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、OECDの三大目的である、1.経済成長、2.貿易自由化、3.途上国支援に。貢献することです。
OECDは国際マクロ経済動向、貿易、開発援助といった分野に加え、最近では持続可能な開発、ガバナンスといった新たな分野についても加盟国間の分析・検討を行っています。
Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構

EU加盟国(22か国)

ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フィンランド、スウェーデン、オーストリア、デンマーク、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロヴァキア、エストニア、スロベニア、ラトビア、リトアニア

その他(16か国)

日本、イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、韓国、チリ、イスラエル、コロンビア、コスタリカ

OECDの活動

OECDは、より良い暮らしのためのより良い政策の構築に取り組む国際機関です。OECDの目標は、あらゆる人々の繁栄、平等、機会、幸福を促す政策を形作ることです。60年に及ぶ経験 と知見を活用して、より良い未来の世界を実現するよう努めています。
OECDは、政府、政策当局、市民と協力して、実証に基づく国際基準を確立し、様々な社会・経済・環境問題の解決策を模索しています。
経済実績の改善、雇用創出から、充実した教育の促進、国際的脱税との闘いまで、データと分析、経験の交換、最良慣行の共有、公共政策と国際基準の設定に関する助言を行うための、独自のフォーラムと知識の中核拠点を提供しています。

より良い暮らし指標(Better Life Index)

社会の状況をよりわかりやすく提示するための取り組みであるBLIは、伝統的なGDP以上に、人々が暮らしを計測、比較することを可能にするインタラクティブな指標です。
BLIは、暮らしの11の分野(住宅、所得、雇用、社会的つながり、教育、環境、市民参画、健康、主観的幸福、安全、ワークライフバランス)について、OECD加盟37カ国とブラジル、ロシア、南アフリカを加え、あわせて40カ国の指標を比較できるようになっています。
教育分野で有名な指標としては、PISA(Programme for International Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度調査があり、日本もこの調査に参加しています。
出典:ODCD公式サイト

教育への支出

OECD すべてのOECD加盟国が、GDP*1のかなりの割合を教育機関にあてています。
2019年時点で、初等から高等教育機関に対する支出の対GDP比は、OECD平均は4.9%、日本は4.0%です。
国から教育機関への支出の対GDP比は、各国の予算決定において、教育がどの程度の重要度を持っているかを測る重要な尺度です。
日本の一般政府総支出に占める初等から高等教育への公財政教育支出*2の割合は、7.8%で、OECD平均10.6%を下回っています。また、対GDP比でも 3.0%となり、OECD平均4.3%を下回っています。
  • 1 GDP:一定期間中に一国のなかで生み出された財やサービスの総額(国民産出高)
  • 2 公財政教育支出:国が教育のために出している公的な支出

公財政教育支出対GDP比(2020年)

GDP
出典:財務省 文教・科学技術 参考資料(2023年10月11日)

在学者1人あたり教育支出

各国のGDP水準や学生数は異なるため、総額でなく在学者1人あたり教育支出についてみると、初等から高等教育までの年間支出、6~15歳までの累計支出ともに、下表のようにOECD平均を上回っています。
OECD平均
(単位:米ドル)
日本
(単位:米ドル)
年間(初等から高等教育まで) 11,990 12,474
累計(6~15歳) 101,399 105,502
  • 購買力平価による米ドル換算額

日本の教育費は、私費負担に依存

ここから読み取れるのは、日本は教育費への公的支出の割合が世界的に見て少ない一方で、日本の子どもにかかる学校関連の費用は世界的に見ても高い水準にあるという現実です。
日本の教育費が高いのにもかかわらず、国が子どもの教育に対するお金をかけていないため、日本の教育費は、各家庭の私費負担に大きく依存している状況です。
教育費の私費負担が大きいと、大学や大学院への進学機会を失う学生も出てきます。このような現状は、日本の教育水準を考える上で、早急に改善が必要な状況とも言えます。

教育の機会

在学期間

日本での義務教育は6〜15歳の9年間ですが、人口の90%以上が教育機関に在学する年齢範囲は4~17歳の13年間となっています。これは、他の多くのOECD加盟国と同様です。

幼児教育

日本では、幼児教育が計画的教育目標の提供を開始する年齢は3歳であり、3歳未満児の幼児教育在学率は3%となっています。
OECD加盟国における3歳未満児の幼児教育在学率は、1%未満から63%までと大きな開きありますが、平均27%となっています。

高等教育機関

日本の高等教育機関の学生は、学士課程(大学)に70%が在籍しており、他の多くのOECD加盟国と同様です。
日本では、学士課程に次いで、短期高等教育課程に19%が在籍していますが、データ入手可能な26のOECD加盟国では、修士課程(大学院)に在籍する学生が2番目に多くなっています。

教員の環境

教員の法定給与

全調査年のデータがあるOECD加盟国では、前期中等教育段階(普通課程)で、最も一般的な教員資格を持つ勤続年数15年の教員の法定給与は、2015年から2021年にかけ平均6%の上昇に対し、日本では、前期中等教育段階の教員の法定給与上昇幅は概ね低水準にとどまっている。

授業外業務の割合

後期中等教育段階でみると、日本の教員は勤務時間の71%を授業外業務に費やしています。一方、OECD平均では、56%となっています。
  • 授業外業務とは、教員が勤務時間内に行う授業計画や準備、採点や保護者対応などです。

継続的な職能開発

データ入手可能なほとんどの国で、普通課程のすべての教員に継続的な職能開発が義務づけられていますが、日本は例外的な状況で、小中学校教員が職能開発活動に使った時間は、参加国中で最短となっています。

家族関係社会支出

対GDP比の推移

日本における子ども・子育て分野への資源投入は、下図のようにOECD諸国平均に比べ、かなり低い比率で推移していましたが、2010年代に入り「社会保障と税の一体改革」の流れの中で資源投入はやや増え、OECD諸国平均との差はかなり少なくなってきました。
一方で、1980年以降の高齢関係社会支出の大幅な伸びに比べ、家族関係社会支出の伸びは、小幅な状態となっています。
家族関係社会支出の
OECD諸国平均
OECD諸国平均
  • 各年のOECD諸国平均値は、データが公表されている国を対象に算出
  • 日本については年度の値
  • 日本について、2020年度は、新型コロナウイルス感染症対策に係る事業(子育て世帯臨時特別 給付金、ひとり親世帯臨時特別給付金等)などの影響があることに留意
出典:こども家庭庁 参考資料集(日本は国立社会保障・人口問題研究所「令和2年度社会保障費用統計」より、OECD諸国 平均値はOECD Social Expenditure Databaseより作成)
高齢関係社会支出と
家族関係社会支出との比較
高齢関係社会支出との比較
出典:こども家庭庁 参考資料集(国立社会保障・人口問題研究所「令和2年度社会保障費用統計」より作成)

対GDP比の国際比較

国によって国民負担率などが異なることから、単純に比較することは適当ではありませんが、出生率の回復を実現した欧州諸国と比べて、日本の対GDP比に占める家族関係社会支出は2.01%(2020年)とかなり低水準となっています。新型コロナ前の2019年は、1.74%となっています。
家族関係社会支出の対GDP比2.01%は、前記のグラフにあるように、高齢関係社会支出の対GDP比9.11%の1/4以下、2019年の数値(1.74%)では1/5以下の水準となっています。
また、2019年10月から、幼児教育・保育の無償化(平年度で約8,900億円)を実施されているため、2020年度の数値(2.01%)は、新型コロナウイルス感染症対策に係る事業(子育て世帯臨時特別給付金、ひとり親世帯臨時特別給付金等)などの影響があることに留意する必要があります。
家族関係社会支出の対GDP比の国際比較
対GDP比の国際比較
注1.
家族を支援するために支出される現金給付及び現物給付(サービス)を計上(決算額ベース)。
注2.
計上されている給付のうち、主なものは以下のとおり(国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」巻末参考資料より抜粋)。
  • 児童手当:現金給付、地域子ども・子育て支援事業費
  • 社会福祉:特別児童扶養手当給付費、児童扶養手当給付費、保育対策費等
  • 協会健保、組合健保:出産手当金、出産手当附加金
  • 各種共済組合:出産手当金、育児休業手当金等
  • 雇用保険:育児休業給付、介護休業給付等
  • 生活保護:出産扶助、教育扶助
  • 就学援助、就学前教育:初等中等教育等振興費、私立学校振興費等
出典:こども家庭庁 参考資料集(日本は、国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」(2020年度)、諸外国はOECD Family Database「PF1.1 Public spending on family benefits」より作成)
各国の国民負担率(対国民所得比)
日本(2022年度)46.5%、アメリカ(2019年)32.4%、ドイツ(2019年)54.9%、フランス(2019年)67.1%、イギリス(2019年)46.5%、スウェーデン(2019年)56.4%
出典:財務省 国民負担率の国際比較 OECD加盟36カ国(2023年12月1日)

教育費のあり方

教育に関する資源投入のあり方

子ども 日本では、大学などの高等教育に必要な支出は「保護者が負担すべき」という考え方が根強くあります。
高等教育の機会がなかった方や、子どもがいない方からは「大学などの高等教育に必要な支出を税金でまかなうべきではない。不公平ではないか?」という声も少なくありません。
背景としては、日本人の間で「教育が公的な意味をもつものとあまり認識されていない」点があり、だから、親が子に対してできる限り支払ってやるのが親心として当然であり、また教育成果の達成は個人の努力によって獲得されるもので、私的利益と見なされてる部分が考えられます。
専門家からは「日本では高等教育無償化の実現に必要な社会的なコンセンサスを得ることが非常に難しい」との指摘もあります。
スウェーデンのように、公立私立を問わず、大学の学費は完全無償化されている国もあります。OECD平均と比較、高齢関係社会支出との比較など、日本における子ども・子育て分野への資源投入のあり方を考えることは、私たちや未来を担う子ども達とってとても重要なことです。
高等教育に限らず、日本の教育に関する資源投入のあり方を改善していくためには、国による教育支援施策の充実も重要ですが、まず、私たち国民自身が、未来を担う子どもへの教育に対するマインドを変えていく必要があるかもしれません。
日本の課題となっている少子化、所得格差の継承、低成長率、一人当たり生産性向上を解決するために有効な教育の充実が必要なのにも関わらず、教育への公的支出が増えないという状況を解決することは簡単ではありません。
具体的には、教育の公共的意義を説得していくことで社会の理解を得ること、教育機関による教育が役に立ったと実感できるサービスを学生に提供していくことなどが必要です。
教育機関の例としては、人工知能(AI)や量子、デジタルといった先端分野に強い人材を育てるためのカリキュラムや大学改革などが考えられます。

政府の支援施策

保育料無償化
(2019年10月)
すべての3~5歳児と、住民税非課税世帯の0~2歳児について、
幼児教育・保育の費用を無償化
高等学校等
就学支援金
(2020年4月)
制度改正により、年収590万円未満世帯(目安)への支給が
最大年額39万6000円まで引き上げられ、私立高校授業料が実質無償化
高等教育の
修学支援新制度
(2020年4月)
奨学金への家計や学力に関する基準が大きく緩和され、
授業料・入学金の減免と給付型(返済不要)奨学金で学生を支援
多子世帯の
大学授業料減免
(2025年4月)
3人以上の子どもを扶養している多子世帯を対象に、
大学授業料や入学金がなどが減免され、実質的に無償化
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